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月に着くまで13分。

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エッセイ。徒然なるままに。
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マイナー好きなあなたのためのロンドン食事処8選

マイナー好きなあなたのためのロンドン食事処8選

あなたがロンドンに何度も来たことがあるのなら。
もうおいしいイングリッシュブレックファストも、フィッシュ&チップスも、リッツやフォートナム&メイソンでのゴージャスなアフタヌーンティといった王道グルメも、きっと経験済みだろう。

そんなメインストリームじゃない、別のなにかを求めている「マイナー好きなあなたのためのロンドン」シリーズ。
第三弾はお食事処。

1.まずはいきなりスペイン料理から

そもそ

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やさしくなれない

やさしくなれない

あまりにもバタバタした年末年始で、去年書いたウェールズ訪問の話を新年になってから投稿するというありさまだった。
そして、気がつけば1月ももう半分過ぎてしまった。

今年は、クリスマスイブにメインのご馳走を料理し、本来お祝いの宴のはずのクリスマス当日にはネコと静かに買い置きの小さなチキンを食べた。
ローストチキンを焼く気にすらならず、参鶏湯にしたほど、なんとなく弱っていた。
前夜に、単身赴任でロンド

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ウェールズ再び

ウェールズ再び

仲良しのトレーシーは、出身地を訊かれると「(Walesの首都)Cardiffだ」と答える。
でも、実際彼女の実家があるのは、そこからさらにローカル線で小一時間行ったMaesteg。人口2万人足らずの小さな町だ。



日本がラグビーワールドカップをホストした2019年。
アジア初、ティア1国以外で初の開催に、ここで帰省せずどうすると日本に帰った。
ブレイブブロッサムズの紅白ジャージを着てヒースロ

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不純な動機で図書館へ

不純な動機で図書館へ

バッグの真ん中でニヤリと笑うネコ。
ひとめぼれだった。

1889年ジョン・テニエルが描いたチェシャ猫のエコバッグ。

ルイス・キャロルは、一番最初「地下の国のアリス」という題でお気に入りの少女アリスのために手描きで挿絵つきの本を作った。
それが「不思議の国のアリス」として1865年に出版されるにあたり、挿絵をつけたのは当時漫画誌の有名イラストレーターだったジョン・テニエルだ。

今では、ディズニ

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ネイティブも「知らない」英文法

ネイティブも「知らない」英文法

ケビンは、何か面白いネタをみつけると、WhatsAppで転送してくる。
今日も、どこかの雑誌の記事の写真が送られてきた。



私の「ねえ、なんで?」を答えてくれるひとたちの層はかなり厚い。

イングランド人のケビン、ウェールズ人のトレーシー、スコットランド人のジェニー、そしてアイルランド人のヴィンセントで、この国で暮らすたいていの疑問が解決する。

加えて、フランス人のカリーン、カタルニア人の

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超人から人間へーイギリスすごいなと思うこと

超人から人間へーイギリスすごいなと思うこと

頼んでいた通販が、トラッキングつきのはずなのに輸送中に見失われたらしい。
お店のひとは、すぐに「最近デリバリーの会社を変えたんだけど、いくつかトラブルが続いてて。もしうちに返送されてきたら連絡するから、とりあえずは返金させて」とすぐに対応してくれた。

一点モノだったのに…と残念に思うけれど、さすがにもうそんなことくらいでは動揺しない。
日本だったら、と思いもしない。
甘いハネムーン期もガッカリの

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まずは歯よ、歯をみなさい

まずは歯よ、歯をみなさい

日本語教師をこころざしていたころ。
アメリカに日本語教師を派遣するというプログラムに参加した。

そのプログラムには事前研修があり、派遣先の州に行く前にシアトルでみっちり数週間鍛えられた。

クラスルームマネジメントや、指導教員と上手にペアをすすめていくコツ、異文化体験シュミレーションなどセッションがいくつもあった。
その研修の内容は、アメリカの学校で日本語を教えるときだけでなく、その後多国籍企業

