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映画「エンドロールのつづき」 試写会の感想
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松竹ナビ株式会社様のご厚意で、試写会に参加させて頂きました。
本当に素敵な作品でした。ありがとうございます!
なお、掲載の画像は松竹ナビ株式会社様の許可を得て掲載させて頂いております。
エンドロールのつづき
・公式サイト
・劇場情報
2023年1月20日(金)~ 全国で公開!
こんな方にオススメ!
ひとつでも当てはまったら、本編楽しめること間違いなしです。
小学生のお子さんや、その年代のご両親、教育関係者の方。
「ものづくり」に興味がある方。
インドの十八番「ジュガード・ジュガール(Jugaad/Juggaar)」の神髄を知りたい方。
映画の裏舞台や制作側に興味がある方。
映画をSDGsの視点で捉えたい方。
最近の派手なインド映画・ボリウッドにお疲れのボリウッド好きの方。
インド映画・ボリウッドに興味はあるけど、長いものやダンスはちょっと…という方。
お料理動画が好きな方。スパイスカレーが好きな方。
インドの田舎も都会も知りたい方。
インドの列車が好きな方。
じんわりとした感動が欲しい方。
好きなことを追求する気持ちを強く持ちたい方。
明日から前向きに過ごしたい方。
事前にチラシの内容に目を通し、「監督が自身の子供時代をベースにした、インドの田舎に住む映画好きの男の子の話」ということだけ、インプットして観賞しました。
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公開情報:2023年1月20日(金)より 大阪ステーションシティシネマほかにて公開
なにかに夢中になる。そして、支えるということ。
お金さえ払えば、欲しいものは何でも手に入ります。逆にいえば、手に入らなければ、多くの人が何かと言い訳を並べて「諦める」という選択に至ります。
主人公のサマイ(ヒンディー語で「時間」の意味。名づけの理由は…?)は、そんな言い訳は持ち合わせておらず、やりたいことを突き詰めて自分のやりたいことを実行する強い力を持っています。決して、勉学に優れているわけではなく、お金持ちでもない。それでも、やり遂げようとする力に、誰もが心を打たれることでしょう。
やりたいという思いが強すぎて、嘘をつくことも盗みを働くこともあります。そんなとき、周りはどう支えていけばよいのか。両親、担任の先生、師匠、警察、友人、友人の親…それぞれ自分が正しいと思うやり方で、時に優しく、時に厳しく彼に接します。それでも、彼が夢中になる目的のその先には、「みんなを笑顔にしたい」という尊い志があることに気づき、周囲が一致団結して応援するようになります。その時、本当に大切な気持ちは何なのかを改めて思い出させてくれます。
主人公サマイを取り巻く大人のなかで、彼の「師匠」ともいえる映写技師のファザルについて、私なりのコメントを寄せたいと思います。主人公サマイはバラモンの生まれ、つまり、ヒンドゥー教徒ですが、ファザルはイスラム教徒です。この映画は、カーストや宗教の差を前面に描くものではありませんが、時折、セリフの中で語られます。サマイとファザル、互いに信仰する神様は異なっていますが、ひとつの映写機に対する愛情は同じです。
また、ファザルが、サマイのお弁当を交換条件としたことに、顔をしかめる観客の方もおられることでしょう。食べ盛りのこどものお弁当を取り上げるなんて…?ですが、インドの芸事(舞踊、声楽、楽器、伝統技術など)を習う際、お金を持たない弟子は、師匠に奉公することで教えを乞うこともできるのです。この場合、サマイが捧げることができる唯一のものが、母親の愛情がこもったお弁当だった…ということでしょうか。お弁当はファザルのお腹に消えてしまいましたが、ファザルが落ち込むサマイに対し、お弁当から母親の愛情が感じられると伝えたことで、サマイとファザルの仲を気づきながらも温かく見守る母親の姿を予感させていました。
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公開情報:2023年1月20日(金)より 大阪ステーションシティシネマほかにて公開
