大雨
雨が降ればいいのに。大雨が。人を寄せ付けぬ大雨が。
雨が降れば有象無象も消えてくれるだろう。騒音と目障りな笑顔を浮かべる影がすべて黒く塗りつぶされるだろう。
黒いアスファルトの上に雨水だけが打たれ、溜まり、流れ続ける。その光景だけで十分だ。他は何もいらない。
下を向いて視界を制限する。無駄な音は雨音が隠してくれる。守ってくれる。
人の幸福なんて、自分が辛いときや疲れているときには毒薬だ。感じるだけで吐き気がする。それを向けられることなんて想像もしたくない。
思わず何かをぶつけてしまいそうだ。
自分が間違っていることなんて分かっている。それでも周りを否定しないとやっていけない。お前らが悪いのだと叫び続けなければならない。
そうしないと何かが崩れてしまう。崩れたものはもとに戻せない。
理性なんて意味のないもので全てを覆い隠しながら、反撃の機会だけをうかがっている。反撃でなければ正当化されない。先制攻撃だと言い訳できなくなる。
やはり雨だ。雨しかない。雨でこの黒ぐろとしたものを洗い流してもらわなければ。
心からの雨乞いを。醜く、無様に、希わなければ。