おおした あゆみ

関西で働く社会人1年生。2歳から全盲。自然散策、一人旅、読書、お笑いを愛する💖ここでは自分のコスタリカ留学の経験の連載を中心にやっていきます!

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    ganasのパートナー/サポーターさまのnoteをまとめました。途上国・国際協力のお話を中心に。

  • 一口エッセイ

  • コスタリカ種蒔日記

    全盲女子大生による全10ヶ月のコスタリカ留学記録。2018年11月〰2019年8月の、ドタバタな日々を綴ります🇨🇷

最近の記事

白杖で歩く私が道で出会う愛すべき人々③ 駅員さんのぶっちゃけ話、でもなんでそれを私に?

 私は一人で電車に乗るとき、よく駅員さんに案内を頼む。改札口で声をかけ、目的 の電車のドアまで誘導してもらうのだ。その道中や、ホームで一緒に電車を待ってい る時間は、駅員さんとのちょっとした会話を楽しむチャンスになりうる。  たとえばこの前も、駅員さんが自分の生い立ちをしゃべってくれた。五十がらみの 威勢のいいおっちゃんだった。  「私ねぇ、今はこうして駅員をやってますけど、20年ぐらい電車の運転手をして たこともあるんですよ」  へぇ。駅員と運転手って、同じ人が両方やるもの

    • 天塩にかけて、雑草を育ててみた

       私が大切にしている物、それは鉢植えの植物だ。ヒメツルソバといって、春から秋にかけて小さな球のようなピンクの花をたくさんつける。  このヒメツルソバ、とてもかわいらしいとはいえ、間違ってもお店に並ぶ類の花ではない。咲いているのは家の庭や、石垣の隙間や、下水道の網の下。つまり紛れもなく雑草だ。それをなぜ私が後生大事に鉢に植え、今も毎朝水をやっているのか。  話は2020年の5月にさかのぼる。コロナ禍が始まったばかりで、社会活動のすべてがストップしていた。車でおそるおそるマクドナ

      • 合気道を教える(コスタリカ種蒔日記)

         「わー、あるある!やっぱりね」  画面に並んだ検索結果を見て、私は一人頬をゆるませた。ヒットしたのは武道教室 。さして広くないサンホセの街の中に、少なくとも3つはある。習えるのは唐手、剣 道、そして合気道。私のお目当てだ。  私は大学で合気道部に入っていた。それまで武道の経験はゼロだったが、仲間や先 生たちに恵まれて、週3回の練習にいそいそと通った。4年生の夏には初段をいただく こともできた。私の大学時代の思い出の半分以上が、楽しいものもそうでないものも 、この合気道部と切

        • 幸運の町でカカオ豆と戯れる(コスタリカ種蒔日記)

           「今週末、私の両親が持ってる田舎の別荘に行かない?」   ハウスメイトのリーダー、ジネットの誘いに、私は一も二もなく飛びついた。コス タリカには、別荘を持っている人が結構いる。別荘と言っても、最低限寝泊りができ る程度の小さな家だ。たいてい、フィンカと呼ばれる農場とセットになっている。ふ だん都会に住んでいる人でも、週末はそこでのんびり田舎暮らしを楽しむのだ。  はたしてジネットとその恋人のカテリン、彼女らの犬3匹との楽しい旅行が実現し た。  ジネットの両親の別荘があるの

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        記事

          白杖で歩く私が道で出会う愛すべき人々⑵ [走りますか?]電車の発車直前、背後に現れた救世主

           「まもなく、1番線に、大国町方面住之江公園行きが参ります」  そのアナウンスが流れたとき、私はまだ階段の上にいた。  乗りたい!  たとえ5分待てば次の電車が来るとわかっていても、 この後何も用事がなくても 、こんなとき急がずにはいられないのが人情というものだ。前に人がいないことを確 認しつつ、階段を駆け下りる。周りの人々も一斉にスピードを上げたのが、ドドドッ という足音でわかった。ちょうど電車が入ってきた「ゴーッ」という音とあいまって 、昔アフリカをテーマにしたどこかの企

