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読後寸評

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読んだ本で感じたことを綴っています。 好きな作家はラディゲですが、最近よく読むのはジェンダー論。A4用紙1枚程度で、800〜1000字程の感想文です。
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#本

平成と令和料理の三種の神器とは⁉️「おいしい食の流行史」

平成と令和料理の三種の神器とは⁉️「おいしい食の流行史」

本(おいしい食の流行史)

NHKラジオで放送された番組「食の流行から見る暮らしの近現代史」を書籍化した本です。筆者の阿古真理さんは作家で、生活史研究家でもあります。料理好きの私は、以前「小林カツ代と栗原はるみ」(ベタすぎる!タイトルですが)という筆者の著書を読んだことがあったので、今回も好きな食べ物の内容ということもあり、新聞の書評で見つけ読んでみることにしました。

この本はラジオ番組の書籍化

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女1人で全個制覇(^^)「47都道府県女ひとりで行ってみよう」

女1人で全個制覇(^^)「47都道府県女ひとりで行ってみよう」

本(47都道府県女ひとりで行ってみよう)

47都道府県を月1回のペースで全国制覇した旅行エッセイです。タイトルにあるように女性1人で旅したもので、年間12カ所ですから、2003年から2006年まで足掛け4年かけたことになります。
筆者の益田ミリさんはイラストレーターですが、エッセイや小説も執筆しています。文庫本では1地方5ページ程で、6ページ目に旅の出費内訳と4コマ漫画が描かれています。筆者は東

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広告業界に潜むジェンダーギャップを観察し分析した本「ジェンダー目線の広告観察」

広告業界に潜むジェンダーギャップを観察し分析した本「ジェンダー目線の広告観察」

本(ジェンダー目線の広告観察)(長文失礼します)

広告に潜むジェンダーギャップの実態を、そのジェンダー目線から観察し分析した本です。筆者の小林美香さんは写真やジェンダー表象に関する研修講座や展覧会の企画の他、雑誌やウェブメディアなどでも執筆しています。

広告においてはこうしたジェンダーギャップに限定されず、LGBTQに代表されるマイノリティーへのギャップも存在し、筆者は広告業界の現状を以下のよ

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タモリが言って話題の新しい戦前について対談した本「新しい戦前」

タモリが言って話題の新しい戦前について対談した本「新しい戦前」

本(新しい戦前)(長文失礼します)

民主主義が形骸化して閉塞感が強まる現代の日本を「新しい戦前」と呼び、その現状を論考した本です。タモリさんが言って話題になった「新しい戦前」ですが、この本では論客の内田樹さんと若手の政治学者、白井聡さんによる対談形式で進行し、様々な角度から「新しい戦前」の問題点を議論していきます。

最初に今日の政治の劣化は、国民の政治への無関心が最大の原因であると述べています

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実際に使える700語⁉️の本「すごい言い換え700語」

実際に使える700語⁉️の本「すごい言い換え700語」

本(すごい言い換え700語)

日常生活における会話を、スムーズに行うための言葉の言い換えを集めた本です。これはもう感想などではなく、ひたすらその言い換えの妙技に感心するのが得策だと思いますので、読みながらメモした言い換えの例文の数々を引用していきます。

言い換えにも何パターンかのシチュエーションがあり、それぞれの状況での言いかえが1ページごとに紹介されています。勿論例文ですから、中にはこれはア

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おつまみ作りの裏技満載の本‼️「23時のおつまみ研究所」

おつまみ作りの裏技満載の本‼️「23時のおつまみ研究所」

本(23時のおつまみ研究所)

副題が「おつまみは「料理にあらず「娯楽」なり」というおつまみ作りの料理本です。
先ずおつまみは6つの「軸」でできているというもので、それは香り・食感・塩気・うま味・温度・刺激で、目次もそのように構成されており、最後に〆で飲むという章が追加されています。筆者の小田真規子さんは、NHKのきょうの料理にも出演している料理研究家です。

私も料理は好きですがその中でもおつま

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建築(建物)と都市(街)を繋ぐ1階の重要性を説いた本「1階革命」

建築(建物)と都市(街)を繋ぐ1階の重要性を説いた本「1階革命」

本(1階革命)

建物における1階の重要性を解説した本です。筆者の田中元子さんは株式会社グランドレベルの代表取締役で、「1階づくりはまちづくり」をモットーに、都市空間や建築のコンサルティングやプロデュースを行っています。

筆者が最初に建築に関わるようになったのは、建築メディアの仕事に従事したことですが、そのことがベースとなり、建築と都市(街)をつなぐ存在としての1階部分に注目し、建物と同時に街の

