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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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2021年8月の記事一覧

自殺を止めた父の一言

タイトルが重たくてごめんね 少し長くなるから時間がある時でいいからね ・・・時間があるのね? じゃあ私の物語を少しだけあなたに伝えます 小学校6年生のちょうど今頃 夏休みの終わりが見えた頃 私は「もう楽になりたい」と思っていた 理由は本当に浅はかで 「クラスのあいつに会いたくない」 「夏休みの宿題が終わっていない」 「なんとなく生きるのが辛い」 そんなことを思っていた 子供ってそんなもんだよ っていうのは嘘 本当はいじめられていたから 子供の何と

香港の海鮮料理店のおじちゃんの一言で、転職を決めた話

「すみません……お茶のおかわりください」 辺りをキョロキョロ見渡しながら、私は慣れない広東語でホールのおじちゃんに声をかけた。 日本との時差がたった1時間なんて信じられないくらいの別世界・香港にある小さなレストランで。 外国語を使うのは、とても勇気がいる。 賑やかな場所で、大きな声を出すのが嫌だからか。日本人であることを、なんとなく隠したいからか。もし間違っていたら、恥ずかしいからだろうか。 「はいよー! さっきと同じポーレイ茶だよね? 今持って行くよ!」 おじちゃん

バイト先のノンケを好きになった話(後編)

私はりょうすけ。23歳のゲイだ。今回は前回の「ゲイとして生きていく④〜ノンケを好きになった話(前編)」の続きである。まだ読んでいない方は以下のURLから飛んでいただきたい。 ゲイとして生きていく④〜バイト先のノンケを好きになった話(前編) 「会員証はございますでしょうか。時間はどうされますか。フリータイムですね。かしこまりました。ご希望の機種はございますか。」 接客ももはや考えることもなくセリフのようにぺらぺらと話せるくらいには慣れた。 店長は一通りの業務をこなせるよ

バイト先のノンケを好きになった話(前編)

店内にはあいみょんの「君はロックを聴かない」が流れている。大学2年生になり始めたカラオケのバイト。ピロリンという音とともにフライドポテトとメロンソーダの注文が入る。素早くタイマーをセットしてフライドポテトを揚げ物エリアにぶち込み、メロンソーダをドリンクバーからコップに入れ客に持っていく。厨房に戻ってポテトが揚がるのをじっと待つ。 じわじわじわ。じゅーじゅー。ぱりぱりぱり。油が踊り狂っているかのように音を立てる。2分30秒、29、28、27。私はボーッとしながらタイマーの秒数

休日、酔っぱらい夫婦は、フルーツケーキを作る。

ももの缶づめも、諦めた。 もっと言うと、ショートケーキを作るためのいちごも売ってないから、諦めた。 ケーキの具材は、ももの缶づめの予定だった。 しかし、缶づめ売り場に行くと、ももの缶づめは、他の缶づめの4倍ちかい値段がするじゃないか。 一緒に買い物に来たのは、旦那だった。 「ももが高いんだけど、どの具材がいい?」 と、旦那に相談すると、 パインかマンゴー と言ったので 「マンゴーの缶づめかぁ、はじめてみたなぁ!」 好奇心でマンゴーをチョイス。 家に帰り、チン

はたらいて、愛したい。

ある日、ぷつんと糸が切れてしまった。 ―こんなになってまで、わたし、何ではたらいているんだっけ? 洗面所の鏡に映るうつろな自分に問いかける。 私の目はうつろなままで、沈黙を貫いている。遠くから泣き声が聞こえる。 ■ 営業先に向かう大江戸線に飛び乗り、窓に反射する自分と目が合った。 コンシーラーで隠しきれないクマ、ファンデーションが浮いた肌。 老け込んだ自分の姿に愕然とする。 バッグの中でスマホが振動し、娘が通う保育園の番号を見て、心臓が跳ねた。電車を降りてすぐにかけ

おやじはドリンクバーが苦手|初のエッセイ本、発売しました。

noteをはじめて、たくさんのやさしいクリエイターさんとの 出会いが、わたしの毎日を変えてくれました。 みなさんの素敵な、記事や文章にこころ動かされたり、 コメントをくださった方(*^_^*) みなさんと、作ってきた 一冊と、言っても過言では、ありません! そんななか、本を作成するにあたり、お手伝いしてくださった ないとさん。 右も、左も、わからない わたしに、道を作ってくださいました^^ 感謝の気持ちでいっぱいです。 はじめての、エッセイ本。 「こんな

