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小説

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2020年12月の記事一覧

ヤモリ 46

直子は仕事に打ち込んだ。それが実を結ぶのに時間はかからず、彼女の地位と貯金額はひとりでに…

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ヤモリ 45

そして直子はと言うと、言うまでもなく成人式には参加せず、大学進学と同時に一人暮らしを始め…

ヤモリ 44

その有馬は二十歳を迎える前に死んだ。その報せは彼を知る人々に大きな衝撃と混乱を与えた。何…

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ヤモリ 43

そして直子と有馬の関係についてだが、これも文字通りこれっきりだった。相手のことなど自分に…

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ヤモリ 42

事件の顛末はこれで語り終えた。どうと言うこともない。これがこの夏、直子に起こった取るに足…

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ヤモリ 41

直子の顔から痛みの色は引いていた。そもそも何の色もなかった。生命そのものを放擲しているみ…

ヤモリ 40

賑やかだったどの教室も、その一言で水を打ったように静まり返った。何が起こったかはともかく、只事でない権幕だということだけはそれを耳にしたどの生徒にも伝わった。起こっていることの邪魔をしないように、普段は騒がしい女子たちやふざけている男子たちも足音を忍ばせて再び廊下側の窓に近付いた。そうして恐る恐る顔を出した生徒たちが目にしたのは、物凄い勢いで這っていき、有馬からシャーペンをひったくる直子の姿だった。 直子は、呆然として何も言えない有馬に向かって、周囲には聞こえない低い声で言

ヤモリ 39

だが有馬はそんな直子の表情を見ていなかった。というより、何も見ていなかった。何も考えてい…

ヤモリ 38

持っていたカバンの中身が散乱する中で、直子はしばらく動かなかった。教室の窓には、異変を嗅…

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ヤモリ 37

それから三週間が過ぎた。直子は十五歳の誕生日を迎えた。薄々分かっていた通り、身体には何の…

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