この素晴らしい世界に怨恨を。

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    小説の読書感想文です。

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    虚無ってる度合いが強めのやつです。

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本当の自分

本当の自分が分からないなんて、思春期の少年少女が悩むものだ。青年が悩むものではない。 場面場面での自分の総体が自分で、場面場面での個別的な自分もまた自分なのだ。 そこまではいい。 問題は、自分を定めるものは何かということだ。輪郭は何となくわかる。帰納的に考えればいい。 だが、演繹的に考えるための軸がわからない。夢や希望、信念、大義がないと言い換えてもいい。 何のために生まれて何のために生きるのか、それがわからないのだ。顔がアンパンの化け物にさえわかるのに。いや、化け

    • 他責

      他責をするやつは嫌いだ。そう言いながら他責をすることもある。しかしそんな自分を嫌いとはいえない。仕方ないことなのだ。 自分に甘いと言われそうだが、普段そう言われることはないので、変な気がしないでもない。しかし文章で表現すると自分に甘いやつになる。 いっそのこと他責を認めるのも一つかもしれない。一般的に。 でもそうはしたくない。自分のミスを人に押しつけるようなやつは好きにはなれない。言葉を選ばなければ、そいつはただのクズだ。関わり合いになりたくない。 ただ、自分以外の者の

      • 願うこと

        死ねと願うことの何が悪いのだろうか。 誰も悪いと言ってきているわけじゃない。ただ自分の中の倫理規範が立ちはだかっているだけだ。何かが悪い気がするのだ。 悪い気はするが、しかし願わずにはいられない。精神が未熟なのだろうか。自分から見て害が益を上回っている場合、死んでほしいと願ってしまう。 害をなくすのに一番わかりやすいものだからだ。 お願いだから、迷惑をかけないでくれ。 お前も迷惑をかけているのだからお互い様だ。図々しい。我慢しろ。 そんな説教が毎回湧き出てくるが、何

        • 学生、芋焼酎を割る、残り汁をすする

          お土産に芋焼酎を買ったんだ。自分用に、誰かと飲んでもいいなと思って。 新幹線で地元に着くまでは無事だったんだ。そこの乗り換えで、うじゃうじゃとゴミのようにいるホモ・サピエンスの群れに気を遣い、リュックを前にしようと色々しているうちに、袋を落としてしまった。 そこそこ大きい音がしたけど、箱入りだし、耐えてると思ってた。 なのに!なのにだ!! あぁ、その後しばらくして、袋の中から芋の甘い香りがするじゃないか。何ていい匂いだ。まだあの匂いが鼻から離れない。ふわりと広がる甘い

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        記事

          書く

          書きたい気持ちだけ先行する。何か書きたいことがあるわけではないのに。 いや、性的な趣味とかなら書いてもいいかとは思うが、書いたらおそらく大事な何かを失って、代わりに蔑んだ目と近寄るなオーラを向けられる義務をプレゼントされる気がするので、それを書くのは遠慮したい。 有料ならいいかとも考えたが、誰にも読まれない文章を書くのはそれはそれで寂しい気がする。しかも、どうせ誰にも読まれないからと振り切ってひゃっほーすると、読まれてたときに地獄を見る。やはり遠慮しておこう。 何の話か。

          [読書感想文]アンディ・ウィアー(小野田和子 訳)『プロジェクト・ヘイル・メアリー上、下』(早川書房、2021年)

          勧められたので読んだ。SFものだ。 帯などで主人公が宇宙にいるらしいことはわかっていた。しかしそれ以外の情報はなしで読んだ。自分が興味を持つかもわからないものを読むのが、勧められた本を読むときの醍醐味だ。ハズレのときは地獄だが、まあアタリの部類だった。 翻訳ものは手を出すのが怖い。ぎこちない訳で読み味が悪いことがあるからだ。しかしこれは読みやすく、内容に入っていきやすかった。 主人公がよくわからない場所のよくわからない場所で目を覚ますところから物語は始まる。自分の名前も

          [読書感想文]アンディ・ウィアー(小野田和子 訳)『プロジェクト・ヘイル・メアリー上、下』(早川書房、2021年)

          におい

          部屋にバターのにおいとウイスキーのにおいが留まっている。 原因はわかっている。バターのスナックをツマミにウイスキーを飲んだことだ。バターのにおいがここまで濃いとは思わなかった。 やや不快だ。ただ、一人ならばそれだけだ。誰に文句を言われるでもない。静かな分、冷静な感想が出てくる。やや不快だ。 菓子を食べ、ウイスキーを飲みながら、小説を読むというよくわからないことをしていたが、エアコンと空気清浄機の音をBGMに、悪くはない時間だった。 今日は人と会っていた。人と会わないと

          かいわれ大根

          たまには、思ってもないことを書いてみよう。何も考えずに書いてみよう。そうすると、何かが出てくるかもしれない。 人生はかいわれ大根だ。あのスーパーで見るやつだ。育てている人もいるかもしれないが。 あの一回可食部を食べても、根を水につけて放置してれば生えてくるやつだ。 ニョキニョキ生えてくる。まるで人生のようだろう。折角育った部分が刈り取られても、新たに育っていくしかないのだ。さらにいえば、根だけは変えられない。そこだけはどうしようもない。生まれ持った身体、環境でやっていくし