エッセイって記憶力と観察力なのだな

Twitterから離れて、紙の本を読んでいます。Twitterはとても楽しいし、宣伝もできるし、人と交流もできるし、情報収集としても適しているのだけれど、一回投稿すると反応がついつい気になるし、すぐに💗がどれだけついているか確認したくなるし、リプをもらったら返す手間も要るわけで、まだ駆け出しの作家の身としては、ちょっとそこに割く時間がもったいなく思えてきました。 (もちろん、Twitterを楽しんで使っている方々を否定するものではありませんよ!私の日々の時間配分を考えたら、

甲子園口駅

 若い女の傲慢さで、感情の赴くまま振る舞っても許されると勘違いしていた頃。この駅近くに住む彼の所に、1年ちょっとの間、だいたい月いちペースで通っていた。東京から。  甲子園口駅の改札は北口と南口の二つ。当時はどちらの出口も小さな駅舎のさびれた雰囲気だった。快速通過駅だし、まだ阪神・淡路大震災から4年も経ってない頃だったというのもあるかもしれない。このあたりも震災の被害は大きく、北口の7階建てのマンションは倒壊し、たくさんの人が亡くなり、駅の北側の住宅街にあった彼の家も半壊で

空っぽのお弁当箱

結婚するまで、ついぞ料理なんてしたことがなかった。 長い実家暮らしで、自炊とはほど遠い生活だった。台所に立ったことがないわけではないけど、まともな料理はしたことはなかった。中学校の調理実習でパスタを冷水にぶちこみ、それまで5だった家庭科の通信簿が4になったのは一生忘れない(冷水パスタ事件と成績の因果関係は不明)。 結婚して妻と一緒に暮らし始める前、ある日こう言われた。 どうやら節約が目的らしい。2秒考えて、「いいよ」と答えた。ちょうどコンビニおにぎりにも飽きはじめていて

空の青さがすきだった。

夏、夜7時半の空の色がすきだった。 見上げた空の左手側、 夕焼けもさって、星が見えるか見えないかくらいの静かな青。 右手側にむかうにつれて紺が深くなっていく、夜がやってくる色。 そんな、夜の手前の空がすきでした。 高校生のころ、家に帰るまでの道で見上げた空です。 わたしの高校は、日が落ちる時間にあわせて下校時間が変わります。 夏時間と冬時間。なんともざっくりとした分けかたです。 吹奏楽部にいたときは、下校時間に間にあうぎりぎりまで合奏の時間でした。 楽器をかたづ

海の青さを知らなかった。

海を見たことがなかった。 母なる湖のそばで育った私にとって、海といえばあの湖だった。 海の青さを知らなかった。 湖の青と海の青は同じだと、そう信じ込んで生きてきた。 井の中の蛙大海を知らず。本物の海は、想像していたものとは比べようがないほど広大だった。 初めて出会った海は、沖縄の海。 驚いた。その不気味なほどの鮮やかさに。 その色は見慣れた湖のそれとはまるっきり別ものだった。もはや空の色から世界が違ったような気すらする。 生まれ育ってきた湖を「淡い海」と書く理由がよ

肉食女子が【まゆみ】で告白されたら を考察する ー8月31日生まれの男にー

始めに肉食女子が男性から告白される際、KANの歌【まゆみ】 を歌われたらどうなるか、を考察する。 著作権に配慮し記事の中では歌詞の一部しか引用しない。全歌詞をごらんになりたい方は、こちら。 曲はこちら。 考察に至る経緯今から四半世紀前、当時の男友達がこう言った。 「好きな人ができたら、【まゆみ】を歌って告白する。【まゆみ】は強い歌だから」 私は、えっ? あの曲のどこが強いの??と思った。その疑問を最近思い出したので、この際考察してすっきり成仏させることにした。 【まゆみ

あんた達には 好かれたくないから。

春から夏へ 山へのトレッキングに親しむ中で つい忘れがちになってしまうのが虫刺され対策。しっかりとした装備を整え出かける登山ではなく、ランニングスタイルのような服装で2時間もあれば往復できてしまうような低い山。つい油断して、必要な対策を忘れてしまう夏の始まりの頃である。 そ知らぬふうで忍び寄り 刺すどころか触れる感覚も感じさせない見事なテクニックで「なんか かゆい…」と感じた頃には 膨らむ肌の刺し後は すでに3つ、4つ。時折 パンパンに膨らんだ重たそうなお尻で満足そうにフラ