雪村 悠馬

北海道在住。日常の何気ない瞬間や北海道ならではの風景を、ユーモアを交えて短編にしています。ほっとできる、どこか懐かしい物語をお届けします。

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有料記事購入特典のお知らせ

このたび、有料記事を購入してくださった読者の方へ、特別な特典をご用意しました! 特典内容 有料記事をご購入いただいた方は、次回の物語で悠馬が旅をする「訪れてほしい場所」をリクエストできます。北海道の風景を描きながら物語を進めている中で、あなたの思い出の地や気になるスポットが登場するかもしれません! リクエスト方法 1. 有料記事をご購入後、コメントにて、悠馬に訪れてほしい地域をお知らせください。 2. そのリクエストをもとに、次回のエピソードでその地域を舞台にしたエピ

    • 短編小説 函館編【2】

      異国情緒と坂道 悠馬は朝市を後にして、坂道が多いことで有名な函館の街を歩き始めた。坂道を上りながら振り返ると、遠くに広がる海と港が目に入る。青空の下、静かに広がる景色は、どこか異国の地に足を踏み入れたような錯覚を与えた。石畳の路地と、古い建物が並ぶ街並みには、他の町にはない雰囲気が漂っている。 悠馬は観光客が多いエリアを抜け、小さな路地に入り込んでいった。そこには、明治時代から続くという古びた教会があり、ひっそりと佇んでいた。白い壁と赤い屋根が特徴的なその教会は、時の流れと

      • 短編小説 函館編

        悠馬は函館の駅に降り立ち、広がる港町の風景に静かな期待を感じていた。異国情緒あふれる街並み、坂道を登ると見える海。少しひんやりとした風が頬をかすめ、この場所が持つ独特の雰囲気に心を奪われた。 まず足を運んだのは、地元の活気が感じられる朝市だった。観光客や地元の人々が集まる市場には、新鮮な魚介や色とりどりの野菜が並んでおり、どこか温かみを感じさせる場所だった。悠馬が目に留めた鮮やかなイカを眺めていると、売り子の男性がにこやかに話しかけてきた。 「お兄さん、函館は初めてかい?

        • 函館に向かう理由

          悠馬は次の旅先に函館を選んだ。それは、何かのきっかけでふと「函館」の名を耳にしたとき、心の中に小さな波紋が広がるような感覚が湧いたからだ。 異国情緒が漂う港町。歴史ある街並みと、夜景がきらめく函館山。どこか懐かしさを感じさせるその町の情景が、心の奥でさざめくように彼を誘っていた。何を探しているのかは分からないが、自分にとってその場所が特別な意味を持つような気がしてならない。そう思うと、自然と足が函館へ向くような気がした。 登別で目にした青白い灯り。静寂の中で漂うその光景が

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        • 雪解けの頃に
          6本

        記事

          #登別編 が完結しました。悠馬が目にした青白い灯り、その光に込められた地元の人々の想い…書きながら心が洗われるような気持ちでした。 本編で語りきれなかった灯りの伝説を知りたい方は、#有料記事『精霊の灯りに秘められた想い』もぜひ。感想いただけると嬉しいです!

          #登別編 が完結しました。悠馬が目にした青白い灯り、その光に込められた地元の人々の想い…書きながら心が洗われるような気持ちでした。 本編で語りきれなかった灯りの伝説を知りたい方は、#有料記事『精霊の灯りに秘められた想い』もぜひ。感想いただけると嬉しいです!

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【特別編】

          精霊の灯りに秘められた想い 登別温泉の夜、青白い灯りが静かに漂う光景を目にした悠馬は、その神秘的な光に何か特別なものを感じていた。まるで何百年もの間、この地を見守り続けてきた古の存在が、今も静かに息づいているかのように。 翌日、悠馬は再び地元の資料館を訪れた。館内には、この地に長く伝わる伝説や、地元の人々が守り続けてきた信仰についての資料が整然と並んでいる。彼は「精霊の灯り」にまつわる歴史や謎に迫りたいという思いで、手元に置かれた古びた本を開いた。

          ¥100

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【特別編】

          ¥100

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【6】

          別れの朝(あとがき付き) 夜が明け、登別温泉に新しい朝が訪れた。昨夜の体験が心に深く刻まれ、悠馬は穏やかな気持ちで宿のロビーに佇んでいた。澄んだ朝の空気が、彼の心の奥まで浸透していくようだった。 宿の主人が運んできてくれた珈琲の香りが広がると、悠馬はふと、かつて訪れた別の町での記憶がよみがえった。雪解けの頃に過ごしたあの町の喫茶店で、静かに春を待ち望んでいた自分。その時も、こんな温かい珈琲が心を和らげてくれたのを思い出した。 「こうして旅を続けていると、出会う土地ごとに心

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【6】

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【5】

          精霊の伝説 青白い灯りを追いかけて谷の奥深くまで進んだ悠馬は、静かに立ち尽くし、目の前に現れた古びた石碑に目を留めた。その石碑にはかすかに「火の精霊」と刻まれており、年月を感じさせる風合いがある。石碑には苔が生い茂り、風雨にさらされてきたその姿が、どこか神秘的なオーラを放っている。 「これは…精霊に関するものなのか」 悠馬は、青白い灯りが石碑の周りを静かに包み込むように漂っているのを見つめ、しばらくその場に立ち尽くした。谷全体が青白い光で照らされ、どこか神聖な空気に満ちて