          かいわれ大根

          [読書感想文]万城目学『八月の御所グラウンド』(文藝春秋、2023年)

          勧められたので手に取った。 良くも悪くも学生が味わう京都の雰囲気だったように思う。曖昧な感想なのは、自分が京都の大学に行きながらもろくに京都で過ごしていないせいだ。 軽くさっと程よい充実感のある小説だった。 内容に入ろう。 本書には「十二月の都大路上下ル(カケル)」と、「八月の御所グラウンド」の2編が収められている。前者が60頁ほど、後者が140頁ほどだ。 前者の主人公は、駅伝をしている女子高生(1年生)で、京都で行われる女子全国高校駅伝の補欠メンバーだ。高校は、優勝

          [読書感想文]万城目学『八月の御所グラウンド』(文藝春秋、2023年)

          なんとはなしに筆を執る。今は執るのは筆ではなく液晶画面だが。 筆の方が身体が落ち着くのは確かだ。しかも筆ならば自分しか読むことがない。それに従って書く内容も変わるが。おそらく筆を執ったら疲労感や厭世観をひたすら書き綴ることになるだろう。 誰も見ないのなら、せき止めるものは何も無い。 文字を綴るうちに少し落ち着く。得体のしれないものに形が与えられていく。何なら排出されていく。頭の整理だ。 書くことは独白だ。相手方はいない。一人で虚空に向かう。そこに正解はない。間違いもない

          廃棄物

          私の世界は廃棄物だ。 目に見えるものはすべて汚れている。 耳に聞こえるものはすべて騒音だ。 燃やそうか。燃えてくれるか。黒い煙を上げて、周囲を暗闇に包んでくれるか。 ごうごうと燃える火の中で、叫び声を上げながら一世一代のダンスを踊ろう。焼ける喉で旋律のない歌を歌おう。永遠に続く火傷の激痛の中、世を滅ぼす神か悪魔に身を捧げよう。身体の水分が蒸発する音を聞きながら、遥かな世界を夢想しよう。 廃棄物は燃やすべきだ。 邪魔な体積を縮減できる。 火の燃料となりエネルギーを

          悲鳴

          悲鳴。悲鳴だ。悲しく泣き叫ぶのだ。誰かに届くように。ここにいると気づいてもらえるように。 悲しく。悲しく。悲しく。鳴いて、鳴いて、泣き喚いて。 壊れたロボットのように、一つのアルゴリズムを繰り返す。 悲しんで→鳴いて→悲しんで→泣いて→悲しんで→鳴いて→泣いて→ないて。 期待はない。誰も来ない。そうなるようにしたのは自分だ。 もう無理だと。もう無理だと。もう無理だと。 心の中だけで叫び続ける。いっその殺してくれと。そうでなければ殺させてくれと。 悲痛に。悲鳴を。心だけで

          応援

          応援を真剣にしたことがあっただろうか。 記憶を探る。あった気もする。体育祭のチームの走りを応援した。水泳のリレーで仲間を応援した。 確かに熱をもって応援した。 だけどなぜだろう。応援したことがない気がする。いや、逆か。応援で励まされた記憶がないのだ。 応援は励ますためにやるものだ。自己満足のためかもしれないが、名目上は励ますためだ。 奮起を願って、健闘を祈って、前に進む力を与えられるよう必死に何かを伝えるものが応援だ。 受け取ったことは多分ある。応えたいと思ったことも

          君の声

          私は君と 君は言う 君はバカだ 僕は言う 歩く道 月はない 歩幅は小さく 響く息 何もない 君の声だけ 暖かい声 優しい声 深い声 静かに叫ぶ 君の声 受け止めきれない 僕の心 やっと出た声 「バカだ」 私は君と 私は言う 君はバカだ 君は言う 歩く道 星が光る 足はゆっくり 響く息 満ち足りる 君の声だけ 小さい歩幅 射貫く瞳 浅い息 心で叫ぶ 君と 動揺している 君の心 もう響いた声 「バカだ」 暗く黒く空がのしかかっている 重く深く僕は沈み込んでいく 抜

          全部滅びてしまえ

          滅びろ。 消えろ。 今すぐに。 死ね。 去れ。 速やかに。 幼稚な言葉でも厭わずに願う。ぜんぶ消えてなくなってしまえ。 願いを叶える方法は知っている。この首を切ればいい。手首でもいい。ハラキリでもいい。認識主体が消えれば、その主観上は全て消えてくれるはずだ。 だが何故自分が数秒でも苦しまなければならない。苦しめてきた方が消えるべきだろう。でなければ衡平じゃない。 苦しんだ者には安らぎを。苦しめた者には絶望を。 これが当然の理だと思いたい。 そう思わなければ壊れてし

          全部滅びてしまえ

          壊れていたのは

          壊れていたのは世界だ。 自分ではない。自分ではない。 この世界こそが悪い。僕は悪くない。 そういえば、めだかボックスという漫画に、「僕は悪くない。」が決め台詞の格好いい最弱(最強)キャラがいたな。 他責は素晴らしい。どこまでいっても自分は悪くならないのだから。他を憎んでいればそれで済む。内側をみないで済む。醜さと向き合わなくて済む。 難点は生産性が皆無なことだ。意味がない。むしろ厄介なやつとして扱われるので悪影響がある。 それでも、時には他責しないとやってられない。

          壊れていたのは