日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(25) 4章 「奨学金問題対策全国会議」を訴える 4

 武蔵大学は、中京大学とはことなって細かい点をたずねてきた。そのひとつに「1兆円」問題があった。『選択』記事の中で、私は「2010年度の民間銀行からの貸付残高はざっと1兆円」と書いた。その中の「1兆円」の根拠について説明しろという。
 調査を受けているのは大内教授なのだから、なぜ私に対して自分の記事の執筆経緯を説明させるのか。訝しく思いながら調べたところ、誤りに気がついた。正しくは「3800億円」だった。
 どうやら数字を読み間違えたらしい。妙な話だが、私は喜んだ。このあらたなミス発見が大内氏の嘘の裏付けとなる。誤記が一致するということは偶然では起こり得ない、『選択』記事を読まずして類似した文章を書いたという説明は、この「誤記の一致」によって完全に崩れた。私はそう思った。
 視界が急に開けた気がした。
(「1兆円」が最大の弱点であることを大内教授は早期に気づいていたのではないか)
 そんな考えがひらめき、大内教授の説明状況を整理してみた。

(2020年)
・7月21日  大内教授の『奨学金が日本を滅ぼす』の一部が三宅の『日本の奨学金はこれでいいのか!』2章と類似していることを発見、説明を求める。
・8月25日 『奨学金が日本を滅ぼす』の類似について中京大に告発
・9月14日 大内教授が代理人弁護士を通じて「盗用・剽窃にはあたらない」旨回答。根拠として、複数の記事や講演録を提示。
・9月23日 中京大の予備調査にたいして大内教授が意見書提出。「盗用・剽窃にはあたらない」として複数の記事等を提示。
・9月25日〜10月5日 大内教授の提示した記事の一部が雑誌『選択』の三宅執筆記事と類似していることを発見、中京大に追加の告発をする。
・10月13日 大内が中京大に追加意見書。「『選択』は読んでいない」

ここから先は

3,610字

¥ 500

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?