三宅勝久(ジャーナリスト)

ジャーナリスト、ブログ「スギナミジャーナル」主宰。1965年岡山県生まれ。「債権回収屋…

三宅勝久(ジャーナリスト)

ジャーナリスト、ブログ「スギナミジャーナル」主宰。1965年岡山県生まれ。「債権回収屋G 野放しの闇金融」で第12回『週刊金曜日』ルポルタージュ大賞優秀賞受賞。2003年、武富士から損害賠償請求訴訟を起こされるも完全勝訴。『大東建託の内幕』『絶望の自衛隊』など著書多数。

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  • 記者クラブいらない訴訟

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    鹿児島県知事の記者会見に参加しようとしたフリーランスが記者クラブのバリケードで排除された! 「取材・報道の自由の侵害だ」とフリーランスが記者クラブを訴えた裁判が始まった。

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日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(25) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 4

 武蔵大学は、中京大学とはことなって細かい点をたずねてきた。そのひとつに「1兆円」問題があった。『選択』記事の中で、私は「2010年度の民間銀行からの貸付残高はざっと1兆円」と書いた。その中の「1兆円」の根拠について説明しろという。  調査を受けているのは大内教授なのだから、なぜ私に対して自分の記事の執筆経緯を説明させるのか。訝しく思いながら調べたところ、誤りに気がついた。正しくは「3800億円」だった。  どうやら数字を読み間違えたらしい。妙な話だが、私は喜んだ。このあらた

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    • 日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(26) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 5

       団体の性格について反論を――裁判官の訴訟指揮に対し、奨学金問題対策全国会議(大内裕和代表)から書面がきた。一読してあきれた。「開かれた団体ではない」「社会性のある団体ではない」ということを懸命に主張している。  会員が100人、全国に及び、属性は弁護士、大学教授、ジャーナリスト、奨学金利用者が含まれ、設立から本件入会拒否までの6年で承認が得られなかったものはない。「入会申込書を収録した出版物を発行し、新聞等の発言や政策提言を公然と行っている」は認める。「知名度が高い」は、奨

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      • 日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(24) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 3

         津地裁四日市支部で審理されたゴルフクラブ入会拒否事件は、原告が敗訴して、名古屋高裁で控訴審が続いていた。性同一性障害を理由に入会拒否をしたことの違法性を認めた判決と判断が別れた。  判決を読み比べると団体の性格の評価がちがうことに気がついた。前者の例は、開かれた運営をしている団体だと認定している。それに対して後者は、比較的閉鎖的な運営だと認定している。  ゴルフ場に比べれば「全国会議」ははるかに開かれているんじゃないか。わたしは思った。  奨学金問題対策全国会議を相手どった

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        • 日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(23) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 2

           奨学金問題対策全国会議(大内裕和代表)を相手どった訴訟は淡々と手続きが進んだ。それと並行して、全国会議と「一括請求」の関係について興味ぶかい事実が見えてきた。『週刊金曜日』に「日の丸闇金奨学金」という連載をはじめたのは2021年4月のことだ。不定期の連載だったが、15回を超えていた。大内氏からはもちろん、全国会議からもいっさいの反応はなかった。だが見知らぬ読者からの反応がくるようになっていた。  たとえば広島の男性Kさんだ。Kさんは腎臓の病気で思うように働けず、収入が乏しい

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        日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(25) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 4

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          13本

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(22) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 1

          1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、 21、22  20年ほど住んだ杉並区阿佐ヶ谷のアパートが取り壊しになり、文京区に引っ越した。家賃がたかくなったので原稿をこれまでより多く書こうとおもっていたが、結局上告の書面にかかりきりの1ヶ月だった。理由書を出し終え、一段落して気持ちは落ち着いた。ひとつ高い壁を越えたような達成感があった。  2022年6月。快晴の気持ちのよい昼下り。白山通りを自転車で走りながら、ふと頭

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(22) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 1

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(21) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 5

           控訴審は示談交渉のときから相談していたH弁護士に委任することにした。2か月ほどかけて議論を重ね、控訴理由書を完成させて提出した。

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(21) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 5

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(20) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 4

           すべては10年前、奨学金問題対策全国会議にかかわったときから問題ははじまった。これほど「嫌われ者」になってしまうとは、当時は予想もしなかった。  いろんなことが思い出されてくる。古いメールを探すと、執筆当時の企画書が出てきた。私の知らないところであけび書房が作ったものだ。執筆予定者とテーマが書かれている。 第1章 総論  50頁ほど(図表込みで5~6万字)   教育における格差と貧困―奨学金問題から考える 大内裕和 第2章 ルポルタージュ  30頁ほど(図表込みで3~4

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(20) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 4

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(19) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 3

