りりあ

食べる、書く、聴く、が好きな企画広報ぽんこつOL。 ビールの売り子をしていたほどの野球好き。 勇気が出るような言葉を紡ぎたいです。 noteコンテスト▷審査員特別賞、入賞、企業賞etc...

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  • 「幕開け」(まとめ)

    短編小説「幕開け」のまとめです。

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学年1位の女の子が「勉強なんてやめてしまえ!」と言われて

気づいたら、30歳になっていた。 子どもの頃想像していた「30歳」はもっとはるかに大人で、しっかりしていて、強いイメージだったけれど、今も私はあの頃と同じように日々悩み、もがき、時に悲しみ、笑いながら生きている。 この年齢になると、結婚・出産をする友人が増える。 FacebookやInatagramの幸せな「ご報告」は、私がまさに想像していた大人の姿の1つで、自分の人生を次のステージに進めていることが、純粋にかっこいいと思う。子育てに奮闘する彼女らと話をすると、仕事に明け

    • 私だけのサンタクロース

       毎年クリスマスツリーの下にプレゼントを運んでくれているのがサンタクロースではない、と気づいたのはいつだっただろう。  サンタが来るのは、決まって12月24日の夜だった。11月の終わり頃からクリスマスツリーの準備を始めて、小さな赤いブーツに手紙を入れ、上の方に目立つように飾っておく。そうすると、手紙に書いた「欲しいもの」が、必ず24日の夜に届く。まるで魔法みたいだった。  世界中の子供たちが好きなものをリクエストしているだろうに、埼玉のこんなところまで来てくれるなんて、サ

      • ミルクコーヒーとクロワッサン

         パン屋の朝は早い。  朝5時に起床。  30分で準備をし、軽くメイクをして家を出る。 「おはようございます!」 「おはよう〜」 「今日もよろしくね」 「お願いしまーす」  先に仕込みを始めているベイク担当のスタッフと店長に挨拶し、ロッカーの鍵を受け取る。白いブラウスにブラウンの制服とネクタイ、髪の毛を縛った上に帽子をすぽっと被り、名札をつける。爪の先まで丁寧に手を洗ったら、準備完了。  連絡事項が書かれたボードを見ると、かぼちゃやさつまいも、栗など、秋の食材をふんだ

        • 「note創作大賞」上から見るか、下から見るか、終電から見るか。

          金曜日、23時35分。 やばい、今日もこんな時間になってしまった。 印刷した校正用紙も企画書も、しっかり分けてファイリングしないといけないのに、もう間に合わない。全部まとめて同じファイルにバサバサと突っ込む。明日整理しよう。と思ってこの半年ほど整理できた試しがない。 画面上に開きっぱなしのWordやExcelをとりあえず全部上書き保存して、急いでシャットダウンする。 気づいたらフロアには誰もいなかった。 見回りにきた警備員さんに「今日も最後?」と聞かれ、そうみたいです、と

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        • 「幕開け」(まとめ)
          5本

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          幕開け[第5話]

          〈第1話〜4話〉 ・・・ 「東京の今日の最高気温は三十四度です」  今朝のニュースを、ふと思い出す。まだ七月に入ったばかりなのに、夏を絵に描いたような快晴だ。久しぶりの現場で、私は全身から汗が噴き出るほど慌ただしく走り回っていた。 「こちら高橋です。深山さん、取れますか?」  いつも冷静な高橋主任の声が、今日はどことなく高揚している。外れかけたイヤモニを、 慌ててセットし直した。 「深山です。どうぞ」 「昨日の会議で出た特攻の火薬について、担当者に最終確認できそう?」

          幕開け[第5話]

          幕開け[第4話]

          〈第1話〜3話〉 ・・・ 「やっぱりすごいと思うよ、駿介は」 「……こんな話してるのに、か?」 「うん。だって、普通はそんな辛いとき、ぐうたら過ごす人がほとんどだよ」 「ははっ。なんだよ、それ。そんなこと、ないだろ」  心底わからないという表情のまま、駿介は首をかしげていた。 「ううん、そういうものだよ、普通はね。でも、駿介は違う。自分を見つめ直すために、きっと色々したんでしょう。いつもは出ない同窓会に参加してみたりさ。……きっと今はもう、心は決まってるんじゃない?」  

          幕開け[第4話]

          【物語のあるスイーツ】~春夏秋冬のおやつレシピ&エッセイ~

           みずみずしい苺がぷつりと乗ったショートケーキ。サクサク食感がたまらないクッキー。どこか懐かしいプリンア・ラ・モード。週末に作り置きしたパウンドケーキ。  あまーいスイーツが食べたくなるのは、どんな時ですか?  私が一番甘いものを欲するのは、身体や心がクタクタに疲れている時、かもしれません。糖分を補給したいというのもあるけれど、スイーツは、ただそこにあるだけで人を幸せにする力があると思っています。見た目が華やかで、キラキラしていて、繊細で、宝物みたいなもの。最近は手軽に買え

          【物語のあるスイーツ】~春夏秋冬のおやつレシピ&エッセイ~

          幕開け[第3話]

          〈第1話・2話〉 ・・・  チリン、チリン。  夏でもないのに、なんでいつもこのお店には風鈴があるんだろう、と高三の私が呟くと、駿介は迷わず、風鈴は癒しの音だからだろ、と答えた。  あの時と同じ音が鳴ったことに、少し驚いた。 「いらっしゃいま……」  花柄エプロンの店主が、奥からひょっこり顔を出した。目をまん丸に広げたまま、口元をマスクの上から抑えている。 「お久しぶりです、みつこおばちゃん」 「わあ! びーっくり! どうしましょ」 「ごめんね、驚かせて」 「嬉しいわあ。

