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【現代に生きる戒律】〜第4回「働き方と修行」〜



はじめに:修行の本質

みなさん、こんにちは。
今回は「働き方と修行」というテーマでお話をさせていただきます。

日々の仕事、楽しく取り組めていますでしょうか。
やりがいを感じながら働ける方もいれば、人間関係のストレスや毎日の重圧に悩む方も多いのではないでしょうか。

仏教における修行とは

仏教では、修行を「心を修め、調えること」と定義しています。
これは決して特別なことではありません。
お釈迦様は、日々の生活や仕事そのものを通じて心を磨いていく方法を説かれました。
つまり、私たちが毎日送っている普段の生活の中に、すでに修行の機会が満ちているのです。

禅宗における労働の意味

禅宗について少し詳しくお話ししましょう。
禅宗は座禅を修行の中心に据える宗派として知られていますが、実は掃除や炊事などの労働も「作務(さむ)」と呼んで、重要な修行として位置づけています。

たとえば、皆さんご存知の作務衣(さむえ)。
この「作務」という言葉は、まさに労働を意味しています。
お寺での掃除、食事の準備、庭の手入れ。
これらすべての作業が修行の一環となるのです。
なぜなら、どんな作業も心を整える機会になるからです。

生活リズムと心の調和

私が副住職を務めるお寺での話を少しさせていただきます。
毎朝5時30分からお経を読み始め、その後座禅を組むという日課を実践しています。
正直なところ、修行時代は周りの仲間もいて、もっと早い時間から始められていたのですが、今のお寺に戻ってきてからは、最初のうちは本当に大変でした。

朝、目覚ましが鳴っても、布団から出られず、眠気との戦いの日々。
できない自分に対して情けなさを感じることもありました。
でも、これは誰もが経験する過程なんです。
諦めずに続けていくうちに、少しずつできるようになり、今では自分の心を支える大切な習慣となっています。

規則正しい生活リズムを整えることは、実は心を整えることの基礎となります。
皆さんも、朝のほんの少しの時間でいいのです。
心を整える時間を作ってみませんか。

「でも、朝は忙しくて...」という声が聞こえてきそうですね。
大丈夫です。最初から完璧を目指す必要はありません。5分でいいのです。
むしろ、小さな一歩から始めることをお勧めします。
なぜなら、それを続けられることが何より大切だからです。

実践的な瞑想法

「瞑想なんて難しそう...」と思われる方も多いかもしれません。
そこで、私がお勧めする瞑想法をご紹介します。

  1. まずは座ります。椅子でも床でも、自分が心地よいと感じる場所で大丈夫です。

  2. 背筋をまっすぐ伸ばします。でも、力を入れすぎる必要はありません。

  3. 目を半分閉じるか、やさしく床を見つめます。

  4. まずは3回ほど、深いため息をつくように深呼吸します。

  5. その後は自然な呼吸に戻し、「1、2、3...」と10まで数えます。

  6. 雑念が浮かんでも大丈夫。気づいたら、また呼吸に意識を戻します。

これを5分間行う。
この5分というのが、心を整える貴重な機会となるということなんですよね。

「一事専念」の教え

現代社会では、私たちの注意は常に分散されがちです。
スマートフォンの通知、次の予定の心配、メールの確認...。

こうした状況の中で、禅の教えである

「一日作さざれば、一日食らわず」
(一日働かざる者は、一日食するに値せず)

という言葉が、とても重要な意味を持ちます。
この教えは単に「働かないと食べてはいけない」という戒めではありません。
目の前のことに全身全霊を注ぐことの大切さを説いているのです。

たとえば、電車での通勤時間。
ついついスマートフォンを見てしまう時間を、呼吸を整える時間に変えてみませんか。

それだけでも、心を整える立派な修行となります。

職場での心の整え方

職場でのストレスフルな状況について、具体的に考えてみましょう。

たとえば、上司から強い口調で叱責を受けた時。
誰しも、その瞬間には様々な感情が湧き上がってきます。
怒り、悲しみ、不安...。
そんな時こそ、修行の考え方を活かすチャンスなのです。

実践的な対処法をご紹介します:

  1. まず、その場で深呼吸をします。「吸って...吐いて...」とゆっくり3回。

  2. 自分の感情を否定せず、ただ観察します。
    「今、私は怒りを感じている」

  3. 次に、この状況から学べることはないか、考えてみます。

  4. 相手の立場に立ち、なぜそのような言動になったか、背景を想像します。

  5. この経験を、自分の成長の機会として捉え直します。

これは「中道」の実践です。
感情を抑圧するのでもなく、かといって感情に流されるのでもない。
バランスの取れた心の状態を目指すのです。

「正命」の現代的解釈

「正命」という言葉をご存知でしょうか。

「正しい生き方」という意味ですが、現代では
「自分の仕事を通じて、どのように社会に貢献できるか」
「どのように心を磨いていけるか」
という視点で捉え直すことができます。

たとえば、接客の仕事をしている方なら、一人一人のお客様に真心を込めて接することで、相手の方の心が少しでも明るくなれば、それは立派な「正命」の実践と言えるでしょう。

日常生活における実践のヒント

毎日の生活の中で、すぐに実践できるポイントをいくつかご紹介します:

  1. 朝一番の仕事は特に丁寧に
    どんな仕事でも、一日の最初の仕事は特に意識して丁寧に行います。それが一日の調子を整えてくれます。

  2. 感謝の気持ちを意識する
    日々の何気ない出来事に「ありがとう」と思う習慣をつけることで、心が自然と整っていきます。

  3. 小さな達成感を大切に
    一つ一つの仕事が終わったとき、心の中で「よくできました」と自分を褒める習慣をつけましょう。

おわりに

日々の忙しさの中で、すべてを完璧に実践することは難しいかもしれません。でも、それは誰もが同じです。
まずは小さなことから、自分にできることを少しずつ始めていけばいいのです。

それは朝の5分間の瞑想かもしれません。
通勤電車での深呼吸かもしれません。
あるいは、今までより少し丁寧に仕事に取り組むことかもしれません。
どんなに小さなことでも、それを続けていくことで、必ず心は整っていきます。

皆さんの日々の実践が、心の平安につながることを願っています。

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