観賞中にお腹がなるかも?グジャラート料理の臨場感。
そして、そのお弁当をつくる母親のお料理シーンが圧巻!脳裏に鮮やかに残るシーンの連続で、玄人も唸るグジャラート料理のオンパレードです。
手を伸ばせばフレッシュリーフを摘めるオープンキッチンで、色鮮やかなマサラと竈が、真俯瞰撮影で切り取られています。ザクザクと野菜を切る音や、石臼ですり合わせる音も心地よく、見ているだけでスクリーンから良い香りが漂ってきそうです。
なお、劇中で登場する「お母さんの料理」は、頂いたパンフレットにレシピが掲載されていました。内容もしっかり本国のレシピをそのまま翻訳しているとのこと。公開中は、どこかのインド料理屋さんで再現してくれないかなぁと期待しています。
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公開情報:2023年1月20日(金)より 大阪ステーションシティシネマほかにて公開
インドの都会・田舎。インドの今・昔。
冒頭は、清々しいグジャラートの緑あふれる光景、チャララの村から始まります。この物語は、映画と列車が中心にあるといっても過言ではないでしょう。
そして、都会の喧騒の中にある古き良き映画館。今はシネマコンプレックスやマルチコンプレックスが主流となっていますが、いわゆる劇場型の木製の椅子が連なる映画館は、長きにわたってインドを知る人には「懐かしい」と感じる場面です。この劇場型の映画館のスクリーンには1990年の「カーリーの奇蹟(Karishma Kali Ka)」から2008年の「ジョーダー・アクバル(Jodhaa Akhbar)」が投影され、これまでインド映画を見たことがある方も、思わず「お!」と、微笑んでしまことでしょう。
また、インドの古い映画館が好きという、私と同じ趣向を持つ方には、きっと主人公の秘密基地がある古い邸宅ハヴェーリー(haveli)の廃墟にもニンマリしてしまうはず。
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公開情報:2023年1月20日(金)より 大阪ステーションシティシネマほかにて公開
すべてを包む「ひかり」を集めて、届けたい。
インドの「ひかり」を感じられる多くのシーン。ナリン監督が観客に「”ひかり”を持ち帰ってほしい」とコメントを寄せているように、様々なひかりが溢れている。強いひかり、弱いひかり。太陽のひかり、電球のひかり。色鮮やかなひかり、褪せたひかり…。インド、特にグジャラートに足を踏み入れた方は、その陽射しが日本の陽射しと異なることをその身で実感されていることでしょう。
万物を包み込む「ひかり」を集める…という発想は、ただ映画の投影という手法の追求だけではなく、「ひかり」のもつ温かさと慈愛を観客にも届けたいという主人公の気持ちが鮮やかに表現されています。
転生したら○○だった件
この映画は舞台裏についても触れられており、映画関係者の方も「そうだったのか」と、思わず息をのむようなストーリーが織り込まれています。
私も主人公サマイと同じように、大量の映画フィルムをコルカタの街角で見かけ、現地リポート「静寂の映画館」として紹介したこともありますが、「つづき」が、こうなっていたなんて全く知りませんでした…。世界中のフィルムたちの行方が気になりますね。SDGsでいう、「12 作る責任 使う責任」のリユースが「転生」と、表現されるのは、さすがバラモンの息子さんといったところでしょうか。
最後に…2023年のスタートに、是非、ご家族で!
「映画はペテン(詐欺師)だ」という台詞が、劇中でもありましたが、本作をみると、夢中になれる素晴らしさと、それをサポートできる喜びを改めて感じさせてくれます。そんな気持ちになれるなら、騙されちゃってもいいんじゃない??と、言いたくなりますね。
上映時間は112分。インド・アメリカ・フランス合作ですので、インドを舞台としているものの、どなたでも観賞しやすい映画になっています。
2023年の始まりにふさわしい映画ですので、是非、ご家族でご覧ください!
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