日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(18) 3章 「著作権裁判」の落とし穴 2

(今回から登場人物名を一部実名にしました)
 著作権の教科書によれば、そろそろ著作物性と類似性を軽くクリアして、最大の争点である依拠性の審議に入ってもよいころだった。そう信じて疑わなかった。

 依拠性、つまり大内裕和・中京大学教授が私の記事を参考にしたかどうかだ。最初に発見した「奨学金が日本を滅ぼす」のほうは、盗用元が共著『日本の奨学金はこれでいいのか』なので議論の余地はなかろう。私の原稿を読んだ上で似た文章を書いたことは争いようがない。問題は、『選択』の記事からのパクりのほうだと思った。大内教授は『選択』記事は読んでいないと言っている。読まずに書いた。すべて独自に調査し、独自に書いた結果、私と瓜二つの文章になったという説明だ。どうみても無理のある話だが、論破する必要がある。

 「読んでいない」という説明を崩すための手がかりはあった。たとえば「約1億400万円」の問題だ。『選択』記事に、2010年度に日本学生支援機構がサービサーに支払った手数料の額として「1億400万円」との記述がある。私が文部科学省に取材して「104百万円」という回答を得て、それを根拠に書いたものだ。一方、大内教授が書いた『選択』記事とよく似た記事約10本をみると、「1億400万円」というものと「約1億400万円」というのが混在している。私はこの点に注目して追及した。

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