【無料】日中首脳会談を徹底解剖!|政治初心者の教科書
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11月16日、APEC 首脳会議に出席するため米国・サンフランシスコを訪問中の岸田首相は、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った。
本記事では、この日中首脳会談について、保守・右派の立場から解説しようと思う。
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「媚中の弱腰メガネ岸田文雄!日本の恥!」と吹き上がる謎の限界ネトウヨ勢力がいるが、会談の内容を見れば、それが単なる妄想に過ぎないことがわかる。
私は保守・右翼の立場として、岸田首相を支持する。
外務省発表のページを読むに、岸田首相は以下の8つを中国に突きつけたと理解できるのだ。
しかし、このように要点を挙げた場合においても、まるでアベガーの亜種「キシダガー」は納得しない。
なぜならば、キシダガーは根拠に裏付けされ、またそのリンクも添付されている主張であっても、リンク先の情報すら確認しようとしないからだ。
私はキシダガーに期待などしていない。
安倍政権時代、アベガーになにかを期待できただろうか?
キシダガーは永遠に脳内妄想を繰り広げ、そこに閉じこもっていればよいのだが、「正常な判断力はあるが、情報の精査に手が回っていない」という方が、キシダガーに騙されることがあってはならない。
そのため、私は筆を執った。
本記事では、以下の目次に沿って日中首脳会談を解説する。
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①尖閣諸島・東シナ海情勢
外務省のページには、以下のようにある。
外務省発表にある「日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの下でのホットラインの運用開始」とは、以下を指す。
>日中防衛当局間ホットライン
「日中防衛当局間ホットライン」とは、日中の防衛当局どうしが直接連絡を取り合う仕組みを指す。
設置は2023年3月1日だが、5月16日に16時30分から約20分間、浜田防衛大臣が李尚福中国国防部長と初回の通話を実施した(防衛省発表)ため、外務省発表の「5月」はこの件を指していると考えられる。
この仕組みは、自衛隊と中国人民解放軍の偶発的な衝突を防ぐために設置されたものであり、決して "友和の証" などではなく、『緊張感の高まり』を表していると言えよう。
台湾・尖閣有事を目論む中国政府にとっても、その有事対応を念頭に置く日本政府にとっても、偶発的な軍事的衝突による有事開始は望むものではない。
可能な限り有事を避けたい日本にとってはもちろんのこと、準備を万全に整えて戦争に臨みたい中国にとっても、それは避けたい事態なのだ。
そのため、お互いに情報を交換できる状態にしておき、"すれ違い" が起きないようにしている。
それがこの「ホットライン」なのである。
5月16日の初回通話では、日中の両大臣が、ホットラインを含む「日中海空連絡メカニズム」が、日中間の信頼醸成及び不測事態の回避といった重要な役割を担っていること、今後、ホットラインを適切かつ確実に運用していくことを確認している(防衛省発表)。
そのうえで、浜田防衛大臣(当時)が、東シナ海情勢等の日中間における安全保障上の懸念の存在について言及している(防衛省発表)。
中国による領海侵犯
このホットラインが象徴するように、日中間の緊張は大きく高まっており、その原因は中国にある。
東シナ海における中国の暴挙をまとめているとキリがないが、対日本に対する横暴のみに絞っても、以下のような惨状であるのだ。
上記のグラフでは青い折れ線グラフが接続水域内確認隻数を指し、赤い棒グラフが領海侵入延隻数を指す。
そして、2023年11月の状況は、21日時点で接続水域入域が21日(76隻)、領海侵入が6日(19隻)となっている(海上保安庁発表) 2023年10月は接続水域入域が31日(108隻)、領海侵入が3日(8隻)(海上保安庁発表) 。
これが海の現状だ。
そして、日中の間には海のみならず、空がある。
領空侵犯およびスクランブル発進
2022年度の緊急発進(スクランブル発進)回数は778回であり、推定を含め、緊急発進回数の対象国・地域別の割合は、中国機約74%、ロシア機約19%、 その他約7%だった(防衛省統合幕僚監部発表)。
上記の画像からもわかる通り、近年、中国機の活動範囲は東シナ海のみではなくなり、太平洋や日本海にも拡大している。