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【5】

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【4】

          再びの夜に 再び夜の帳が下りた地獄谷へと足を運んだ悠馬は、胸の奥で青白い灯りが再び現れることを期待していた。昼間の賑わいが嘘のように静まり返った地獄谷には、冷たい夜風と湯気の匂いが漂い、どこか異世界のような雰囲気が広がっている。 「本当に、またあの灯りが見えるのだろうか…」 静寂の中で独り言のように呟くと、自分の声が驚くほど小さく感じられた。悠馬は一歩一歩、谷の奥へと歩を進める。闇の中、月明かりが湯煙をぼんやりと照らし出し、その光景はまるで幻想的な舞台のようだった。まばら

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【4】

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【3】

          伝説を追って 翌朝、昨夜の体験が頭から離れないまま、悠馬は再び地獄谷へ足を運んだ。日差しが差し込み、昼間の地獄谷は昨夜の神秘的な姿とは異なり、観光客で賑わうただの観光地のように見える。その景色に少しの寂しさを感じながらも、悠馬は昨夜の青白い灯りの記憶を辿り、再びその不思議な光景を思い出していた。 「まるで夢だったかのようだけど…確かにあの灯りは見えたんだ」 そう心の中で呟きながら、彼は温泉街にある小さな資料館へと向かった。館内には地獄谷に関する歴史や伝説が展示されており、

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【3】

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【2】

          夜の地獄谷での遭遇 地獄谷は、日中とは異なり、夜の静寂と不気味さに満ちていた。硫黄の匂いが濃く漂い、立ち上る蒸気が幻想的に揺らめく。その光景に、悠馬は息を呑んだ。 彼が奥へと歩みを進めていると、ふと背後から人の気配がした。振り返ると、若い地元の男性が同じように地獄谷を散策していた。 「こんな時間に来るなんて、あなたも物好きですね」と、その男性が声をかけてくる。 「あなたも同じですね」と返すと、二人は互いに笑い合い、自然に会話が始まった。男性は「地獄谷で見る青白い灯り」を

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【2】

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り

          再び訪れた旅の地再び旅に出た雪村 悠馬は、秋の終わりに北海道の登別温泉を訪れた。冷たく澄んだ空気が肌に触れるたび、紅葉の最後の名残がはらはらと舞い散り、足元に積もる。 温泉街に着いた彼は、古びた宿にチェックインし、年配の宿主と挨拶を交わした。 「この時期に登別を訪れるなんて、珍しいですね」 主人が微笑みを浮かべると、悠馬も軽く笑い返す。「地獄谷の景色に惹かれまして…一度見てみたいと思っていました」 主人は何かを思い出したように頷き、「そうですか。実はこの時期、地獄谷に

          登別温泉物語 - 地獄谷の灯り

          雪解けの頃にいかがでしょうか? もしコメント頂けましたら非常に勉強になります。 些細なことでもいいのでお願い致します。

          雪解けの頃にいかがでしょうか? もしコメント頂けましたら非常に勉強になります。 些細なことでもいいのでお願い致します。

          次の物語の舞台は、登別温泉の不思議な風景が広がる場所です。夜になると静寂の中に立ち込める湯煙…こんなところでどんな出会いが待っているのか。明日の投稿で詳しく綴ります。

          次の物語の舞台は、登別温泉の不思議な風景が広がる場所です。夜になると静寂の中に立ち込める湯煙…こんなところでどんな出会いが待っているのか。明日の投稿で詳しく綴ります。

          「雪解けの頃に - 特別編:再び訪れた春の町」

          それから一年が経った。再びこの町を訪れる春の日が、僕にとってこんなにも待ち遠しくなるとは思ってもみなかった。 駅を降りると、昨年と同じ冷たさを残しながらも、どこか柔らかな春の風が頬を撫でた。町は静かに雪解けを迎えており、足元にはまだ残る雪がちらほらと見える。けれど、そこには確かに新しい季節が訪れる気配があった。 僕は運河沿いの道をゆっくり歩きながら、昨年この町で過ごした時間を思い返していた。年配の男性や、田島さんとの会話、小さな公園で見かけた家族連れの姿。それらが、まるで

          ¥100

          「雪解けの頃に - 特別編:再び訪れた春の町」

          ¥100

          雪解けの頃に【6】

          ついに桜が咲き始め、町全体が淡いピンク色に包まれていた。公園の桜並木が満開となり、町を歩く人々が自然と足を止めては桜を眺め、心の中で新しい季節を歓迎している様子が伺えた。 僕もその風景に魅せられ、「風待ち亭」へと向かう道すがら、何度も足を止めて桜を眺めた。舞い落ちる桜の花びらが春の風に乗って、町中をふんわりと包み込んでいるようだった。 店に到着すると、田島さんが笑顔で迎えてくれた。「ようやく春が来たね。今年もまたこの町で桜を見られることが、何より嬉しいんだよ」と僕が言うと

          雪解けの頃に【6】