          幕開け[第3話]

          あの時言えなかったありがとうを、「ハッピーターン」に。

          「ありがとう」という言葉は、簡単そうで意外と難しい、と大人になった今でも思う。 難しいという表現が正しいかはわからないけれど、伝えすぎると胡散臭く聞こえるし、言葉にしなければ全く伝わらない。 不思議なことに、仕事でお世話になった人や街で親切にしてくれた人など、一定の距離がある相手には素直に伝えられるのに、いつも一緒にいる家族や当たり前に側にいてくれる人には、心の中で一方的に伝えておしまい、にしてしまうことも多い。天邪鬼な言葉だなと思う。 けれど、最近思うのだ。 そういう相

          あの時言えなかったありがとうを、「ハッピーターン」に。

          幕開け[第2話]

          ・・・ 「ところで、今日はなんで参加したの? 暇だから、だけじゃないでしょ。あんたの性格からすると」 「うわー、そんなことまでわかんのか。さすがだね、キャリアウーマンさん」 「もう。そんなこと言うなら、この先ずーっとスーパースター様って呼ぶからね?」 「お願いだから、それだけはやめてくれ」  くだらない話を続けていたら、いつの間にか緊張はほぐれていた。それと同時に、どんなに頑張っても駿介に敵わないという事実を思い出してしまった。私の高校時代の成績は、 万年学年二位。勉強時間

          幕開け[第2話]

          私の「美しい鰭」を探す旅

          久しぶりに、人前で泣いた。 ぎゅっと閉めていた感情の蛇口を捻られたみたいだった。 最近、とても忙しい毎日を過ごしている。 有り難いことでもあるけれど、有り難くないことでもある。 めざましの音で目覚めてから夜の作業中に寝落ちるまで、ほんの一瞬。 そしてまた、目は覚めて朝が始まる。 たった24時間でも、いろいろなことが起こる。 定期券を家に忘れたり。 満員電車でぶつかってしまったリュックを睨みつけられたり。 友人から結婚の知らせが届いたり。 何十枚も書いた企画書が通らなか

          私の「美しい鰭」を探す旅

          素人「クッキー缶」大奮闘記 〜ドキュメンタリー編〜

          ずっと憧れていた手作りクッキー缶の蓋をカチッと閉じた瞬間、頭にふと浮かんだ。 クッキー缶=ローマであるかはさて置き。 これを完成させるまで、半年以上かかった。何気なく「作ろうかな〜」と思い始めた時から考えると、丸1年。 プロでもないド素人が趣味で作るお菓子だろうと笑われるかもしれないが、私にとっては一大事だ。 ついに、クッキー缶が完成した! 大きな失敗もなく! 途中で諦めることもなく! 11種類ものクッキーを! 焼いて! 焼いて!! 焼きまくって!!! 冷まして、詰めた

          素人「クッキー缶」大奮闘記 〜ドキュメンタリー編〜

          「浅草ルンタッタ」を、最前列で読む。

          生きていると、時々、自分の力だけではどうにもならないことにぶち当たる。 その度に、悔しくなったり、寂しくなったり、不安になったり。 時には人知れず涙を流す日だってある。 「ああ、今回ばかりはもうダメだ。もう頑張れない……」 そう思っていたはずなのに、思い返せば、その度にどうにかこうにか立ち上がってきた。 頑張れないときこそ、楽しかった、幸せだった、そんな"記憶"が蘇る。 負の感情をふわっと包み込んでくれる、思い出やリズムがある。 大好きなアーティストの公演で聴いた、あの

          「浅草ルンタッタ」を、最前列で読む。

          香港の地下通路から、宇宙へ

          あの日は、冷たい雨が降っていた。 薄暗い地下通路。 湿った壁にもたれて座る、一人の女性。 丁寧に束ねた白髪とは対照的に、ブラウスは所々破れている。 籠には、小さな硬貨が疎らに入っていた。 じっと見つめると、彼女は申し訳なさそうに微笑み、やがて下を向いた。 3歳の頃だ。 父の故郷・香港で家族と夕飯を食べ、ホテルまでの帰り道。 なぜ彼女が一人でここにいるのか、なぜ寂しそうに笑うのか。私は理解できないまま、ただその濡れた瞳だけが心に深く、深く焼きついた。 「香港人と日本人の

          香港の地下通路から、宇宙へ

          北条政子への一歩

          「りりってさ、勉強がこんなに得意なのに、どうして歴史が苦手なの?」   高校二年の時、友人のサラから言われた一言。   青春真っ最中、花様年華。初めてのことばかり、毎日がドキドキで埋め尽くされていた、あの頃。  一生忘れられないと思ったファーストキスの感触さえ忘れてしまったというのに、 三十になった今でも何故かこの言葉の響きは頭にこびりついて離れない。自分の中で、じくじくと広がる罪悪感のような、言い訳できない後ろめたさがあるからなのか。しかしそれは 一体、何に対する後ろめた

          北条政子への一歩

          「交換ノート」を続けるということ【#もの書き100問100答】

          noteを始めてから約2年が過ぎようとしています。 ここには、ブログや掲示板、日記、SNSとも違う、なんとも不思議な空気が流れています。 この感覚って何かに似てるな、なんだろう……とずっと思っていたのですが、もしかすると「交換ノート」かもしれない。と、先日ふと思いました。 中学生の頃、まだスマホ、いや携帯すら持っていなかったあの時代。友人とのやりとりは手紙や交換ノートが主流でした。 初恋の人に初めて手紙を渡した時のあのドキドキ感、今でも思い出します。便箋を選んで、ペンを選

          「交換ノート」を続けるということ【#もの書き100問100答】