そして、2013年度以降、年度全体のスクランブル発進回数は700回を超え続けている(防衛省統合幕僚監部発表)。
>緊急発進(スクランブル発進)とは
つまり、スクランブル発進とは「領空侵犯の恐れのある航空機に対して自衛隊機が緊急的に発進し、行動を監視、警告などを行うこと」を言うのである。
【結論】
日中間における尖閣諸島・東シナ海の情勢には、このように多くの、そして大きな問題が存在する。
これに、日本側は可能な限りの対応をしたうえで、岸田首相は首脳会談という公の場で、「尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海情勢について深刻な懸念」を改めて表明したのである。
「口先だけ」と言うキシダガーもいるが、ではこれ以上どうしろと言うのだろうか。
おそらく「領空侵犯機を撃墜、領海侵犯船を撃沈せしめよ」と言うのだろう。
私も感情的にはまったくの同意見だが、今、この情勢下において先に直接的な武力を行使することは悪手でしかない。
そのため、独立・主権国家としてスクランブル発進等の対応を継続すると共に、世界が注目する「日中首脳会談」という、公で対外的な場において、中国による横暴を指摘し続けるのが最善であると言えよう。
②日本のEEZに設置された中国ブイ
外務省発表には、以下のようにある。
この「日本のEEZに設置されたブイ」とは以下のものを指す。
この中国ブイには「中国海洋観測浮標QF212」とあり、明確な目的は判明していないが、気象観測や、軍事目的で海中データ収集を行っているのではないかとされている。
岸田首相はこの不法なブイの撤去を中国側に求めたわけだが、国内では「なぜ撤去しないのか」という声もある。
これについては、高市早苗経済安保大臣がわかりやすく解説してくださっているので、そちらを引用しようと思う。
高市大臣による説明
高市大臣のYouTube動画によると、以下の通り。
【結論】
「①尖閣諸島・東シナ海情勢」の【結論】において述べたことにも通ずるが、今、日本は安易にブイを撤去するべきではない。
EEZ(排他的経済水域)内へのブイ設置は明確な国際海洋法条約違反であり、また日本の主権を軽視し害する行為に他ならないので、設置はもちろん、その放置も是とはできない。
これは大前提だ。
しかし、条約上の根拠が不明瞭な状態(=撤去後、予想される中国の外交戦に明確な反論ができない状態)で、安易に撤去へ踏み切ることも、これまた是とできないのである。
今、日本は有事対策に最大限のリソースを注ぎ込むべきであって、無用な争い、外交戦にリソースを割くべきではない。
また、「理はこちらにある」としても、反論根拠が不明確な状態では、外交戦に敗北する可能性だって大いにある 理がこちらにある従軍慰安婦・徴用工強制連行の歴史戦で押し負けて来たことを忘れてはならない 。
そのため、今は慎重に条約の確認を行うと共に中国へ撤去を要請すること、即ち岸田政権の行動そのものが正解であると言えるのだ。
P.S. 安倍政権下における中国ブイ
岸田政権の中国ブイに対する姿勢を非難するキシダガーの中には、「安倍さんが生きていたら……」とする者が少なからず存在する。
では、安倍政権下における中国ブイの対応はどうなっていたのだろうか。
少なくとも2013、2016年、2018年にも中国による海洋ブイの設置(EEZ内)は確認されているが、いずれも日本側によって撤去された事実はない。
そして当然ながら、2013年、2016年、2018年と、時の政権はすべて安倍政権である。
私は安倍晋三支持者であるが、いや、あるが故に、事実を歪曲し、「安倍さんが生きていたら……」と妄想を垂れ流して岸田政権を攻撃する行為を許すわけにいかない。
P.S. ブイ撤去のキシダ
皆が「弱腰媚中の検討メガネ」と岸田首相を揶揄しているなか、私は首相を「武闘派広島ヤクザ」と呼んできたのだが、武闘派ヤクザがEEZ内への無断ブイ設置を是とするはずがないのだ。
岸田政権は「無断設置ブイの放置」を是としているわけではなく、あくまで「撤去するための根拠確認」を行っているに過ぎない。
>武闘派広島ヤクザの岸田文雄
前節において岸田首相を「武闘派広島ヤクザ」としたところだが、その理由は以下にある。
対中国包囲網を拡大・強化し、タカ派もびっくりな強硬姿勢を崩さず、戦後類を見ない抜本的な防衛力の強化を行っている岸田首相(広島選挙区)は、まさしく「武闘派広島ヤクザ」と言えるだろう。
③軍事活動の活発化
外務省発表には、以下のようにある。
「我が国周辺での軍事活動の活発化」については、「①尖閣諸島・東シナ海情勢」や「②日本のEEZに設置された中国ブイ」で触れた内容、また台湾への圧力や日本EEZ内へのミサイル着弾なども含まれることだろう。
