組織力

「計画力を活かす」という観点から組織の問題解決能力成熟度モデルを考えてみた

私が「計画」に向き合うきっかけになったのは、二十数年前のアルテミス・インターナショナル日本法人への転職でした。
当時のアルテミス・インターナショナルは、おそらく世界で最も有名な、プロジェクトマネジメント方法論とプロジェクトマネジメントツールのグローバル企業で、各国に腕っこきのコンサルタントを抱えていました。先輩からの受け売りなので真偽のほどはわかりませんが、もともとの社名は「アポロ(太陽の神様)」だったらしく、それが米国のアポロ計画(NASAによる人類初の月への有人宇宙飛行計画)で採用されたことから社名変更を余儀なくされ「アルテミス(月の女神)」に改名されたという、とってもオシャレな逸話の残る会社でした。

ここで過ごした2年弱の間に私は多くのことを学んだわけですが、その時に出会ったのがCMM(Capability Maturity Model:能力成熟度モデル)です。私はCMMに感銘を受けました。これは、組織がプロセスを適切に管理できるようになることを目的に遵守するべき指針を体系化したもので、5段階で構成されていました。

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当時、CMMに関連する情報をあれこれと収集しましたが、なかなか腹落ちできずにいました。そこで、私なりの理解で、この5段階を次のように言い直しました。当時の私には、これが正しいか否かよりも、腹落ちすることのほうが大切でした。

[私なりに理解したCMM]

  成熟度レベル 1   属人的な状態
  成熟度レベル 2   管理された状態
  成熟度レベル 3   対処できる状態
  成熟度レベル 4   予防できる状態
  成熟度レベル 5   最適化できている状態

その後は、ことあるごとにこれを思い出し、コンサルティング活動に活かしました。コンサルタントをやっていると、お客様の組織を成熟度の観点から考える機会があるからです。つい先日も、このような機会に巡り合いました。

「問題を顕在化できない」という課題を抱えていたお客様がいました。プロジェクトマネジメントの基本行動(週次で実績を収集し、計画を更新し、対策を検討するという行動)を定着させたことでこの課題は解決したわけですが、新たな課題が浮上しました。「顕在化した問題を解決できない」という事実が浮き彫りになったのです。この状況にCMMを連想したのは、満員の通勤電車の中で人ごみに揉まれていたときでした。
落ち着ける場所に移動した私は、「計画力を活かす」という観点から組織の問題解決能力を成熟度モデルに展開してみることにしました。

 [問題解決成熟度モデル]

  成熟度レベル 1   個人の頭の中にある状態
  成熟度レベル 2   問題を顕在化できる状態
  成熟度レベル 3   問題に対処できる状態
  成熟度レベル 4   問題を予防できる状態
  成熟度レベル 5   最適化できている状態

「レベル 1」では、問題解決が人に依存しており、個人で抱えきれないほど状況が複雑になると問題が顕在化します。
「レベル 2」では、計画と進捗管理により問題は顕在化しますが、その問題が解決されずに放置されます。
「レベル 3」では、大きな問題に対しては組織的に対処できるようになります。
「レベル 4」では、予測能力が備わることで、大きな問題を未然に防ぐことができます。
「レベル 5」では、環境の変化や目的の変更に柔軟に対して、仕組みを最適化することができます。

ちなみに「レベル4」は杓子定規にいえば「問題は発生しない」という状況を指します。しかし現実的には、発生しても1週間以内に解決されている、もしくは1週間以内に実現可能な解決策が提示され悪影響を残さずに解決するという状況を含むと考えています。これは、進捗管理や状況確認を目的とした定例会が毎週行われているという前提の話です。

この5段階モデル、とても大雑把なレベル分けのように見えますが、組織が目指すべき姿を、関係者全員でシンプルに理解するには十分です。
私がお付き合いしているこのお客様は、プロジェクトマネジメント基本行動の定着やプロジェクトマネジメントツール(Microsoft Project)の活用などで地力強化に取り組み、大きな成果をあげています。しかし、「レベル3」にはまだ至っていません。
この成熟度モデルは彼らに目標を与え、モチベーションアップに貢献しています。

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