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ショートショート集

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2021年3月の記事一覧

一緒に空を掴む夢を見ようか

無理、絶対出来っこない。 お父さんから教えられたギターは、ぼくに向いてなかった。本来は重…

haru
3年前
40

全部の嘘を信じてあげる

ピエロ、そっちの方が良いでしょ。 「明るく楽しく前向き」。ずっとそう心掛けてきた。小学校…

haru
3年前
33

ネオンシャワー幻想

救世主なんて、どこにもいない。 私は潰れかけたソフトケースの箱からタバコを一本取り出した…

haru
3年前
38

女の子は恋をしたら可愛くなるという、うそ

昔から、自分が大嫌いだった。 小学校も中学校も高校もクラスの中では下位カースト、ヘアアレ…

haru
3年前
62

世界が始まる音が鳴る

つまらないのは、世界の方。 大学を卒業後、ベルトコンベアに載せられるように就活をした僕は…

haru
3年前
35

さくらのあしあと

春になるたびに思い出す、私の淡き一瞬。 好きとか、恋とか、そういうの分からなかった。 剣…

haru
3年前
41

最高を演出しろ

舞台に座る彼は、輝いていた。 パリッと着こなされた艶やかなスーツ、ライトを跳ね返すような深紅のネクタイ、身長は高くないものの、スラリとした手足と首は白く、ベロア調のシルクハットを掲げ、観客に向かって手を差し伸べた。 「最高ってこういうことでしょ」 舞台の中央に腰掛け、手にしたステッキを優雅に動かす。ライトはオレンジ色から白色に変わり、舞台袖から続々とサブの役柄が登場する。鳴り響くファンファーレ、段々と降りていく幕、私はパイプの椅子に座ったまま、ずっとその情景を見ていた。

錆色の心臓に水を差す

嫌い。親が嫌い。学校が嫌い。他人が嫌い。 中学校に入ってから、私の毎日は暗雲が立ち込めら…

haru
3年前
19

理想原子

化学とか、なくなればいいのに。 お昼ご飯が終わった午後の最初の5時限目、私はほぼ真っ白と…

haru
3年前
14

種蒔き花咲き世は美しき

僕が、君を忘れることはないだろう。 桜の花弁が落ちるスピードが秒速5センチメートルだとか…

haru
3年前
9

陽だまりにキス

あぁ、なんて君は美しいのだろう。 クリスマスのオーナメントが欲しいと言ったのは僕の不器用…

haru
3年前
8

信頼の弾丸が僕を抉る

「ああ、そう」と僕は呟いた。 僕が2歳の時に隣の家に引っ越してきた同じく2歳だった君が、仲…

haru
3年前
8

光陰の矢をつかまえろ!

何度目の、卒業式だろう。 欠伸を噛み殺しながら、僕は着古した制服に身を包み、胸元には造花…

haru
3年前
10

拒絶された瞬間気付く恋

彼女は僕に惚れている、と思っていた。 塾講師になってから2年が経った。大学の片手間でアルバイトとして就職した勤務先に引き抜かれ、あっという間に正社員になった。大学はまだ卒業していないが、そもそも通信制の大学に在学しているため、時間の融通はいくらでも効いた。家庭の事情で学費を払うことが難しく、あえなく通信制の大学に進学した僕は、高校はいわゆる進学校に通っていて、当時の全国模試では偏差値70台くらいの成績を叩き出していた。高校時代の成績を買われた僕は、塾講師1年目で大学受験生を