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「雪解けの頃に - 特別編:再び訪れた春の町」

それから一年が経った。再びこの町を訪れる春の日が、僕にとってこんなにも待ち遠しくなるとは思ってもみなかった。

駅を降りると、昨年と同じ冷たさを残しながらも、どこか柔らかな春の風が頬を撫でた。町は静かに雪解けを迎えており、足元にはまだ残る雪がちらほらと見える。けれど、そこには確かに新しい季節が訪れる気配があった。

僕は運河沿いの道をゆっくり歩きながら、昨年この町で過ごした時間を思い返していた。年配の男性や、田島さんとの会話、小さな公園で見かけた家族連れの姿。それらが、まるで昨日のことのように鮮明に浮かび上がってくる。

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