そして①、②と異なるのが、「ロシアとの連携を含む」という点だ。
>日本EEZ内へのミサイル着弾
記憶にない方もいらっしゃるかと思うが、昨年の8月、中国が発射したミサイル5発が日本のEEZ内に着弾している。
そしてこのミサイルは沖縄県の与那国島から数十kmの近海に着弾しており、「与那国への攻撃(即ち日本領土への攻撃)を想定した訓練ではないか」と分析する向きもある。
中露の連携
2022年2月にロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始し、未だロシアによるウクライナ侵略戦争が継続されているのは、世界的に周知の事実となっている。
これに対し我が国は、「力による一方的な現状変更」を許さず、ロシアの行為を非難する立場を明確にしている。
しかし、中国は我が国および西側諸国と立場を同じくせず、「客観的かつ公正な立場」を主張しつつも、以下のような親露的言動をくり返している。
私の過去記事でも、日宇会談の裏で中露会談が行われており、新枢軸国の主要メンバーと新連合国の主要メンバーが明らかとなったことに触れている。
上記の記事でも引用したが、この対比画像は強烈だろう。
そのうえで、中国は実際に、ロシアへ軍事的な協力をしているものとして考えられている。
中露協力の姿勢については情報戦の真っ只中でもあり、情報の精査は非常に難しいのだが、少なくとも中国はロシア寄りの姿勢を堅持しており、また西側諸国は中露が密接な関係にあると見ていることは事実である。
そのうえで、以下は言い逃れのできない事実であり、中露が密接な関係にあることを明確に示す事項と言える。
【結論】
力による現状変更を認めることは、台湾有事(=力による現状変更)を容認し、発生の確率を高める行為にほかならない。
そのため、日本政府(岸田政権)はウクライナと協力、ロシアを非難して制裁を課し、そのうえで連携する中国に深刻な懸念を改めて表明、国際社会へ日本の立場を明確にしているのだ。
④台湾海峡の平和と安定
外務省発表には、以下のようにある。
ここで今一度、「台湾有事」について掘り下げておこう。
>台湾有事
台湾と中国の歴史を簡単に説明すると、以下のようになる。
過去、日本と支那(現在の中国領)が支那事変を戦っていたころ、支那では中国国民党が政権を握っていた(中華民国)。
その後、中国共産党(現在の中国政府)との内戦に敗れ、国民党が日本の併合が解除された台湾へ逃亡、台湾を中華民国領とする。
そして中国共産党が大陸領土を制圧、中華人民共和国(現在の中国)を建国したため、中国(中華人民共和国)と台湾(中華民国)の構図が誕生した。
中華人民共和国は台湾も統一しようと武力侵攻に着手するも、軍事力の問題から断念。
ただし、「台湾は元々中国の領土である」として、必ず統一するとの主張を続けている(「一つの中国」論)。
その後、台湾の政府は中国国民党ではなくなっていくが、中華人民共和国と台湾が存在する、「二つの中国」の状況は現在まで変わっていない。
そして近年、中華人民共和国が力をつけ、武力を行使してでも台湾を統一する構えを見せるようになったのだ。
習近平国家主席は、2013年、国際会議の場において「長期にわたる政治対立を次の世代へ引き継ぐわけにはいかない」と発言、自身の統治時代に台湾統一の意向を示す。
そして2022年、「最大の誠意と努力で平和的な統一を堅持するが、決して武力行使を放棄せずあらゆる必要な措置をとる選択肢を残す」と述べた。
この「 "一つの中国" を主張する中華人民共和国が、台湾を武力で統一しようとする侵略戦争」を『台湾有事』と呼び、近年、その発生の可能性が高まっているとされているのだ。
アメリカの"あいまい戦略"
この台湾有事は、せいぜい中華人民共和国・台湾・日本・朝鮮半島程度にしか影響を及ぼさないようにも見えるが、なぜかアメリカをはじめとする西側諸国が出張ってきている。
これは、世界の勢力図を考えるとわかりやすい。
現状として、世界の覇権・主導権を握っているのはどこだろうか。
これは明らかにアメリカである。
そして、そのアメリカに西側諸国(主に白人諸国)が追従している形だ。
そのアメリカの覇権に、「我が中国こそが世界の "中" 心の "国" である(中華思想)」とする中華人民共和国が挑戦しようとしている。
ここで、中華人民共和国付近の地図を見てみよう。
これは「逆さ地図」と呼ばれ、中華人民共和国付近の地図を上下反転させたものである。
アメリカは太平洋の覇権を握っており、中華人民共和国がこれに挑戦するには、地理的に自国を閉じ込める形となるフィリピン、台湾、尖閣諸島、沖縄を突破する必要がある。
反対に言えば、アメリカはこのフィリピン~沖縄の「中国封じ込めライン」を死守せねばならないのだ。
