STOP! KPI乱用・・・一瞬でKPIについて理解できる記事を書きました。
こんにちは。ログラスの刈谷です。
エムスリーグループでマーケティングやサービスの責任者等々を経験して今はログラスというスタートアップにいます。
この記事は「KPIほど雑に使われている横文字ってなかななか無くね?」という思いに突如駆られて執筆しています。具体的には以下のようなことを考えました。
というわけで、この記事は「本を読むのは面倒」な人たちがラクして世の中をよくする方向に向かえることを目的に書いていきます。
わかりやすさ重視で、できるだけ完結に、KPI以外の横文字を使わずに説明することを心がけます。
KPIはおそらく乱用されている
KPIという言葉は昨今死ぬほど一般的になり、多くの企業で日常的に飛び交っています。
ところが、言葉の解釈が人によって異なることも多く、知らないうちにすれ違いが起きていると感じています。
例えばこのようなすれ違いが知ってか知らずか起こりがちです。
都度認識を揃えられればいいものの、忙しければ曖昧なままどちらか巻き取る、あるいは諦めて放置ということも多いのではないかと思います。
なぜ、このようなことが起こるのか?
それはKPIという言葉には真逆の解釈のされ方があるからだと思います。
KPIが持つ真逆の意味
KPIの真逆の解釈のされ方は、具体的には「要素分解としてのKPI」と「最重要ドライバーとしてのKPI」です。
「要素分解としてのKPI」は「事業を抜け漏れ・だぶりなく分解して構造化する」という観点で用いられます。つまり、洗い出されたすべての指標という意味で使われます。
一方、「最重要ドライバーとしてのKPI」は「事業に最も重要な急所を見極める」という観点で用いられます。つまり、全指標の中から選ばれたたったひとつの指標という意味で使われます。
「すべて」と「ひとつ」という真逆な解釈が人によって変わるってよく考えるとゾッとしますよね。組織の中で混同したまま使い続けるのは、不要な混乱を招く「KPI乱用」とも言えるかもしれません。
それぞれについて、より正確に理解できるように図示して説明します。
要素分解としてのKPI
KPIについてネットで検索するとおそらくこういう図が山程出てくると思います。何かしら重要そうな言葉を起点にして、たくさんKPIが連なっている・・・事業の最終目標から、事業運営上の指標を網羅的に洗い出しています。
この図をKPIツリーと呼ぶことが多いのですが、KPIツリーを構成する全指標をKPIと呼ぶケースが「要素分解としてのKPI」です。
これはこれで非常に尊い重要な洗い出しなのですが、事業の成長確度を高めようと思うと、もう一段掘り下げる必要があります。それが次の図です。
事業ドライバーとしてのKPI
先程の図から、KPIがひとつになり、それ以外が指標という言葉に降格しました。事業ドライバーとしてのKPIは、要素分解で洗い出されたKPIから選びぬかれたたった一人の英雄なのです。
(そもそもKPIという言葉は日本語訳では「重要業績評価指標」で、言葉の通り会社の業績を評価する際に重要な指標なので、KPIの正しい用法はこちらだとするビジネス書籍が多いように感じます)
ちなみに「事業ドライバーとしてのKPI」は市場の状況や組織の特性に応じて柔軟に設定・変更されるべきものです。
例えば人材業界でいうと好景気でどの企業も人を募集していれば「転職希望登録者数」がKPIになるでしょうし、不景気で求人自体がなければ「求人獲得数」がKPIになるでしょう。リーマンショック以前と以降でこのKPI変動に対応できず売上を落とした会社も多かったと聞きます。
ダイエットでも、ずっと摂取カロリーをKPIにして食事制限をしていた人も、手料理をふるまってくれる恋人ができたら消費カロリーをKPIにして運動する方向に切り替えねばならないかもしれません。もしKPIを切り替なければ、食事制限を貫いて恋人の機嫌を損ね破局、悲しみからやけ食いで太ってしまう結末だってあり得ます。
事業ドライバーとしてのKPIは場合によって入れ替わるからこそ、それに早く気づけるか、適切に設定できるかが極めて重要になります。
その極めて重要な判断に向き合えるのが、KPI設計の面白さだと思います。
冒頭のすれ違いの例に戻ると、Aさんは重要なKPIを見極めて欲しかったのに、BさんはKPIを洗い出すものだと認識して作業をし、結果すれ違ってAさんが作業を回収した、もしくは諦めてしまったかもしれません。もしかしたらここで、事業の機会を大きく損なってしまった可能性があります。
AさんとBさんの組織には、本来不必要な歪みが起きてしまっていると言えます。
「KPI」を使う際に重要なこと
適切なKPIを設定することももちろん重要ですが、何よりまず大事なのはKPIという言葉の解釈を組織で揃えることです。先の例のように、KPIの乱用で会話が噛み合わないことによる不要な逸失を防ぐことに大きな価値があると感じます。
とはいえ、すでにカルチャーとして浸透している言葉の使い方を「KPIの本当の意味はこっちだ!」と主張するのは心象もよくないですし、認識統一が遠のくだけです。
もしあなたの組織で思い当たることがあったら、この記事を読んで頭を揃えて、以下の図の中から1つ選んで組織のルールにするのもアリかもしれません。
【おまけ】KPI設計と組織設計
とはいえ「多くの指標からたったひとつの(事業ドライバーとしての)KPIを決めよう!」と言われても、重要なものが多くて選べないことばかりだと思います。ビジネスが成長すれば、追うべき指標が必然的に増えてきます。
ただ、全社という大きな単位で多くの指標を追うとなると、二兎も三兎も四兎も追いながら働くことになるので、実行力が分散して良い結果につながりにくいです。
私はこれを解決するために部署があると思っています。多くの指標を追いたいから、部署という小さい箱を作り、たったひとつのKPIを集中して追えるようにする。KPI設計と組織設計は密接に関わっています。
・・・ちなみに「全然一瞬で理解できなかった」「もう少し深く勉強したい」という方には以下の本がおすすめです(特に事業ドライバーとしてのKPIが掘り下げられています)。
贅沢なカオスの中でKPIを考える楽しさ
いかがでしたか?ここまで3000字近くありましたが「一瞬」でKPIの理解が少しでも深まっていれば幸いです。
最後に少しだけ宣伝させてください。
私が所属するログラスという創業3年のスタートアップでは、事業が徐々に0→1から1→10にフェーズが移り変わってきています。
市場の戦い方についての仮説が日々更新されますし、組織が持つスキルも急速に成長していきます。
この記事で述べてきた通り、KPIは市場環境や組織の特性に大きく左右されるため、KPIツリーをどのような切り口で分解するのか、何を最重要として選択するのか、どのような組織にするのか、日々検討しています。
とてつもない成長スピードの中で、日々(事業ドライバーとしての)KPIや組織がアップデートされていきます。贅沢なカオスがそこにはあり、その中で奮闘する日々は刺激的で魅力的です。
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