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失った下半身の突起がコユキに包まれ、かりそめの息吹に生命を宿す。 この宿屋に居る限り…
だから、わたし達は生きることが下手なんだろう。 コユキの告白は純粋な直球で、わたしの心臓…
君思ふ心 ひとつでたりず 複製できたならと 繁華街を深夜徘徊 西口公園の噴水に煙があがる …
ぽたりと垂れる湯気の雫 睡蓮は硫黄に侵され 香る銀杏の湯あたり 「黄泉の国には湯あたりを…
望めば叶う 浮世の出来事 打ち水代わりに 蜜を撒き 群がる四季の …
朱色の千代紙 季節外れのつるし雛 天井を舞う蝶蝶 キラ…
心にうつりゆくよしなしごとを そこはかとなく書きつくれば あやしうこそ ものぐるほしけれ 「小夜ちゃん…」 欲しくて欲しくてたまらない。 薄れゆく記憶のなかで私は、激しく小夜ちゃんを求めた。乳房を鷲掴みにして尖端を噛む。 戸惑う顔が、ゆっくりと怠惰になる。 その変容は美しくて慾が溢れてしまう。 大広間にふたりきり。心地良い風が吹く草原に寝転んでいるような気分だ。 柔らかい唇から垂れる水飴は濃厚で、その甘ったるさに痙攣する。 黒い下着の膨らみを撫でると、私の慾が太
曇天に燃ゆる薄情 揺れる灯火 菜種油 薄紙を巻く唇の誘惑 ざらつく三味線 安物のスピーカー …
得るものと 失うもの 天秤の傾きは平行 背を向ければ傾く 賽の河原 宿に吸い込まれる人間は…
手にした空蝉 羽音はじりじり 初夏を思い 越冬を生きる 「姫様!」 歌姫様の胸に飛び込む…
滲みる歌声は俗世の賛歌 橙色の花弁を翼にみたて 神に捧げし 極楽鳥花 初めてお会いした日…
大広間に浮かぶ月に照らされ 静寂から解き放たれる雲雀の囀り 最後の小節を歌い終えるとき 潤…
進むも戻るも 宵 酔 よい 双頭のウサギ追いし 曼珠沙華 「こちらから、おにかいへどうぞ」 …
霜月に揺れえう 夜な夜な 風見鶏 アルコールを頂こう 小銭を集め ビアホールと洒落込もう 本を捨て街へ出よ 黒電話がケタタマシク鳴く。 折角の微睡みを不躾に一時停止する鳴き声に僅かな苛立ちをおぼえる。起き上がり受話器を取る。滑舌の悪い男の声は、町内放送のスピーカーを彷彿させた。 「番頭でごぜいやす。嬢様、お食事はお部屋でよろしいでしょか?宴会場もごじぇますが、おすすめはせんです」 受話器を塞ぎ、化粧を直すコユキの背中に話しかける。 「食事が付くみたいだよ。部屋と宴会場