よってアメリカは、中国が台湾へ武力行使した場合の対応を明確にせず、あいまいな立場をとることで、中国の行動を抑止する戦略をとっている。
これを「あいまい戦略(戦略的曖昧さ)」と言う。
アメリカは中華人民共和国と国交を結び、「一つの中国」の主張を認識する(acknowledge)が、その一方で「台湾関係法」(1979年4月10日制定)を制定・維持している。
この台湾関係法は、「平和手段以外で台湾の将来を決定しようとする試みは、いかなるものであれ、地域の平和と安全に対する脅威である」とし、自衛のための兵器を台湾に供給することや、台湾に危害を加える行為に対抗しうるアメリカの能力を維持することを定めている。
ただし、アメリカによる台湾の防衛義務は定められていない。
このような "曖昧さ" を維持することにより、「アメリカは軍事介入するかも知れないしぃ、しないかも知れないよぉ?」とし、中国による台湾侵攻、そして台湾が独立を目指し緊張を高める事態を抑止しているのだ。
逆さ地図と第一列島線、第二列島線
先ほどの「逆さ地図」によって、フィリピン~沖縄が中国を閉じ込めているとわかった。
そして、中国はこの「中国封じ込めライン」に対し、「第一列島線」と「第二列島線」を設定している。
南シナ海からフィリピン、台湾、尖閣諸島、沖縄を「第一列島線」とし、日本から小笠原諸島、グアムを「第二列島線」とした。
中国はまず第一列島線内の制海権を確保し、その後に第二列島線内の制海権を確保、そうして太平洋へと進出することを目論んでいる。
この第一列島線と第二列島線は我が国にも大きくかかわる考え方であり、そろそろ国民の間で共有せねばならない時期に来ていると思う。
【結論】
このように、中華人民共和国は歴史的にも別存在(中華人民共和国が台湾を実行支配した歴史はない)である台湾の存立を脅かし、また周辺諸国にも牙を剝いている状態なのだ。
台湾海峡の平和と安定が崩れることは、関係諸国の安全のみならず、世界の秩序すら崩壊させてしまうことを意味する。
そのため、日本政府(岸田政権)は「台湾海峡の平和と安定が我が国を含む国際社会にとっても極めて重要である」とし、中国に自制を求め、かつ日本の立場を明確にしているのである。
⑤我が国の台湾に関する立場
外務省発表には、以下のようにある。
>日中共同声明
日中共同声明において、明確に台湾に触れているのは第三項。
これは一般に、以下のように解される。
日本は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする中国の立場を「十分理解し、尊重する」が、この主張を「承認」するものではない。
そして「ポツダム宣言第八項に基づく立場」とは、以下のカイロ宣言における領土条項の履行を指す。
「中華民国」はカイロ宣言当時の中国であり(④台湾海峡の平和と安定 >台湾有事 参照)、日中共同声明第ニ項において、日本は中華民国に代わり、中華人民共和国を「中国の唯一の合法政府であることを承認」した。
よって、カイロ宣言の「中華民国」は「中華人民共和国」と読み替えるのが一般的だ。
そのため、日本は「台湾および澎湖諸島の中華人民共和国への返還」を受け入れることとなる。
この「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」というのは、前段のみで中国が納得しなかった場合の第ニ案であったという そして案の定、この第二案を採用することとなった 。
ここで留意が必要なのが、「台湾の最終的地位は未解決である」ということだ。
「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し」とし、「承認する」としなかった理由はここにある。
日本は「台湾を中華人民共和国に返還すること」に異議を唱えない。
しかし、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること」を承認するものではない。
よって、中華人民共和国と台湾の話し合いで台湾が統一される場合は「国内問題」であるが、中国が武力による統一を試みるのであれば、これはまた話が違うぞ、ということになるなのだ。
ただし、日本は中華人民共和国に台湾を返還しているので、「台湾の独立」を支持する意思はない。
「いったい何を言っているのか」と思うだろう。
私もそう思っている。
だがしかし、外務省の「台湾に関する日本の立場はどのようなものですか」に対する返答を見れば、日本政府が上に説明した通りの立場をとっていることがわかるのだ。
日中共同声明において、「台湾の中華人民共和国への返還」を認めている。