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人生に一度くらい

人生に一度くらい

高校時代、先生たちはみんな、今振り返ってもかなり個性が際立ったひとたちばかりだった。
おそらく、逆に、彼らに言わせれば、かなり個性が際立った生徒ばかりだったというのだろうけれど。

逆立ちしたって文系なのに、附属に育ったがゆえに数学Ⅲまでが必修だった私。
あまりにも「なんで数学を勉強しなくちゃいけないのか」を質問しすぎたゆえに、さわやかに「みんなの邪魔にならんように黙っていなさい」と教室の中で、透

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いつも

いつも

また今回も、ううむと考えさせられた。

3か月ぶりに日本から帰ってきたら、毎週のようにいっていたイタリアンレストランが閉店していた。
正確には「厨房メンテナンスのためお休みします」という張り紙が貼られてひと気がなくなっていた。

家賃が高いロンドンでは、飲食店がこんな張り紙を出して、永遠に再開しないのはよくあることだ。
たいていの場合、未払い家賃をためてそのままドロンするから。

コロナ直後には似

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地に足をつける

地に足をつける

「また、お会いしましたね」

ブリティッシュ航空の羽田発ヒースロー行きの機内。
アメリカ英語でそういわれて、がんばって記憶をたぐる。
最近、アメリカ英語のひとと知り合うことなんてあったっけ?

うーむという私の表情から察したのだろう。
そのアメリカ人男性は、ヒントをくれた。

「いや、あの。ついさっき。ラウンジで」

ああ。なんのことはない、さっき出発前のラウンジで、冷蔵庫の中のお水を大きなビール

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シシテシカバネヒローモノナシ

シシテシカバネヒローモノナシ

真田広之の「ショーグン」のエミー賞受賞。
自主制作映画の「侍タイムスリッパー」のヒット。

どうやら日本では時代劇への注目が再びあつまっているようだ。
嬉しい限り。



今夏、日本に長期滞在したおかげでできたことがいくつかあった。

ひとつは、7月に東京の明治座で行われた「松平健芸能生活50周年記念公演」を観に行けたこと。

もうひとつは、滞在の最後にぎりぎり新宿ピカデリーで母とふたり、大ヒッ

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「空気」のパワー

「空気」のパワー

7月から9月末まで、15年ぶりに日本で仕事をしていた。
こちらから申し出て、日本オフィスのひとたちが、日本の思考の壁を破るお手伝いをしにいった。

私が覚えている日本は、「オンナノコはその給料で仕事してくれてればいいから」とか「担当は男性に戻してください」とか、そんな言葉を聞くことが多いところだった。
外資で働くようになっても、どこかで、「オンナの、しかも年下の上司か」とかそんな「空気」があるとこ

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山と山はであわない

山と山はであわない

少し、村上春樹を思い起させる。
第一印象は、それだった。

もちろん、印象であって、実際の世界の人に聞いてみたさんは、もっともっとお若い。そして世界を股にかけるビジネスマンさんである。



昔、スコットランドのブックフェスティバルで講演したときの村上春樹。
あんなにいろんなことを小説やエッセイに雄弁に書き綴っている職業作家だというのに、目の前の壇上にTシャツを着て座りマイクを握っている男性は、

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日本で財布を落とした話

日本で財布を落とした話

「いや、ぜったいにかばんの中に入ってるはずなんです」

初めて行った立ち呑みで、紅ショウガの天ぷらと焼き鳥数本をつまみに飲んだ月曜日。
お支払いをしようと思ったら、財布がなかった。

かばんのすべてをひっくり返し、それでもみつからない。
9時までの電話会議の後、私はすぐにオフィスをでた。
けれど、Yさんはまだ残って仕事するといっていた。そう思って電話をかけて、恐縮しながらデスクの周囲をみてもらった

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