           研究不正の研究会は日程が11月ときまり、準備が急テンポで進んだ。私は、予定稿に加えて発表用のパワーポイントをつくるというなれない作業をやった。予定稿を見たO教授から「驚きました。中京大学はひどいですね」と感想があった。手応えがあったことがうれしかった。  11月29日、T大学でシンポジウムが開催された。発表者はO名誉教授、S名誉教授、M准教授、三宅の4人。T大学のI総長問題を取り上げたS氏の発表は衝撃的な内容だった。2017年、T大の調査委員会はI総長の研究不正に「シロ判

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(19) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 3

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(18) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 2

          (今回から登場人物名を一部実名にしました)  著作権の教科書によれば、そろそろ著作物性と類似性を軽くクリアして、最大の争点である依拠性の審議に入ってもよいころだった。そう信じて疑わなかった。  依拠性、つまり大内裕和・中京大学教授が私の記事を参考にしたかどうかだ。最初に発見した「奨学金が日本を滅ぼす」のほうは、盗用元が共著『日本の奨学金はこれでいいのか』なので議論の余地はなかろう。私の原稿を読んだ上で似た文章を書いたことは争いようがない。問題は、『選択』の記事からのパクりの

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(18) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 2

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(17) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 1

           示談交渉は決裂したが、私はまだ楽観していた。ここまで露骨な盗用なのだ。それほど困難はなく勝てるだろう。そう楽観した。ただ著作権侵害訴訟は勝っても賠償額が低いと聞いていた。弁護士に委任すれば費用のほうが持ち出しになる。勝っても金銭的には損をする。記事削除を潜り込ませた解決案はそうしたこちらの足元をみてきたと思った。ならばと、こちらにも考えがあった。本人訴訟だ。これなら費用は最小限ですむ。仮に10万円とか20万円の賠償額しか認められなくても金銭的に損することはない。示談交渉を委

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(17) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 1

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(16) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」5

          1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15   それでも展望のみえる出来事もあった。中京大への告発と並行して朝日新聞出版に連絡をしていた。同社はO教授の問題の著作『奨学金が日本を滅ぼす』の出版元である。2020年7月30日、同社のU氏から電話で返信があった。「私が正式に窓口になって対応していきたいというご挨拶をさしあげます」と丁寧な口調でU氏はあいさつをし、説明をはじめた。以下はそのときのやりとりである。 U いまのステータスとしてはですね、ま

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(16) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」5

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(15) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」4

          1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14   もはや「疑惑」ではない。故意による盗用だ――私は確信を深めた。奨学金問題対策全国会議代表で中京大教授のO氏による著作盗用は十数件を数えた。私は、失望とも怒りとも言いかねる複雑な感情にとらわれた。サラ金問題や、奨学金ローン問題についてともに協力して取り組んできたはずの組織からツマハジキにされたばかりか、その代表者の学者によって繰り返し盗用被害を受ける。さらに、それを指摘すると本人は苦しい言い逃れに終始し、周

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(15) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」4

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(14) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」3

          1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13  自分の書いた文章をすべて暗記することは私にはできない。しかし、他人の文章のなかに自分が書いたものがあれば気がつく。文章を書くという作業は考える作業だから、思考の過程を喚起するのかもしれない。私は、過去に自分が書いた記事のスクラップを調べてみた。やはりそうだ。O教授が引用した「講演レジメ」は、2012年4月発行の雑誌『選択』に私が無署名で書いた次の記事と瓜二つだった。  あえて違いを探すなら、『選択』記事の「へ消

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(14) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」3

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(13) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」2

          1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12  あきれたことには、私の誤記まで忠実に転写している。私が書いた上の文章のうち「2012年度」とあるのは、じつは「2011年度」の誤りだ。その点について、O氏の『奨学金が日本を滅ぼす』でも、「2012年度」と同じまちがいをしている。オリジナルのデータをもっていればまずあり得ないミスだ。失望とも怒りとも言いかねる複雑な感情にとらわれ、とても冷静でいられなくなった。  小豆島から岡山に戻った。頭の中はO教授の「盗用疑惑」でいっ

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(13) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」2

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(12) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」1

          1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13  2020年7月。奨学金問題対策全国会議から再入会を拒否された事件から1年がたった。この年の夏はいつもにまして酷暑だった。武富士問題でかつて世話になったN弁護士に諭されて、再入会拒否についての抗議をいったんは封印した。だが暑さにうだっていると、忘れかけていたいやな気持ちがよみがえった。  もっとも1年前よりは少し冷静になってものを考えられるようになった。なぜ私の入会を拒否するのか、本当に「一括請求」が拒否理由なんだろうか

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(12) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」1

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(11) 1章 「奨学金問題対策全国会議」入会拒否事件 5

          1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12  クレサラ対協のメーリングリストを通じて一冊の資料集が流れてきたのは2019年の夏のことだった。資料集の中に奨学金問題対策全国会議の報告書が入っていた。40頁もある本格的なものだ。ざっと目を通した私は、「一括請求」の文字を見つけ、思わず読み入った。

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          日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(11) 1章 「奨学金問題対策全国会議」入会拒否事件 5

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