突然炎のごとく
恋は、とめることができない。「好き」が高ぶり、一晩中相手のことを想う時期は誰にでも訪れる。ただ、恋に落ちる前に躊躇する理由は人それぞれだ。
国籍が違うから
民族や肌の色が異なるから
宗教が違うから
言語が違うから
相手が既婚者だから
歳の差が離れすぎているから
親友の妻あるいは恋人だから
最後の理由はどうだろうか。不倫は不道徳、略奪愛は外道という慣習はフランスでは少数派なのかもしれない、多くのフランス映画(今月見た三本とも!)では恋愛至上主義というか、みな愛こそ最も尊ぶべきと認めている。
以下、ネタバレを含むため未見の方はご注意ください。
ジュールとジムの関係
ジュール(独)とジム(仏)は出身は異なるが、詩を披露しあったり、人生哲学を語り合ったり、意気投合する二人。モテ男のジムはジュールに女の子を紹介するも、根が真面目すぎてうまくいかない。ところが、ドイツからやってきた男まさりなカトリーヌを二人とも好きになってしまう。
魔性の女カトリーヌ
ジュールとつきあいはじめたカトリーヌは、男装したり、三人でナイトクラブに繰り出したり、アバンギャルドな魅力あふれる女だ。
ある日、引越しが決まり、ジュールの代わりにジムが荷物運びを手伝いに来る。このシーンが秀逸!
クズ入れの紙(たぶん手紙)を燃やそうとするカトリーヌ。「何をするの?」「嘘を燃やしてしまうの」とマッチをするが火はつかず、ジムがマッチをすると、炎がめらめらと燃えさかり、誤ってカトリーヌのスカートの裾にも火の粉が飛ぶ。
当時の女性のファッションは脚はみせない。だが、うっかり火の粉を消そうとカトリーヌの足首にふれてしまうのだ。
そのとき、“突然炎のごとく”恋に落ちてしまう二人。うまい演出である。邦画タイトルも洒落てる。
熱情のはて
敵味方と分かれて戦った対戦が終わり、ドイツの片田舎に招かれたジム。カトリーヌはジュールとの間に女児をもうけていた。再会を喜ぶ三人、だがカトリーヌの恋の炎は燻り続け、ついにはジムと一線を超えてしまう。それに気づいた夫ジュールはカトリーヌを愛している。
で、どうしたか⁈
カトリーヌと関係を続けてくれないか、君となら安心できるし、そばで彼女を見守ることができるから、
と親友に願いするのだ。
えぇぇぇ... そんな愛ってあり得ねぇ。
ジムにはフランスに残してきたGFがおり、カトリーヌには他にもセフレ男がいる。ただあいまいに微笑むジュールだけが性愛と無縁の純愛を、悲劇的な結末まで貫くのだ。
愛とは、恋とは、いったい何だろう。
考えさせられる物語だった。
突然炎のごとく 1962年/フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャンヌ・モロー, オスカー・ウェルナー, アンリ・セル
字幕:山田宏一
★★★★☆ 4/5
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