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          白杖で歩く私が道で出会う愛すべき人々1 哀愁の駅おじさん

           職場からの帰り道、大阪市内のとある駅にて。  白い杖を手に、乗り換えのホームへと慣れたルートを歩く私のかたわらに、ふと人 が並んだ。まるで前もって約束していたかのような自然さだが、そんな覚えはない。 いったい誰??  「はい、こんにちは」  出た!ここ2、3週間ちょくちょく顔を合わせる、駅のおじさんだ。駅員なのか警備 員なのか、はたまた別の役職なのかはわからない。でも、私が彼に気づくずっと前か ら、彼が私のことを見つけて待ち受けていたのはたしかだ。  いつもは「今日は込ん

          白杖で歩く私が道で出会う愛すべき人々1 哀愁の駅おじさん

          自分の国を知ってもらえているのは特権かもしれない(コスタリカ種蒔日記)

           「こんにちは!ようこそ!」  受付に並んだとたん、日本語で挨拶された。在コスタリカ日本大使館の職員と、そ の家族の人たちだ。日本語の響を「なつかしい」と感じるほどコスタリカに来て日が 経った訳ではないのに、聞えてきたのが思っていたより早かったから、心にトンッ! と衝撃が来た。  ここは、「日本文化フェスティバル」の会場だ。私がサンホセに来て2週間。場所 は新しく住み始めたシェアハウスのすぐ近く。まるで私のために開かれたみたいだ が、もちろんそうではない。  サンホセ市は

          自分の国を知ってもらえているのは特権かもしれない(コスタリカ種蒔日記)

          住所の魔法(コスタリカ種蒔日記)

          「サンホセ パバス地区 ロルモセール オスカル・アリアスの家から北に400m、西に50m 左手にあるグレーのアパートの2番目」 これは、私がサンホセで新しく住むことになった家の住所。ペレス・セレドンで大騒 ぎして探してもらった、ウェンディの友達の息子がいる例のシェアハウスだ。 え、これが住所なの?と首を傾げた人もいるかもしれない。私も初めてこの住所が書 かれた書類を見たときは、「これほんとに正式な書類?」と不安になったものだ。前 半はどうやら地名の羅列だからいいとして、な

          住所の魔法(コスタリカ種蒔日記)

          インターン初日の衝撃(コスタリカ種蒔日記)

          「わあ、本物のオフィスだ」 インターン先である国連開発計画(UNDP)のオフィスに初めて足を踏み入れたとき、そ う思った。変に聞えるかもしれない。でも本当だ。 まず、入り口が金属の重い扉。中はどこもキンキンにエアコンが効いている。壁を向 いて置かれた細長いデスクには、図書館の自習スペースのような一人一人の仕切り。 床のつるつる具合といったら、氷の張った湖かと思うぐらいだ。 さらにびっくりしたのはトイレだ。まずもってとてもきれい。掃除したてのような洗 剤の香がした。しかも自

          インターン初日の衝撃(コスタリカ種蒔日記)

          新生活前夜のドタバタ騒ぎ(コスタリカ種蒔日記)

          年が明けた1月中旬から、私の留学のセカンドステージが始まった。国連開発計画 (UNDP)コスタリカオフィスでのインターンだ。 インターンが始まったのは、1月16日。 しかし、それまでの数週間がもうてんやわんやだった。なにしろ、その日付が私の手 元にある唯一の情報だったのだ。 働く期間はどれぐらいなのか? どんな仕事をするのか? 住む場所は用意してもらえるのか? そういう大事な事が、直前まで何一つわからなかった。 そもそも、インターン受け入れ決定のメールが正式に届いた

          新生活前夜のドタバタ騒ぎ(コスタリカ種蒔日記)

          年越しはなつかしい人と(コスタリカ種蒔日記)

