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コスタリカ種蒔日記

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全盲女子大生による全10ヶ月のコスタリカ留学記録。2018年11月〰2019年8月の、ドタバタな日々を綴ります🇨🇷
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#留学

自分の国を知ってもらえているのは特権かもしれない(コスタリカ種蒔日記)

 「こんにちは!ようこそ!」
 受付に並んだとたん、日本語で挨拶された。在コスタリカ日本大使館の職員と、そ
の家族の人たちだ。日本語の響を「なつかしい」と感じるほどコスタリカに来て日が
経った訳ではないのに、聞えてきたのが思っていたより早かったから、心にトンッ!
と衝撃が来た。

 ここは、「日本文化フェスティバル」の会場だ。私がサンホセに来て2週間。場所
は新しく住み始めたシェアハウスのすぐ近く

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新生活前夜のドタバタ騒ぎ(コスタリカ種蒔日記)

年が明けた1月中旬から、私の留学のセカンドステージが始まった。国連開発計画
(UNDP)コスタリカオフィスでのインターンだ。

インターンが始まったのは、1月16日。

しかし、それまでの数週間がもうてんやわんやだった。なにしろ、その日付が私の手
元にある唯一の情報だったのだ。

働く期間はどれぐらいなのか?
どんな仕事をするのか?
住む場所は用意してもらえるのか?

そういう大事な事が、直前まで

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年越しはなつかしい人と(コスタリカ種蒔日記)

2020年の幕開けは、なつかしい人と一緒に迎えた。グロリアナ、通称ロリ。私の初め
てのコスタリカ人の友達だ。

ロリは、私が2017年に国立公園で環境保護ボランティアをしたときに、私専用のス
タッフとして雇われ、3週間ほぼ毎日一緒に森を歩き回った。大学で自然資源管理を
勉強する大の生き物好き。わたしと同い年なのに、丁寧な物腰ときっちりした性格の
せいか、ずっと大人びた印象だ。

彼女の家があるのは

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年末、グアナカステへの旅(コスタリカ種蒔日記)

 昼日中に、バスで7時間。
 この果てしない道のりを耐え抜くと、グアナカステに着く。
 コスタリカ北西部、ニカラグアとの国境地域。
 実は、わたしが初めてコスタリカを訪れたときボランティアした国立公園がここにある。
 見知らぬ土地だらけのこの国の中で、その頃唯一少しだけ馴染のある場所だった。
 2018年の年末から翌年の年始にかけて、わたしはペレス・セレドンを離れ、1週間ほどそこで過ごした。
 き

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何かを伝えるということ(コスタリカ種蒔日記)

 人とのコミュニケーションで、いちばん大切なもの。
 それは、相手への「信頼」なんだろうな。
 コスタリカに来て、そう感じる場面がたくさんあった。 

 言葉も文化も違うと、ついつい人と話すのが億劫になってしまうときがある。
 黙ってるのは気まずい。友達にはなりたい。でもうまく通じ合えなかったらそれはそれで気まずいから、どうしていいかわからない…。
 でも、もしその人とこれからも関係を続けていき

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点字の看板と触れる模型にびっくり!マヌエル・アントニオ国立公園にて(コスタリカ種蒔日記)

 「バモス パラ プラーヤ、パ クラールテ エル アルマ…」
 7人でぎゅうぎゅう詰めになって乗っている車の中に、軽快なビートが流れている。 
「ビーチに行こう、嫌なことを忘れて」と歌うこの歌は、コスタリカの定番レジャーソングだ。
 休日の朝早く起きてみんなで遊びに出かけるときなど、誰の車に乗ってもお決まりのようにこの歌がかかっていた。

https://youtu.be/1_zgKRBrT0Y

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暑い暑いクリスマス(コスタリカ種蒔日記)