しかし、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること」は認めていないので、非政府間で独自の交流を継続している。
そして、台湾をめぐる問題について、「話し合いを通じて平和的に解決されること」を願っていると。
以前、物議を醸した麻生太郎氏のご発言にも、この認識が表れている。
日本は日中共同声明に基づき「台湾の独立」は支持しないが、同時に「武力による統一」も認める立場ではない。
そのため、「独立せよ」とは言わないが、「戦う覚悟が必要だ」となるのである。
【結論】
このような経緯を鑑みるに、日中首脳会談における「我が国の台湾に関する立場は、1972年の日中共同声明にあるとおりであり、この立場に一切の変更はない」とは、「我が国は台湾に対する支配を放棄し、中国唯一の正当な政府である中華人民共和国に返還し、『一つの中国』の主張を尊重するが、武力による台湾統一も台湾の一方的な独立も認めない」であると言えるだろう。
素直に読めば非常に無理筋な屁理屈であるように思うが、こうでなければ、日本は台湾周辺のシーレーンを諦めることになり、それは海洋国家として死を意味する。
台湾を中華人民共和国に返還しなければ、戦後処理の不履行にもなるし、日中国交正常化も叶わなかった。
しかし、「一つの中国」論を承認してしまえば、台湾への武力侵攻が「反乱軍に対する制圧行動(国際法上の内戦)」となり、日本が口を挟む余地を失ってしまう。
そのような難しい立場でのこの決断であり、そして現状として、日本政府は上記ままの行動をとっているのだ。
今回の日中首脳会談では、日中共同声明に基づき「武力による台湾統一を認めない」との立場を、今一度、中国に対して突きつけた形になる。
⑥中国における邦人拘束事案
※本節は性質上、不確定な情報を含みます。
外務省発表には、以下のようにある。
近年、中国において邦人(日本人)が拘束される事案が相次いでいる。
反スパイ法(中華人民共和国反間諜法。中国の国内法)が施工された翌年の2015年以降、「スパイ行為への関与」として、少なくとも17人の日本人が当局に拘束されてきた。
2023年3月にも、大手製薬会社の日本人男性が中国国家安全局によって拘束され、居住監視措置を経た後、10月19日に逮捕された。
そして先日、2019年に反スパイ法違反で逮捕された50代の日本人男性に対し、懲役12年の判決が確定。
現状として情報を整理すると、おそらく中国は公安調査庁をスパイ組織として扱っているようで、たとえスパイ行為を働き中国の主権・国益を害したわけでなくとも、公安調査庁との接触が確認されただけで逮捕された事例もあるようだ。
この反スパイ法は今年7月に改正され、「国家の安全や利益に関わる文書、データ、資料、物品」を窃取・偵察・買収・提供する行為がスパイ行為として追加された。
しかし、この「国家の安全や利益」がなにを指すかは国家安全当局が決定するため、恣意的な運用余地の拡大に西側諸国も大きな懸念を示している。
中国はまぎれもない独裁国家であり、独裁国家の法というのは、やはり恣意的に運用されてしまうものだ。
改正前の反スパイ法は40条だったのが、改正後には71条にまで内容が追加されている。
だが、あくまで立て付けは「中国の国内法」であり、これに対して日本政府ができることは非常に限られているのだ。
このような事案について、日本政府(岸田政権)は邦人の即時解放を中国に求めている 現状、日本政府としてこれ以上にできることはない 。
P.S. 高市早苗コラム
高市早苗議員のコラムに改正反スパイ法の条文が掲載されているので、ご紹介まで。
⑦ALPS処理水の海洋放出
外務省発表には、以下のようにある。
現状、日本は福島第一原発事故において発生した汚染水を処理した、いわゆる「処理水」を海洋放出している。
この海洋放出はすでに3度行われており、1度目は2023年8月24日~9月11日、2度目は10月5日~10月23日、3度目は11月2日~11月20日に実施された。
このALPS処理水の海洋放出について、世界で2つ、科学的根拠に基づかず非難する勢力がある。
中国と日本の左翼である。
>ALPS処理水とは
ALPS処理水とは、3.11東日本大震災の津波被害に伴う福島第一原発事故において発生した汚染水を、Advanced Liquid Processing System(多核種除去設備)によって処理した、安全基準を満たす水である。
経済産業省 資源エネルギー庁によると、ALPSの多核種除去では、トリチウムを除いた62種類の放射性物質を除去することができるのだそう。
以前はセシウム以外の放射性物質を除去することができなかったそうだが、ALPSが開発され稼働した2013年以降、発生した汚染水を高い基準で処理できるようになったのだとか。
