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#2 学びにゲームをブレンドしよう

コーヒーには「ブレンドコーヒー」という種類や品質の異なるコーヒー豆を混ぜ合わせ、味や香りをより良くしたものがあります。

実は学習分野でも、この"ブレンド"という考え方は存在し、これまで「ブレンド型学習」と呼ばれてきました。

ブレンド型学習は、形式、人数、内容、ツールなど、目的に応じて複数の要素を組み合わせ、学習効果の最大化を目指します。

本記事では、そのブレンド要素の一つとして、ゲーム学習を紹介できればと思います。ゲーム学習は、他の学習手法と組み合わせることで、高い学習効果を生み出すことが期待できます。

「ゲーム学習に興味はあるけど、どのように使えば良いか分からない」「ゲーム学習の効果を最大化させたい」といったテーマが気になる方はぜひご覧ください。

はじめに

ゲーム学習を活用するにあたって、ゲーム以外の周辺コンテンツを拡充させることは重要です。

ゲーム学習は、ゲームという性質から、強みと弱みがはっきりしています。例えば、ゲームによって学習意欲の向上や複雑な概念理解が容易になる一方で、ゲームに夢中になり過ぎることで本来の学習目的が疎かになる可能性も唱えられています。

*ゲーム学習の学びや活用時の注意点に゙関しては、前回の記事にまとめています。ぜひご参照ください。https://note.com/masato_ednote/n/n20b60d2ce41d?sub_rt=share_pw

実際に、藤本(2017)は、単にゲームを取り入れれば学習効果向上につながるわけではないとして、学習目的に沿った効果が得られるようにゲームプレイと学習を関連付けることが求められると指摘しています。

以上を踏まえると、「どのようなゲームを設計するのか、教育利用するのか」は大前提として大切なのですが、それと同じように「ゲームでは補いきれない部分をどうカバーするか」も重要となります。

そこで、具体的にそれをカバーする方法について、下記のポイントに沿って紹介していきたいと思います。

・ゲーム学習の構成とは
・ミクロ視点で、学びを最大化するには
・マクロ視点で、学びを最大化するには

ゲーム学習の構成とは

まず、そもそもゲーム学習を構成する要素について紹介します。
ゲーム学習は基本的に、「講義(インプット)」→「ゲーム(アウトプット)」→「振り返り(ディブリーフィング)」という流れで進行していきます。

ゲームで得られる経験は人によって様々であるため、その経験を学習と関連付けるために、「講義」と「振り返り」が存在します。では、それぞれの役割について考えてみたいと思います。

講義の役割は「学びの均一化」です。ゲーム経験は、個人に依存してしまうため、学習の質が人によって変動してしまいます。しかし、講義を行うことで、全員が学習目的と経験を同じように照らし合わせることが可能になります。

振り返りの役割は「経験の転移」です。特にゲーム研修のような場合は、現場での実践につながらなければ、意味がありません。そこで、ゲームによって得られた経験を内省し、概念化し、実務で実践するための足場かけを行うために振り返りを行います。

ミクロ視点で、学びを最大化するには

ミクロ視点で、ゲーム学習の効果を最大化するためにできることは、前述した「講義」「振り返り」の改善です。

講義

講義に関しては、講義資料を事前に共有したり、インプットとアウトプットを繰り返す設計にしたりすることが有効と考えられます。

これによって、ゲームでの学びを即時的に学習目的と照らし合わせることが容易になります。

ゲーム学習における講義は、ある意味、教育 / 研修としてのメッセージやゴールを伝えるものでもあるため、講義内容そのものについて、深く検討する必要があります。

振り返り

振り返りに関しては、ファシリテーションやワークシートの導入によって改善が可能です。

ファシリテーションはゲーム中も行いますが、振り返りではゲームと学習を結びつけるだけでなく、学習者の現実での実践に対する肯定的感情を引き出すことも求められます。そのため、ファシリテーターのコーチングスキルによって振り返りの充実度が高まります。

