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登別温泉物語 - 地獄谷の灯り【2】

夜の地獄谷での遭遇


地獄谷は、日中とは異なり、夜の静寂と不気味さに満ちていた。硫黄の匂いが濃く漂い、立ち上る蒸気が幻想的に揺らめく。その光景に、悠馬は息を呑んだ。

彼が奥へと歩みを進めていると、ふと背後から人の気配がした。振り返ると、若い地元の男性が同じように地獄谷を散策していた。

「こんな時間に来るなんて、あなたも物好きですね」と、その男性が声をかけてくる。

「あなたも同じですね」と返すと、二人は互いに笑い合い、自然に会話が始まった。男性は「地獄谷で見る青白い灯り」を信じている一人で、実際に何度か目撃したことがあるという。

「その灯りを見たとき、不思議と心が安らぐんです。怖いというより、むしろ神秘的で、何かに見守られているような…」と男性が語る。

悠馬はその話に興味を持ち、地元の人の話を聞くことで、地獄谷に対する認識が少しずつ変わっていくのを感じた。彼は男性に別れを告げ、もう一度静かに周囲を見渡した。

すると、かすかに青白い灯りが谷の奥に現れ、悠馬は一瞬、その場に釘付けになった。その灯りはまるで手招きをしているかのように揺らめき、彼を奥へと誘っているかのようだった。

悠馬はゆっくりとその方向に足を進めたが、灯りはふっと消えてしまい、静寂だけが残った。夢か現実かわからないような感覚に包まれ、彼はしばらくその場に立ち尽くした後、宿へと戻った。

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