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一生ボロアパートでよかった①〜⑩まとめ
① 私が幼稚園の年長になった頃、両親は家を買いました。新築の白い家です。よくある40坪程度の分譲住宅の一つでしたが、私にとって自慢の家でした。それ以前はボロアパートに住んでいました。ボロアパート時代の父は毎日きちんと仕事に行って、休みの日は家族サービスもする"良い父親"でした。母も私にとって"自慢の母親"で、よく美人と褒められました。両親は新築の家に引っ越してから兄弟のいない私に犬を買ってくれまし
もっとみる一生ボロアパートでよかった⑲
足早に来た方向へ戻り、駅が見えてくると縮こまった身体も元のサイズに戻れた気がしました。駅前で軽く深呼吸をしました。2、3回繰り返すと排ガスの匂いが肺から身体の内側に染み渡り、現実世界に帰ってきたと実感できました。
駅前の人影はまばらになっていました。朝、駅に着いた時はまだサラリーマンや部活にでも行くだろう学生の姿がありましたが、すっかり居なくなっていました。駅周辺に見えるのは高齢者がほとんど
一生ボロアパートでよかった⑭
両親の部屋を荒らしたその後、結局私が危惧していたような両親からの反撃はありませんでした。てっきり立て籠もった部屋の扉を無理矢理こじ開けられたり、怒鳴って殴って叱られたりするものだと思っていたのですが、肩透かしでした。
今思えば、私は両親に叱って欲しかったのかもしれません。「そんな事をするのは間違っている」と、親らしく怒って欲しかったのかもしれません。両親には、我が子の過ちを悪役になってでも正
一生ボロアパートでよかった⑬
春休みの終わりが目前に迫った4月の頭。春の日差しを受けて花々が芽吹くように、私の心にも焦りが芽吹き始めていました。
あともう少しで新学期になる。中学3年生になる。そして今年は高校受験がある。それが私の中で焦りを芽吹かせる主たる原因でした。少し先の未来を考えれば、新学期からでも学校に行くべきである事は明白でした。
でも私にはそれが恐ろしく怖かったのです。だって、もう既に一度逃げてしまいまし