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#8 ビジネスゲーム研修の可能性 〜米国研究者へのインタビューをもとに〜

先日、アメリカで行われたゲーム研究の国際学会へ参加してきました。

人生初の一人海外&国際学会だったので、不安と緊張でいっぱいでしたが、当日の発表では、かなりの好評をいただき、自分が行ってきた研究が間違いではなかったことを実感できました。

また同時に、これまで出会えなかった海外の研究者達とのつながりを持てたも大きなメリットでした。連絡先を交換した人とは、学会後も連絡を取り合い、お互いの国の研究状況などについて情報交換を行っています。

今回は、そこで私が海外の研究者達との交流を通じて得た知見を共有したいと思います。「大人を対象としたゲーム学習」にご関心のある方はぜひご覧ください。

はじめに

タイトルにある通り、本記事ではビジネスゲーム研修の可能性について考えます。

特に焦点を当てたいことは、海外から見た"日本の"ビジネスゲームです。そのため、タイトルではあえて「BUSINESS GAME KENSYU」としました。

国際学会の発表では、自身が開発したゲームの展示も含めて行ったのですが、アナログ形式のゲーム学習ツールが目新しく感じる人も多く、そこに日本らしさがあるのではないかと考えました。

それでは、ここからは「BUSINESS GAME KENSYU」について、次の3点に沿って解説を行っていきます。

・日本におけるゲーム研修の発展
・アメリカ人研究者へのインタビュー
・Business Game Kensyuの可能性

日本におけるゲーム研修の発展

振り返ってみると、日本におけるゲーム研修は、アナログゲームを中心に発展してきました。

特徴的なのは、デジタルではなく、アナログという点です。実際にGoogle検索をしてみても、ビジネスゲーム研修の多くは、アナログ形式であることが分かります。

では、なぜアナログゲームなのでしょうか?アナログならではの特徴が強いからでしょうか?アナログゲームは、非電源であるからこそ、柔軟に教育導入が可能で、より多くの人に提供できるメリットがあります。

もちろん、こうした観点もあると思いますが、今回は主にどのように市場が形成されてきたのかという点にフォーカスを当ててみます。

日本国内において、ビジネスゲームがアナログを中心に発展してき背景には、教育をテーマとするアナログゲームを扱う事業者中心の団体の積極的な活動や、ビジネス界のリーダー的存在である孫正義氏から『マネジメントゲーム』に対する高い評価といった要因があります。

これらの成果によって、ゲーム研修の風景が描きやすくなったり、ゲーム研修へのお墨付きが得られたように思います。

また近年は、こうした流れを受けて、アナログ形式のゲーム研修を提供する事業者も増加傾向にあり、ビジネスゲーム研修=アナログが中心という社会的な認識が形成されていったのではないかと考えます。

以上のような特徴は日本独自のものとして捉えることもできるので、実際にアメリカ人研究者へ質問してみることにしました。

アメリカ人研究者へのインタビュー

アメリカは最も早くビジネスゲームの開発と提供を行った国です。その当時開発されたゲームは時代的にもアナログが中心でした。

その後、PCの普及やインターネットの登場により、高度なシミュレーション性が求められるようになっていきます。特に、アメリカのビジネススクールでは『MARKSTRAT』というシミュレーションゲームが人気で、こちらはデジタルゲームです。

こうした背景から、アメリカのゲーム学習はデジタルの印象が強かったため、研究者へインタビューを行いました。あくまで研究者1名(南カリフォルニア在住)に聞いたのみですが、実際の生の声ということで紹介させていただきます。

現時点での結果としては、アメリカでもアナログ形式のビジネスゲームが、ビジネススクールや大学の授業で使用されていることがわかりました。

この状況は、日本のビジネスゲーム研修がアメリカにも受容される余地があると捉えることもできます。

また、社会人向けのゲーム学習はビジネススクールや大学の授業で行われることがほとんどのようです。

日本とアメリカでは、人材育成の考え方に違いがあり、研修の立ち位置も異なります。そのため、やや文化差はあれど、日本で作られたゲームも提供先によっては、上手くフィットする可能性があります。

