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きみとは他人なのに〜小説「ポプラの秋」読書感想文〜

本を読んだりドラマや映画、舞台などを観たりしてものすごく感情移入をしてしまうことがある。
その作品たちにはだいたい共通点がある。
主人公の子供時代を描いているということだ。
例えばドラマ「トッケビ」、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」、宝塚歌劇「エリザベート」など。
子供時代から大人になるまでを描いた作品にふれていくと、心が親戚のおばちゃん状態になっていくからだと思う。
他人だし、創作なのに何なんだ、あの感情。

今回手にした「ポプラの秋」もそうだ。
主人公は無職だが看護師の資格を持つ千秋という女性。
ある日、千秋は子供の頃に住んだアパートの大家さんの訃報を聞く。
千秋はおばあさんのもとへ行く道中で子供の頃を振り返り始める。
父が亡くなったあと、小学生の千秋は母とともにコーポポプラに移り住んだ。
そこで、これといって特徴のないよくいる普通の人々と出会い、日々を重ねていく。
小説は大家であるおばあさんと千秋との交流を中心に描かれる。
二人は雑然とした部屋で過ごし、美味しくない味噌汁を飲む。

私はこのおばあさんが家事もそこそこのなんてことない人であるところに惹かれた。
千秋との関係はべったりではなく、少しそっけない。
物語にありがちなキャラではないところに親しみを感じた。
千秋も普通の子供である。
よく少年少女小説に出てくるエキセントリックな子供とはかけ離れている。
「この子、なんかいいな。友達になりたいな」
読みながらふと思ってしまうくらいバランス感覚が普通なのである。
強烈な個性が出てくるよりも普通の市井の人々を扱って読ませるとはなかなか作者は腕のある人だと思った。
設定の巧みさも気になるが、なんと言っても文章が本当にうまい。
ラストあたりでの話の詰め方は無理矢理感が否めなかったものの、気になるのはそれくらい。
今回、この本を読むにいたったのは、noteのフォロワーさんに教えてもらったから。

《ありがとうございました。面白かったです。》

この本の作者である湯本香樹実さんの作品をほかにも読んでみようと思っている。

この作品は映画化されているよう。
千秋役は本田望結ちゃん、おばあさん役は中村玉緒さん。
おかげで本田望結ちゃんのことが、他人ながら何だか心配に(笑)!





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