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誤訳のパターン7 ケアレスミス~その2

間違っている翻訳、つまり誤訳にはいくつかパターンがある。
 昨日は、注意不足によるケアレスミス(タイピングエラーや変換ミス等)についての実例を見てきた。
 今日は、具体的な原因とその対策を考えてみる。ケアレスミスの第2回ということだ。
わたしは、ケアレスミスの原因を次のように考えている。

ケアレスミスの原因は3つ

(1) 集中力不足(睡眠不足、体調不良、メンタル不調、 家族の病気、差し込み仕事等)
(2) 環境不良(PC、照明、モニタ、イス等が最適でない)
(3) 自己の習慣や性格の理解不足・未対応

これらをなくしていけばケアレスミスは減る。ひとつずつ説明しよう。
 まず(1)の「集中力不足」の原因を大別すると、身体面と精神面に分かれる。質のよい睡眠をたっぷりとるのが何よりの解決策だが、そうもいかなかったり、そもそも不眠気味という場合もあるだろう。
 そこでわたしが勧めるのはまずこれである。

(1) 集中力不足の解決策 1. コンディションを整える

 コンディションを整える方法は多く持っておけば持っておくほどよい。それらを、場所・所要時間別に分類しておく。 わたしの場合はこうなる。

3分間その場で:ツボ押し、アロマオイル、腹式呼吸、飲み物
20~30分その場で:筋トレ、ラジオ体操、ストレッチ、仮眠、
         音楽鑑賞、エアロバイク
30分以内の外出:散歩
1時間以上の外出:整体、カフェ(ランチ、コーヒータイム)、
         スーパー銭湯

 このように分類しておくと、「締め切りまであと◯時間(◯日)あるから、いま(今日)はxxをしよう」と決めることができる。
 たとえば、「あと2時間で締め切りだけど集中が切れてきた。腹式呼吸をしてツボ押しをするか」「締め切りは明日だから、今日はお気に入りのカフェでランチ食べちゃえ」などと「集中力回復のための行動」に瞬時に移ることができるのだ。

(1) 集中力不足の解決策 2. 不調時のプロセスをパッケージ化しておく(考えずに「こなせる」ように)

 ここまで書いたのは、いわば「休憩をとって何かをすることで集中力を回復させる」方法ということである。次は、体調がやや悪い、メンタルがちょっと落ちている、といった「なんとなく不調」のときの「仕事の進め方」について考えてみよう。
 まずは、「いつもの自分」と「いつもの自分ではない自分」の2つに分ける。「いつもの自分」のときは、いつもの通りに仕事を進めればよいだろう。だが、「いつもの自分ではない自分」のときはどうしたらよいのか。
この解決策をずっと探していたのだが、放送大学で今年取っている「よりよい思考の技法―クリティカル・シンキングへの招待」にヒントがあった。
 そこから得たわたしの答えは、「不調時のプロセスをパッケージ化する」ということだ。たとえば「いつもの自分」は、1万ワード以内の短い案件ならば、ひとつのプロセスで「翻訳チェック」「ファクトチェック」「誤字・脱字チェック」をする。
だが、「不調時のプロセス」では、そうではない。

プロセス1 翻訳チェックをする
プロセス2 ファクトチェックをする
プロセス3 誤字・脱字チェックをする
プロセス4 数字チェックをする(原稿を拡大プリントして、蛍光ペンを引きながらひとつずつ指差しチェック)

 こんなふうに、プロセスをひとつずつ細かく分けてまとめておく。自分自身が「いつもどおりではない」のに「いつもどおりのプロセス」に従えば、ミスが増えるだけ。「いつもどおりではない」ときは、そのためのプロセス、つまり「不調時のプロセス」に沿って仕事を進める。
 上記はわたしの場合だが、一般的に「不調時」は「プロセスを細かく分ける」プロセスを作ると品質が落ちるのを防げるはずである。
 「いつものプロセス」に比べて時間はかかるが仕方がない。集中力が落ちているときには同じ作業をするのに長時間かかるということもわかっておいて、予備日を設けて計画を立てるのも大事だ。
 「不調時のプロセス」を作って、それをプリントして仕事部屋に貼っておく。「何をどうやるかを考えずに、決まっているとおりのプロセスに従う」というのが大事である。そうすれば、容量の決まっている脳のメモリーを「何をどうやるか」に消費せず、やるべき仕事だけに注ぎ込むことができる。
 繰り返すが、「今日はちょっとダメだなぁ」という日は、壁を見て「不調時のプロセス」に従い、考えずにひとつずつ「こなして」いくことで、品質低下を防ぐことができるのである。

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