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「日本語の先生」の先生ー日本語教師養成講座の講師の裏側

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このマガジンでは、日本語教師養成講座ではたらく私がどのようなことを考えて授業をしているのかについて書いています。日本語教育に関わる現場の声や理論の解説は巷に溢れていますが、ここで…
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#教員養成

日本語教育と文化―社会参画と多様性

日本語教育と文化―社会参画と多様性

よく日本語教育には文化の扱いがよく触れられています。
ただ、海外か日本のどちらで教えるかで内容も目的も大きく異なります。そういう中で文化を教えるということを養成講座で教えることは焦点が定まりにくいという難しさがあります。しかし、授業の中で伝わったと思うこともあります。

●文化学習は自分なりの文化を作り上げていくことだ

文化を学ぶことはややもすれば規範の押しつけになっていきます。しかし、文化とい

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日本語教師は生涯続ける職業か?

日本語教師は生涯続ける職業か?

日本語教師養成講座講師のみなさん、こんにちは。
最近、衝撃的なことを知りました。
養成講座で私のクラスに出ているほとんどの人は、日本語教師を生涯続けるつもりはないと。

もちろん、日本語教師の待遇の問題や、就業場所が(オンライン日本語学習が進んでいるとはいえ、全国各地にふんだんに日本語学校があるわけではないので)ある程度限定されることなど色々な要因はあります。または、まだ現場に立っているわけではな

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生か、加工済みか。

生か、加工済みか。

ハムの話ではありません。
リーディングの話です。
養成講座では教授法の話もありますが、リーディングって実際どうなっているのかなあとふと思いました。

私は日本語教育の異端なので、もしかすると一般的ではないのかも。そして、一般的でないことを教えたかもしれないと。

読解は生教材を読めるのが目標?

 読解指導といえば、これまで養成講座で読解指導について扱っていても、生活に必要な読み、興味関心を持てる

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オンライン授業とその裏側

オンライン授業とその裏側

勤務先はオンライン授業になりました。
とてもつらいです。いろいろな理由があります。
教員養成の立場としてもどのような心構えでこの状況に立ち向かう教師を育てるのが最善かとても悩みます。
今回は、可視化されるものという視点でまとめます。

不均衡な負担の可視化

 オンライン授業に適時移行することは学びを止めないという考えに沿い、否定すべきものではありません。
 しかし、非常勤講師は基本的に授業時間に

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いろいろな学び方を受け入れる

いろいろな学び方を受け入れる

みなさんは、文章を読むとき、音読派ですか?黙読派ですか?
たぶん多くの人は黙読派で、つまづいたら音読してみたり、それについてリアクションを声に出してみたりしているのではと思います。そして、それは教室での学習活動でも同じなのですが、読むスタイルの違いが思わぬ価値観の対立を浮き彫りにすることがあります。

話しながら読むのは真面目じゃない学習者?

 日本語の読みの流暢さが足りないと音読が混じったり、

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達成感、のち、もやもやしょんぼり

達成感、のち、もやもやしょんぼり

先日ね、教科書分析の授業をしたんです。

まるごと、中級を学ぼう、できる日本語の3つを選びました。
それで、前日にはひつじ書房の「日本語教科書が目指すもの」を読んで、学習者への思いみたいなものを感じて授業をしたんです。

 当日はグループワークで、前回渡した「みんなの日本語」の分析を参考にやってみてくださいねと。そば耳立てて聴いていると、活発な意見交流がありました。教科書を分析したグループを解体し

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温故も知新も

温故も知新も

だいぶと更新が空きましたが気にせずいきます。

今日はこれまでとは少し違う話です。日本語教育入門書に関するお話。私はだいたい一つの単元をやるのに少なくとも3つの本を読みます。1つは、会社指定の教科書、2つ目に1990年代くらいの古い本、3つ目に2017年以降に出された本です。

日本語教育入門書って2017年頃から大量に出版されました。さぞ、充実した中身、色んな知見が盛り込まれているのだろうと思っ

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「文法の教え方」の教え方(3)

「文法の教え方」の教え方(3)

来年度も頑張ります(今年度は仕事納めました)。今日もいくつか例を見ながら考えてみたいと思います。

​「ビールは冷蔵庫に冷やしてあります」「~てある」はよくこういう場面設定で、準備の意味として使われることが多いですよね。私の知る限り、みん日でも、まるごとでもそうだったと思います。(私は大変地味な生活をしているので、パーティーの準備なぞ100年に1回しかしません。)しかし、前回に記事に書いた中俣(2

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口蓋帆の筋肉が動かないと

口蓋帆の筋肉が動かないと

ちゃらり~鼻からぎゅ~にゅ~。
って言ったら、みなさんに白い目で見られました。
関東の人怖いですよね(関西だったら鼻で笑われる)。
ノーリアクションの怖さを知りました。

さて、今日の話題は、文法の授業の準備に使った本の紹介です。

中俣尚己(2014)『日本語教育のための文法コロケーションハンドブック』くろしお出版 https://www.amazon.co.jp/dp/4874246303/r

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なぜnoteを始めたか

なぜnoteを始めたか

簡潔に言うと、「日本語の先生」の先生になったけど、悩んでる人は少なからずいるだろうこと、「日本語の先生」の先生になることのハードルを下げることです。

まず、1つ目の「日本語の先生」の先生になったけど、悩んでる人は少なからずいるだろうの件。
特に、理論は扱う範囲が広く、例えば、専門が文法だからと言って、日本語教師養成で扱うすべてについて網羅しているという人はなかなかいないのではないでしょうか。また

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なぜ「日本語の先生」の先生になったのか?

なぜ「日本語の先生」の先生になったのか?

今日はなぜ「日本語の先生」の先生になったのかについて話をします。ちょっと順番が前後しますがご容赦ください。

まず、私自身、日本語教育を学び始めて10年目、現場に関わって6年目の終わりです。ですから、知識や場数は足りていないのは自他共に認めるところがあります。それでも、これにチャレンジした一番大きな理由はいくつかの<やるせなくなる出来事>があったからです。

CASE1 東南アジア出身の学習者だか

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「文法を教える」ために教える。

「文法を教える」ために教える。

前回の続きですが、残念ながら、どうすればいいのか、私自身模索中です。少なくとも今年1年で気づいたことだけは羅列します。

一般に日本語教師養成講座は、「理論(座学)」と「実習」の2つからなります。そして、私が担当しているのは「理論」の方です。確かに、理論ですから、その分野の内容を伝えればそれでいいと言われればそんな気もします。

でも、母語話者をはじめ日本語が分かる人を相手にした仕組みを学んだだけ

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「日本語の先生」の先生になる。

「日本語の先生」の先生になる。

大学、大学院(修士)をいわゆるストレートで修了し、博士でずっこけて定職についていないプー太郎がこのNOTEをお送りいたします。

2020年、私はある企業が運営している「日本語教師養成講座」で仕事を始めました。<外国人に日本語を教えたい方々>に<日本語の教え方>を教える仕事です。今まで、学生として、一通りのことを学んできましたし、概説書も読めばなんとなく、「ああ、あの話ね。」と思います。日本語の教

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