また、ワークシートは、実践しようと思うことを具体的なアクションプランに落とし込むためのツールです。これがあることで、一回の学習機会であったとしても、それ以降も継続して行動するための道しるべになります。

振り返りは、ただ考えたことをグループで共有して終わりではなく、どのような順番で何を行えばゲーム経験を活かせるかを念頭にデザインする必要があります。

マクロ視点で、学びを最大化するには

マクロ視点で、ゲーム学習の効果を最大化するためにできることは、教育プログラムとしての全体設計です。

ゲーム学習を一つの授業や研修での実施として考えたとき、その実施前後でできることについて紹介します。

なぜ、その実施前後まで検討するかというと、あくまで研修における話ですが、ブリンカーホフの法則において、学習効果の上がらない要因の割合は「実施前:実施中:実施後=4:2:4」であると示されているからです。

これを踏まえると、もちろんゲーム学習を行う当日のコンテンツを充実させることも重要なのですが、実務への転移を促すためには、その実施前後も併せて考える必要があるといえます。

ゲーム学習実施前

実施前の問題点としては、学習者の事前の動機づけが行われていないことが指摘できます。

なぜその学習を行うのかが明確でなかったり、自身の学習レベルとの乖離があったりすると、わざわざそこに時間を割くことには意欲的になれません。

その解決策として、事前アンケート / テストの実施、予習用e-ラーニングの視聴を促すことが考えられます。これにより、学習者のニーズやレベル感を把握することができます。

実施前に関しては、今回の学習目的を達成するために、なぜゲームで学ぶのかも併せて提示することも重要です。

ゲーム学習実施後

実施後の問題点としては、学習に対する事後のフォローアップが行われていないことが指摘できます。

実施直後は、誰しも学びの活用に前向きになりますが、時間が経てば目の前のことに追われ、次第に忘れ去られていくことも少なくありません。

やりっぱなしの教育で終わらないためにも、事後アンケート / テストの実施、復習用e-ラーニングの視聴を促し、それを直後や1ヶ月後など定期的に繰り返し行うことが効果的です。

特に、アンケート / テストの実施は、学習内容を思い出させるリマインド機能として考えることもでき、学習効果を上げるための一施策と捉えられます。例えば、アンケートを実施することで、学びの記憶を蘇らせるアンカーになったり、学びの実践度を内省できるチャンスになったりします。

以上のように、ゲーム学習を導入する際には、当日のプログラム、そしてその前後を含めたカリキュラムの全体設計を行うことが、その効果を最大化させるために必要です。

まとめ

今月は「学びにゲームをブレンドしよう」というテーマで、ゲーム学習について紹介しました。

ゲームを使った教育活動において、ただゲームを行うだけでは上手く機能しません。その他の学習手法とブレンドすることによって、ゲームの良さが活かされ、学習効果の最大化へつながります。

ゲーム学習の導入を考えられている企業の育成担当者の方や教育関係者の方は、ぜひ「ブレンドされたゲーム学習」を選んでいただければと思います。

本記事が、皆さまの今後のゲーム学習に対する考えや学びへのヒントになれば幸いです。

もっと詳しく知りたい方へ
日本教育工学会 監修、藤本 徹・森田裕介 編著(2017)ゲームと教育・学習


筆者:大空 理人
東京大学大学院 学際情報学府 修士課程。Ludix Labにて、人の学びや成長につながる「楽しい経験」を創り出す学習コンテンツの設計や教育プログラムのデザイン方法論を研究。また大学院進学と同時に、株式会社NEXERAに新卒入社し、クリエイターとしてビジネスゲーム及び研修カリキュラムの企画、開発、運用を行う。2023年に『ELSI Game Lab』を設立。科学技術と社会の接続・課題解決にも努める。

東京大学 ELSI Game Lab:@ELSIGamelab
大空 理人:@masato_edut


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