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実の父親がネトウヨになったルポライターの力作「ネット右翼になった父」

実の父親がネトウヨになったルポライターの力作「ネット右翼になった父」

本(ネット右翼になった父)(長文失礼します)

実の父が、ネット右翼(ネトウヨ)となった原因と経過を克明に記録した本です。筆者の鈴木大介さんは、貧困問題などをテーマに取材しているライターで、自身の左翼的立場と相いれない父親の変貌に当惑しながらも、なぜそのようになったのか、その取材力を活用して実態に迫っていきます。

筆者が最初に指摘するのは、家族の右傾化と分断は、現代の普遍的な現象であり、ネトウヨ

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おふくろの味とは⁉️その実態と幻想に迫った本(「おふくろの味」幻想)

おふくろの味とは⁉️その実態と幻想に迫った本(「おふくろの味」幻想)

本(「おふくろの味」幻想)

おふくろの味として継承されてきた、その味の実態と幻想を分析した本です。筆者の湯澤規子さんは、筑波大学大学院を経て現在は法政大学の教授であり、専門は歴史地理学、農村社会学、地域経済学です。
新聞の書評欄で見つけたと思いますが、私も料理は好きな方なので買って読んでみました。
ちなみに「おふくろの味」とは何なのか?本の帯には「なぜ私たちは肉じゃがにほっとしてしまうのか?」と

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村上春樹氏の新作は脱構築の領域では⁉️「街とその不確かな壁」

村上春樹氏の新作は脱構築の領域では⁉️「街とその不確かな壁」

本(街とその不確かな壁)

村上春樹氏の新作長編小説です。発売日の4月13日に買って読み始めましたが、あとがきも含めると660ページにもなるので、ゴールデンウイークも読み続けて、2週間以上かかってやっと読み終えました。

読み始めると、あとがきにも書いてあるように2つの物語が同時に進行するのは、初期の長編「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出してしまいました。
2つの物語には17歳

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酒の短編集「文豪たちが書いた酒の名作短編集」(^O^)/

酒の短編集「文豪たちが書いた酒の名作短編集」(^O^)/

本(文豪たちが書いた酒の名作短編集)

タイトル通り文豪たちが書いた酒にまつわる短編集です。彩図者文芸部編集のこの本は、先ずは編集者の企画のユニークさに敬服といった感じですが、私もこの文庫本のタイトルを広告で見て、早速買ってきて読んでみました。

坂口安吾から始まり夢野久作、芥川龍之介や福沢諭吉と続き、最後は太宰治、さらに「太宰治との一日」を書いた豊島与志雄まで13人の作家の短編15編が収められて

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軍事アナリスト小泉悠さんの分析本「ウクライナ戦争」

軍事アナリスト小泉悠さんの分析本「ウクライナ戦争」

本(ウクライナ戦争)

遅くなりましたが、今年の正月休みに読んだ本です。ロシアによるウクライナ侵攻について考察した本で、筆者の小泉悠さんは度々メディアにも登場するロシアの軍事研究者で、敢えて侵攻ではなくウクライナ戦争としたことで、その悲惨な実態を伝えようとしたものです。

侵攻から1年を経過してなおも続くこの戦争の特集番組で、筆者がこの1年の予測が結果的に違っていたことを反省していましたが、戦争の

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投資歴25年パックンが出した本「パックン式お金の育て方」

投資歴25年パックンが出した本「パックン式お金の育て方」

本(パックン式お金の育て方)(長文失礼します)

漫才コンビ「パックンマックン」のパトリック・ハーランさんが書いたお金の育て方(増やし方)の本です。副題に「無理なく貯めて賢く増やす」とあり、その鉄則は最初と最後に繰り返し書いてありますが、以下の通りです。
・徹底的に節約する ・一生懸命働く ・投資でお金を増やす

本書では投資歴25年の筆者の経験に基づく色々な数式や数字が登場します。
先ず、72÷

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アジアの解放の虚構を分析した本「大東亜共栄圏」

アジアの解放の虚構を分析した本「大東亜共栄圏」

本(大東亜共栄圏)

副題が「帝国日本のアジア支配構想」と書かれた本書は、日本がかつて「アジアの解放」をスローガンに推し進めた大東亜共栄圏について、立案から実行、破綻までを時期列的に分析し考察した本です。 

筆者の安達宏昭さんは東北大学の教授で専攻は日本近現代史であり、本書は新書版ですが、その内容は研究論文の質量といってもいい程です。
合わせて筆者は研究者であるがゆえに、多くの資料などの文献を参

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