>トリチウムとは
このように、汚染水はALPSによって処理水となり、「安全」であるとして海洋放出されているわけだが、1つ気になる点がある。
それは、「トリチウムは現在の技術では除去できない」という点だ。
つまり、現在、海洋放出されている処理水の中にはトリチウムが含まれているということであり、これは我々の健康や資源、海で繋がる諸外国に影響を及ぼさないのだろうか。
ここで、「トリチウム」について簡単に触れておこう。
トリチウムが出す放射線は紙1枚で遮れる程度のものであり、外部から被ばくすることは考えづらい。
また、トリチウムが体の中へ入った場合も、三重 "水素" なので水と一緒に排出(10日で半分程度が排出)され、内部から被ばくする影響も、極めて小さいのだそう。
「放射性物質」と聞くとおどろおどろしいイメージをもってしまうかもしれないが、自然界にもさまざまな放射性物質が存在しており、我々は常にそれらに曝されている。
それに、レントゲン撮影やCT検査等においても、我々は多少なりの被ばくをくり返している。
重要なのは「放射性物質が与える影響の大きさ」なのであって、この観点から考えれば、トリチウムはさほど危険な物質とは言い難いのだ。
メチル水銀のような「生物濃縮」を心配する声もあるが、そのほとんどが生物の体外へ排出され、体内に蓄積されないことから、水の状態のトリチウムが生物濃縮を起こすことは確認されていない。
そのうえで、国の定めた安全基準の1/40(WHO飲料水基準の約1/7)未満へ海水で薄めた後に処分するという。
麻生太郎氏が「飲める」と発言し波紋を呼んだのが2021年。
放射性物質に着目すれば飲めることは明白なのだから、通常の海水を飲料水とするように、塩分を除去した後に浄水処理を行えば、なんら問題なく飲用できるはずだ。
文句があるなら私が飲むので、是非、塩分を除去して浄水処理した処理水を持ってきてほしい。
常飲するから。
また、「安全ならなぜ飲料水やその他の活用をせず海洋放出するのか」との声もあるが、飲料水への加工や活用のための運搬にかかるコストを考えれば、海洋放出に行きつくのは当然のことである。
IAEAとは
ここで、処理水関連でよく耳にする「IAEA」という組織についても触れておこう。
IAEAは「国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)」といい、原子力の平和利用促進、原子力の軍事転用防止を目的とした、国際的で中立的な機関である。
2023年1月現在、加盟国は176ヶ国であるという。
原発処理水の海洋放出にはIAEAが深く関わっており、日本の正当性を科学的な立場から証明している。
中国によるイチャモン外交
科学的に安全性が証明されているALPS処理水の海洋放出であるが、これに対し中国は、科学的見地に基づかない批判・非難をくり返している。
9月7日に駐日中国大使館ホームページへ掲載された、ALPS処理水の海洋放出に関するコメントについて、経済産業省と外務省が回答したものがあるので、抜粋してご紹介しよう。
この他にも、8月28日の駐日中国大使館コメントへの回答(外務省)、ALPS処理水放出開始を受けた各種事案についての中国側への申入れ(外務省)、ALPS処理水に関する日中外交当局間のやり取り(在中国日本国大使館)等々、日本政府の苦労が見える事例が多々存在する。
さらに、外務省の海外安全ホームページでは、「中国:ALPS処理水の海洋放出開始に伴う注意喚起」として、以下の内容が呼びかけられている。
このような、科学的見地に基づかない主張をくり返している国は中国のみであり、日本政府は中国に対して、正確な情報を発信するよう求め続けている。
【結論】
日本のALPS処理水海洋放出は科学的に「安全」と確認されており、IAEA等の国際的機関からもそれは認められている。
そのため世界各国は処理水放出に理解を示しており、科学的根拠に基づかず日本を非難する、まさに「イチャモン外交」と呼ぶべき言動をくり返しているのは、ほぼ中国くらいとなっている。
この中国のイチャモン外交に対し、日本政府(岸田政権)はさまざまな場において、科学的根拠に基づく冷静な対応を求め、それを発信し続けている。
従軍慰安婦や徴用工強制連行などの歴史戦に敗北してきた日本であるが、今回の処理水海洋放出については、日本のロビー活動の勝利と言ってもよい。
P.S. 左翼による風評被害(風評加害)
私は本章の冒頭で、以下のように書いた。
中国によるイチャモン外交も酷いものであるが、国内で同じようなことをくり返している左翼勢力も、中国と同じか、国内であるだけ中国よりも酷いものである。