 手を伸ばしてもてっぺんに届かないほど大きなクリスマスツリー。
 家々のドアに下がる大きなリース。
 聖書のキリスト降誕の物語を象った伝統的な人形飾り…。
 12月に入るとすぐに、コスタリカの街はどこもクリスマスの飾りでいっぱいになる。   
 日本のお正月のようなもので、1年で一番大きな、大切なお祭りだ。
 当日に向け、だんだんと人々の気持が華やいでいくのがわかる。
 だが、そんな人々が楽しげに

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ストローはスイッチだ(コスタリカ 種蒔日記)

 真っ青な南国の海で、1人のダイバーが野生のウミガメと出会う。
 悠々と泳ぐウミガメは、しかしどことなく様子がおかしい。
 よく見ると、何か細長い物がその鼻から飛び出していた。ウミガメの肌とは明らかに質感の違う異物。不思議に思ったダイバーは、近寄ってそっとそれを取り出してみる。苦しそうに悶えるウミガメ。
 真っ赤な鮮血と共に鼻から出てきたのは、茶色く変色したプラスチックストローだった。

 これは

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人生初の果樹園暮らし(コスタリカ種蒔日記)

 「オッラー!」
 門の前に立った途端、おおらかを絵に描いたようなおばあちゃんが出てきて、わたしをぎゅっとハグしてくれた。わたしがコスタリカでママと呼ぶことになるたった1人の人、エディスだ。モルフォのオフィスの来客用の個室で寝泊りすること数日、ついにホームステイ先への引っ越しが完了した。
 エディスと旦那さんのアルベルト、次女のスサナ、そして犬のルーカスと猫のコカ。この3人プラス2匹が、わたしの新

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野生のナマケモノにベタベタ触る(コスタリカ種蒔日記)

 目の前に、いる。
 わたしは息を呑んだ。
 前方わずか数十センチ、手を伸ばせば難なく届く位置にぶら下がっているのは、コスタリカ の森の代表選手。
 ナマケモノだ!

 午前中ザーザーと降り続いた雨がようやく上がり、わたしたちはモルフォのオフィスの前のテーブルにパソコンを持ち出して、思い思いに作業を始めていた。
 そこへ、一つのビッグニュースが舞い込んだ。
 [ナマケモノがいるぞ!そこのフェンスに

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障がい者自立支援センターモルフォってどんなところ??(コスタリカ種蒔日記)

 モルフォは、日本の協力で作られたラテンアメリカ地域初の障がい者自立支援センターだ。障がいを持つ人たちが一生家族に守られて暮らすのではなく、自由に好きな所に住んで、仕事に行ったり学校に通ったり、買い物やカラオケに行ったり…、障がいのない人たちが当たり前にしていることができるようにサポートする施設である。研修を受けた介助者たちがシフトを組んで、障がいを持つ人の手足となって働く。体がうまく動かないなら

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ペレス・セレドンの町よ、こんにちは(コスタリカ種蒔日記)

ペレス・セレドンの町よ、こんにちは(コスタリカ種蒔日記)

「あゆみさんですか?カルロスです」
 空港を出て早々、不意を突かれた。迎えに来てくれていた現地スタッフの1人、カルロスがなんと流暢な日本語で挨拶してくれたのだ。一瞬、ネイティブと聞き間違う程の完璧なアクセント。わたしがこれから行くところには日本人のスタッフが1人いるものの、もうしばらく本格的に日本語を使うことはないだろうと覚悟していたのに、いきなりの想定外である。いや、もちろんすごくうれしい。
 

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わたしがコスタリカに帰ってきた訳(コスタリカ種蒔日記)

わたしがコスタリカに帰ってきた訳(コスタリカ種蒔日記)

 懐かしい匂いが鼻をくすぐる。
 ドキン、胸が高なった。
 パクチーとコーヒーを混ぜ合わせたような、ほろ苦い独特の香り。
今、1年半の時をおいて再びこの地に立つまで思い出すこともなかったけれど…間違いない。湿り気を帯びた生温かい風に乗って流れてくるこれは、コスタリカの匂いだ!

 匂いは記憶を鮮明に呼び覚ます。スタッフに案内されて空港の出口へと向かいながら、わたしの心は初めてこの国を訪れた20歳の

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