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紅葉と渋滞と選択肢 1289日

香嵐渓へと至る道には長い車の渋滞

遅々として進まない

秋も深まった土曜日の15時である

足助の香嵐渓の紅葉と言ったら

ニュースや雑誌でも良く取り上げられている

有名な紅葉スポットだがこの時期の香嵐渓に

近づくのは難しい

なにせ遠方からどんどんと人がやってくる

観光バスに乗りこんだ人たちが次々とやってくる

もはや紅葉を見ると言うより

我慢大会に近いものがある

車の渋滞がゆっくり前に進んでいくのに合わせて

アクセルをちょっぴり踏んで車を進ませて

また停止その繰り返し繰り返し

優雅でおセンチ

哀愁だの郷愁だのに浸る心の余裕なんて

長い車の渋滞の一部分に加わってしまったら

徐々に削られて次第に心に過ぎる思い

(もう帰ろうかな)

10分経っても進んだ距離といえば5メートル程度

車1、2台分、、

県道39号線は国道153線と合流して

やがて足助の町へと入っていくが

紅葉のハイシーズンであり

祝日である23日の土曜日という組み合わせにより

僕の運転する車は足助の町に入るよりも

ずっと手前、県道39号線の中程

雲晴橋の手前あたりで止まっていた

目の前には相変わらずのうんざりする車の渋滞

橋を渡って対岸の道へと渡って足助に

攻め入ろうとする車が僕の車の横を

走ってきえていく

だが、対岸の先、木々が開けたあたりに

見えるのもまた車の渋滞

先程の車の姿が見えたかと

思えばその渋滞の最後尾に加わった

ふう、あっちはあっちで地獄だな

僕はハンドルを握りながら悩んでいた

このままこの渋滞に加わっていたら

やがては香嵐渓にはつけるだろうが

果たしてそれは何時になるだろうか

分からない

サイドミラーに映る後ろの光景にもうんざりする

つらつら連なる長い車の列

みんな紅葉を一目見ようと遠路はるばる、、

辛い、、辛すぎる

すでに日は傾いてきている

15時だ

山の日没は早い

紅葉を楽しんで帰ってきてる車が

気持ち良さそうにすいすいと反対車線わ、

走っていくのを横目に見るが

ここまで来る途中で反対車線もまた

少し先て渋滞していたのを見てきたばかりだから

すいすいと気持ち良く走っていったあの車も

やがてはその渋滞の最後尾に加わるのだろう

もはや行くのも引き返すのも

大変な事には変わりない

ため息をつく

紅葉を見ながら秋の深まりを感じて

あぁ日本に生まれて良かったなあと

ワビだのサビだのにしみじみと

浸りたかっただけだったのに

これではただ疲れてしまうだけではないか

さて今僕には三つの選択肢が用意されている

1、このままこの車の渋滞に加わっていき

やがてきっといつか来るかもしれない

その瞬間を待つか

2、橋を渡って対岸から足助に向かう

とりあえずはうんざりする目の前の

渋滞からは逃れられるが、対岸にも

同じ様な状況が待ち受けている

どうするか

3、離脱、反対車線に車をUターンさせて

帰っていけば、多少の渋滞はあれど

耐えられない程ではない

さてどうするか

身も蓋もない3つ目の選択肢

今までの苦労はなんだったのかと

思ってしまうような選択肢だが

時間とは有限である

価値と対価とこの先に待ち受けている

未来を想像したら僕の行動は必ずしも

愚かではないんだ

僕はハンドルを右に回した

車を橋に乗り入れて対岸へと渡っていく

そうしてさらにハンドルを右に切ると

坂上田振線を足助とは反対の道へと

車の走らせていったんだ

あのまままっすぐだろうとも

対岸に渡って足助に向かおうとも

どちらにせよ結局は先々でうんざりする様な

渋滞に巻き込まれるんだ

耐えられない

で、そのまま反対車線に車の向きを変えて

引き返したとしても足助から帰ってきた車が

反対車線のずっと先でも同じような渋滞を

作り上げていたのを見ていた僕が

対岸に渡って山道をぐりぐりと縫って引き返す

方法を選んだのは自分の性格的に考えて

自然な事だった

こっちの方が渋滞に対するストレスは無いし

なにしろ山道をぐりぐりと縫って走る楽しみを

味わう事が出来るのだ

あぁ香嵐渓の紅葉は見てみたかったが

渋滞には耐えらない僕にはこの時期は

近寄ってはいけない場所だったのだ

山道は対向車もいないし

ところどころに鮮やかに色づいた木々を見ては

秋を楽しめる風景が広がっているこの道は

最高だった

あのままあそこにいたら

日が暮れてもたどり着けて

いなかったであろう未来よりも

愚かでも笑っていられる

今が一番楽しい

僕のスッキリした心模様を

反映させた車が一台

鮮やかに色づき始めた

山道を楽しそうに走っていく

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