現在の日本において、政党でいえば立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組等が「左翼」とされるが、彼等による風評加害は枚挙に暇がない。
つまり、立憲民主党は(表では)「処理水」を公式見解としつつも、個々の議員が「汚染水」との表現を用いて風評被害を助長することについて、これを党として認めるということだ。
地元関係者が恐れているのはまさに「風評被害」であり、風評被害を煽っているのは立憲民主党をはじめとする左翼陣営。
自身で風評を煽っておいてそれを政争の具とする姿勢、これを「マッチポンプ」という。
立憲民主党に頭を悩ませていると、党本体として、党代表の名で「汚染水」との表現を用いる日本共産党が現れた……
社会民主党も公式に処理水を「汚染水」と呼び、風評被害を助長している。
処理水を「汚染水」と呼んだうえ、海洋放出を「海洋投棄」とするれいわ新選組。
れいわ新選組 山本太郎代表は、これに留まらず福島県および県民に対し「差別」と言うべき言動をくり返している。
上記4党および所属議員、そして支持者による風評被害の助長(風評加害)、福島ヘイト・差別はあまりに下劣で、あまりに卑劣だ。
そのうえで「私たちは(自分たちが煽る風評を恐れる)福島の漁師さんたちの味方です!」というような主張を展開するのだから、その姿は醜悪そのものであり、同じ人間とも思いたくないレベルである。
⑧日本産食品輸入規制の即時撤廃
外務省発表には、以下のようにある。
「⑦ALPS処理水の海洋放出」に関連して、中国は「日本産食品輸入規制」を行っている(イチャモン外交の1つ)。
中国の輸入規制の概要
これにより、日本の水産物関係は大きな打撃を受けている状況だ。
これに関連し、今年9月、櫻井よしこ氏の新聞広告が話題となった。
櫻井よしこ氏の広告が炎上
8月末に中国が日本産海産物の輸入規制を開始したことに対し、櫻井よしこ氏が「日本の魚を食べて中国に勝とう」との新聞広告を配信した。
これが炎上したのだ。
このように。
私の観測範囲ではこのポストが最もエンゲージを集めていたのだが、同様・似た趣旨のポストが多く見られた。
しかし、『日本に、食費を「いつもより1000円ちょっと多く」自由に使えるおうちがどれだけある』とのことだが、広告の本文を読めば「 "年間" 1,000円ちょっと多く」であることがわかる。
おそらく「いつもより1000円ちょっと多く」との文言に脊髄反射的に反応し、それが1日あたりなのか1週間あたりなのか、1ヶ月あたりなのか1年あたりなのかを考えない者が多くいたのだろう。
1日や1週間あたりであれば1,000円を多く払うことが困難な家庭は多くあるだろうが、1ヶ月や1年あたりでそれが難しい家庭は少ないだろう。
また、1,000円の捻出が難しい場合、他の娯楽品の購入を多少抑えれば、1,000円と少しの全額を加算する必要もない。
そして、「勝ち負けの概念が全くわからん」とのことだが、「嫌がらせに負けるな。勝とうじゃないか!」というのは、そんなにおかしな考え方であろうか。
「なんでも勝ち負けで考えるなんて下品」などの意見も多く目にしたが、嫌がらせに対して勝とうとするのは当然のことであり、そもそも下品なのは、イチャモン外交によって不当に日本産海産物の輸入規制を開始した中国である。
負けない日本
このような、卑劣なイチャモン外交に晒されている日本であるが、日本人を舐めてもらっては困る。
この状況を黙って見ている日本ではない。
日本政府(岸田政権)はもちろんのこと、日本企業までが総力を挙げて対応にあたっているのだ。
もちろん中国のマーケットは巨大なので補填は簡単ではないが、日本および日本人が負けることはない。
>ホタテ続報
【結論】
このような中国のイチャモン外交に対し、日本政府(岸田政権)は日本産食品輸入規制の即時撤廃を求め続けている。
このイチャモン外交、輸入規制の問題は、我が国の経済的損失に留まらない。
本件は「相手国の経済を人質に、不当な主張を押し通そうとする」という、まさに「経済的威圧」と言えるだろう。
これは、G7においても問題とされている行為だ。
我々が中国の経済的威圧に屈さず、販路を開拓して経済を立て直すことができれば、「結束して対抗すれば、中国の経済的威圧など恐れるに足りない」というメッセージを世界に発信することができる。
これは、中国の経済的威圧に屈する(=中国の勢力として組み込まれてしまう)国を減らすことに繋がり、大局的に見れば、まさに「対中国包囲網」の形成・強化に繋がる重要な事柄なのである。
余談:国辱のキシダ
以下の画像を根拠として、「自信満々の習近平と岸田文雄首相」として、岸田総理を「国辱」とする向きがある。
