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第六章 春ヶ原に差す光 朝の空気は冷たく、澄んでいる。 風花は結界の中で、揺らめく霧…
公園に着いて、霊泉の前に立ったときだ。風花は、あれ、と思った。 今までは結界の前に立…
夏澄たちの話では、昨日、太陽がすっかり落ちたころ、夏澄たちは藤原の御泉に帰ってきたそう…
「あの、スーフィアさん……」 風花は横たわる優月を見つめた。 彼の体はところどころが…
『夏澄は優月に霊力をもどしているの。でも、優月には黙っていて』 スーフィアの声だ。 『…
「ねえ、夏澄くん……」 風花はそっと声をかける。 「優月さんが元気になるように願おうね…
「ねえ、スーフィア、風花。草花はどうするかな? 俺じゃあ、細かいことは分からなくて」 風花は言葉につまる。 夏澄くんに分からないことが、わたしに分かるわけない。 「そうねえ……」 スーフィアはしばらく考え込む。 「草花は、泣いて悲しむでしょうね。引き止めるだろうし、優月が春ヶ原を出ないっていうまで、だだをこねるんじゃないかしら」 草花が泣く幻影は見せられないわよねと、スーフィアは優月に聞こえないように、声をひそめる。 「それよりも、なにか癒やされるような
やがて、林に霧が流れ始める。 霧は幻影の優月の姿を覆う。 幻影の優月の姿は見えなく…
優月は夏澄に頭を下げて、向きをかえる。 そのとき、枯れ葉を含んだ風が吹いた。 優月が…
優月さん……! 風花は駆け出した。 辺りを見回す。だが、どこにも優月の姿はなかった…
まぶたを閉じていた夏澄は、たまにその瞳を開ける。 公園内に視線を巡らせる。 だが、…
夏澄はぽろぽろと涙を落としはじめた。 夏澄の表情から、優月はもういないんだと分かった…
優月の木は泉のほとりにそびえている。目を凝らすと、木はかすかに霊力の光を放っていた。 …
風花のとなりにいた夏澄は、風花にもう一度、守護の霊力を張る。 その後、風花から離れて立貴の代わりに癒やしの雨を降らせる。 飛雨とスーフィアも宙を駆けた。 飛雨は夏澄に霊力を送る。 スーフィアは植物を癒やして回り始めた。 風花はなにもできずに、木の周りをうろついた。 動物たちを診ようと思いつくが、足を止め、気がつくと立ちつくしていた。 行っても、霊力がない風花は、動物たちのためになにかできるわけではない。 風を浴びるしろつめ草が目に映る、風花は恐