牡丹 21
滲みる歌声は俗世の賛歌
橙色の花弁を翼にみたて
神に捧げし
極楽鳥花
初めてお会いした日。
しとしと舞い散る春時雨に、朱色の番傘が綺麗で
わたしは見惚れてしまった。
蜜柑箱に入れられ、薄汚れた幼子に「可愛いね」
と抱き締めてくれた。
後から聞いた話によれば、御婆様との契約が満了し
お宿から飛び立つ前日だったそうだ。
「御婆様、この子達を泊めてあげてください。お代は私が3人分お支払い致します」
御婆様の目論見通りだった。
そんなに都合よく、捨て子が店先に居るわけがないのだ。
拐われたのか、売られたのか覚えてはいない。
ロチにも記憶がないのだから、真相はどうでも良かった。
ただ、近くで
歌姫様をずっと見れるだけで幸せなんです。
足枷になってでも、おそばにいたい。