          2020年の幕開けは、なつかしい人と一緒に迎えた。グロリアナ、通称ロリ。私の初め てのコスタリカ人の友達だ。 ロリは、私が2017年に国立公園で環境保護ボランティアをしたときに、私専用のス タッフとして雇われ、3週間ほぼ毎日一緒に森を歩き回った。大学で自然資源管理を 勉強する大の生き物好き。わたしと同い年なのに、丁寧な物腰ときっちりした性格の せいか、ずっと大人びた印象だ。 彼女の家があるのは、グアナカステ地方の小さな町ニコヤ。ウェンディの実家からは 車で1時間とかからな

          年越しはなつかしい人と(コスタリカ種蒔日記)

          年末、グアナカステへの旅(コスタリカ種蒔日記)

           昼日中に、バスで7時間。  この果てしない道のりを耐え抜くと、グアナカステに着く。  コスタリカ北西部、ニカラグアとの国境地域。  実は、わたしが初めてコスタリカを訪れたときボランティアした国立公園がここにある。  見知らぬ土地だらけのこの国の中で、その頃唯一少しだけ馴染のある場所だった。  2018年の年末から翌年の年始にかけて、わたしはペレス・セレドンを離れ、1週間ほどそこで過ごした。  きっかけは、ホストマザーのエディスに「お正月はこの家にいてもつまらないと思うよ」と

          年末、グアナカステへの旅(コスタリカ種蒔日記)

          何かを伝えるということ(コスタリカ種蒔日記)

           人とのコミュニケーションで、いちばん大切なもの。  それは、相手への「信頼」なんだろうな。  コスタリカに来て、そう感じる場面がたくさんあった。   言葉も文化も違うと、ついつい人と話すのが億劫になってしまうときがある。  黙ってるのは気まずい。友達にはなりたい。でもうまく通じ合えなかったらそれはそれで気まずいから、どうしていいかわからない…。  でも、もしその人とこれからも関係を続けていきたいなら、伝えることを諦めちゃいけないんだ。  少々面倒くさくても、自信がなくて

          何かを伝えるということ(コスタリカ種蒔日記)

          時々、声を手で触れます

           ぶどうを皮ごと食べたときの、しゃきしゃきした歯ごたえを思い浮かべられるだろうか?  お味噌汁に入った煮干しの、ざらざらした舌触りを思い出してみてほしい。  わたしにとってはそれがひなちゃんとさえちゃん、小学校のときクラスにいた女の子たちの、「声」だった。    はあ、何言ってるんだこいつ?と思ったそこのあなた。  ご心配なく。わたしの周りの人々もその反応だった。  家族、友達、先生。面白がってはくれても、一人として「わかるー」とは言ってくれない。  まさか本人に向かって

          時々、声を手で触れます

          スカートについて、いつもよりほんの少し余計に考えてみた

           先日、スカートを買った。  白いフェイクレザーのタイトなスカート。  長さはすねの辺りまで。  お会計しながら、ふと考えた。  スカートって、変なの。  皆さんもそう思いませんか?  まず、めちゃくちゃ作りが単純。  四角い布を半分に折って縫い合わせ、上の方をちょっと折り返してゴムを通せば、とりあえずそれらしきものが完成する。    なんたって、よく見たらただの筒だもの。  小さい頃、着せ替え人形の服のパターンを増やしたくて自分で作ろうとしたときも、上着やズボンは見

          スカートについて、いつもよりほんの少し余計に考えてみた

          点字の看板と触れる模型にびっくり!マヌエル・アントニオ国立公園にて(コスタリカ種蒔日記)

           「バモス パラ プラーヤ、パ クラールテ エル アルマ…」  7人でぎゅうぎゅう詰めになって乗っている車の中に、軽快なビートが流れている。  「ビーチに行こう、嫌なことを忘れて」と歌うこの歌は、コスタリカの定番レジャーソングだ。  休日の朝早く起きてみんなで遊びに出かけるときなど、誰の車に乗ってもお決まりのようにこの歌がかかっていた。 https://youtu.be/1_zgKRBrT0Y  本日の目的地は、マヌエル・アントニオ国立公園。  コスタリカのガイドブックに

          点字の看板と触れる模型にびっくり!マヌエル・アントニオ国立公園にて(コスタリカ種蒔日記)