上記の記事は、島田洋一氏が記事見出しの画像を引用し、岸田首相を「歩く国辱」とするポストを紹介している(当該ポストは削除済み)。
主に日本保守党支持者と層が被っているキシダガーに上記のような主張が多いのだが、これには2つの問題点がある。
ひとつは、「政策議論ではなく印象論である」という点。
習近平国家主席との写真を引用し、「中国に対して下手に、ペコペコする国辱・岸田文雄」とするポスト。
しかし、本記事にて解説したような岸田首相の外交政策を見て、岸田首相を「国辱」と言えるだろうか。
理不尽に毅然と対応し、国際社会へと訴え、出来うる限りの最大限を尽くしているのが岸田外交だ。
そのような岸田首相に対して、一瞬の切り取りに過ぎない画像を用いて「国辱」といったイメージを植え付けようとするのは、決して健全な政権批判とは言えない。
もうひとつは、さらに酷い。
なぜならば、引用されている画像は今回の日中首脳会談におけるものではなく、昨年に撮影されたものだからだ。
この画像を引用する者もいる。
あまりに卑劣だ。
また、政策でない部分に関しても、岸田首相が「歩く国辱」ではないことが報じられている。
武闘派広島ヤクザの岸田文雄
私は皆が「媚中の弱腰メガネ岸田文雄」と言っている間、「武闘派広島ヤクザの岸田文雄」と言い続けた。
日中首脳会談という対外的な公の場において、「握りこぶしで机を叩く」というのは、これはまさに「武闘派広島ヤクザ」と言うべきではないだろうか。
関係者は「気合が入ったときの動き」と言うが、気合いが入ったからといって、公の外交の場で机は叩かないだろう、普通は(笑)
さすが武闘派広島ヤクザの岸田文雄、我らが誇る、日本の総理大臣だ。
私はこの、理不尽に屈さず闘う広島ヤクザを、全力で支持していく所存である。
まとめ
本記事では、先日の日中首脳会談について、主に8点をもって解説した。
岸田首相は、決して日本側の立場を譲歩せず、真正面からこれらを叩きつけてきた。
中国がブイを撤去しないことや、中国船舶の行動等をもって首脳会談の成果を否定せんとする者もいるが、あまりに政治を単純化して考えすぎだ。
日中首脳会談を実施したからといって、中国側が簡単に態度を軟化させるはずがない。
首脳会談で中国の態度をどうこうできると言うならば、それこそ「話し合いで解決」とする左翼と同じ主張をしていることになる。
ここでは、「日本は譲歩しない」という姿勢を、中国、そして国際社会へと見せつけることに大きな意味があるのだ。
「日本は中国の思い通りにはならない」と中国共産党に示し、「我が国は対中国の最前線として、覚悟をもって闘っている」と国際社会に示すことに意味があるのだ。
これが中国に対する抑止力となり、国際社会へ支援を呼びかける際のプラスにもなる。
今回の日中首脳会談に限らず、岸田政権は「日本は中国の思い通りにはならない」と中国共産党に示し、「我が国は対中国の最前線として、覚悟をもって闘っている」と国際社会に示してきている。
なんと言っても、我が国日本の総理大臣は、「武闘派広島ヤクザの岸田文雄」じゃけぇのぉ!
安倍晋三支持者として思うが、岸田首相は将来、安倍元首相と並んで称えられる名総理となることだろう。
無論、すべてが "是" である総理大臣などおらず、岸田政権にも "非" にあたる部分があるが、是々非々で各政策を評価した結果、私は「アンチ岸田」から「岸田文雄支持」となった。
岸田総理が現在のスタンスを変更しない限り、私は今後も、岸田政権を全力で支持していく所存だ。
以上おわり。
P.S. 國神からのお願い
最終的に30,000字を超える記事となってしまいましたが、お付き合いをいただきありがとうございました。
私は俗に言う "オタク気質" であり、そのうえ政治に関心が強いものですから、岸田政権についてネチネチとファクトを調べ、公式発表や一次情報にあたり、正確に岸田政権を評価できるようになりました。
しかし、多くの有権者のみなさんはお忙しく、また政治に強い関心がある方も少なく、ファクトチェックに手が回っていない方も多くいらっしゃるものと思います。
そのような方に事実をお伝えすることができればと、本記事を執筆いたしました。
ですが、noteには広告収入の形式がなく、本記事がいくら読まれようと私には一銭も入りません。
もちろん、自身の収益は二の次であり、儲からずとも日本のために筆を握る所存です(そうでなければ岸田支持の記事など書かない)。
とはいえ、私もただの21歳。
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國神貴哉
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