日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(21) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 5

 控訴審は示談交渉のときから相談していたH弁護士に委任することにした。2か月ほどかけて議論を重ね、控訴理由書を完成させて提出した。

(事実の取捨選択により構成された文章も著作物である)
 原判決は、上述のとおり、控訴人と被控訴人の共通部分を抽出した上、当該共通部分は「事実」であり、又は「一般的な考察の一部であって、思想又はアイデアに属するもの」として、著作物性を具体的な理由なく否定し、原告の請求を認めなかった(いわゆる濾過テストに則った判断であると思われる)。 しかし、事実であるという一事をもって、著作物性を否定するという原判決の論理は誤りである。どのような事実を取り出し、分析し、文章として構成するかは、人それぞれによって異なり、まさに筆者の個性が表出されるものである。

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