例えば、日本の新入社員研修向けに行っている内容を、アメリカのビジネススクールや大学で実施するといったパターンです。

日本のビジネスゲーム研修を海外に発信することの可能性に気づいたと同時に、それに向けてチャレンジすることの必要性に気付かされました。

Business Game Kensyuの可能性

では、最後に、Business Game Kensyuの可能性についてまとめたいと思います。

現状、ビジネスゲーム研修の多くが日本に閉じた状況であるといえます。もちろん、日本でこれから成熟していく必要がある分野であることは間違いありませんが、それのみでは限界が来てしまいます。

具体的に、その限界とはガラパゴス化です。かつてのガラケーのように、国内市場重視の考えが国際的活力を損なわせる可能性があります。

互換性のない設計や一つの環境に依存しすぎることは、スマートフォンのような新技術による代替を引き起こします。

しかし、現代の日本における、アナログ形式のビジネスゲームは様々あれど、私は価値がないものだとは思っていません。アナログにはデジタルにないメディア的特徴があります。詳細は以下の記事をご覧ください。

https://note.com/masato_ednote/n/n8563690ada19

また、国際学会当日にコメントいただいた研究者から以下のようなメッセージをいただき、海外も視野にいれる必要性を感じました。

I found your card game fascinating because I have not seen anything like it in the US! A card game like yours would be a great resource in an American university or company. It is a fun and engaging way to learn about different concepts. Your idea has a lot of potential, and I am very excited to see the results of your future research.
私はアメリカではこのようなものを見たことがないので、あなたのカードゲームに魅力を感じました!あなたのようなカードゲームは、アメリカの大学や企業にとって素晴らしいリソースになるでしょう。さまざまな概念を学ぶための楽しく魅力的な方法です。あなたのアイデアには多くの可能性があり、今後の研究結果がとても楽しみです。(大空訳)

そのため、今後はビジネスゲーム研修のグローバル展開に向けて、個人的に動いていければと思っています。これから行っていきたいこととしては、大きく分けると次の2つです。

・英語による、日本のビジネスゲーム研修の海外発信
・短期的なPJで終わらない、長期的なPJになるゲーム研修デザイン

前者に関しては、今後ビジネスや研究を通して随時アウトプットを出していく予定です。一方、後者に関しては、次回のnote「#9 ゲーム学習のサービスデザイン PART2」で触れたいと思うので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

まとめ

さて、今月は「ビジネスゲーム研修の可能性」というテーマで、自身の国際学会への参加をベースに、そこで得た知見を紹介しました。

今後はよりグローバルな研究成果をお届けできればと考えています。

次回の記事では、「#9 ゲーム学習のサービスデザイン PART2」として、前回のPART1の続きを解説する予定です。

本記事が、皆さまの今後のゲーム学習に対する考えや学びへのヒントになれば幸いです。

もっと詳しく知りたい方へ
・研修ゲームラボ:教育をテーマとするアナログゲームを扱う事業者中心の団体
・マネジメントゲームMG®(MG研修):孫正義氏が認めたビジネスゲーム
・国内ゲーミフィケーション業界カオスマップ 2023年度版:セガ エックスディー社がまとめた国内事業者のカオスマップ
・Strategic Marketing Simulation with Markstrat:アメリカのビジネススクールで人気のビジネスゲーム



筆者:大空 理人
東京大学大学院 学際情報学府 修士課程。Ludix Labにて、人の学びや成長につながる「楽しい経験」を創り出す学習コンテンツの設計や教育プログラムのデザイン方法論を研究。また大学院進学と同時に、株式会社NEXERAに新卒入社し、クリエイターとしてビジネスゲーム及び研修カリキュラムの企画、開発、運用を行う。2023年に『ELSI Game Lab』を設立。科学技術と社会の接続・課題解決にも努める。

東京大学 ELSI Game Lab:@ELSIGamelab
大空 理人:@masato_edut

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