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JW713 速く来た女
【景行征西編】エピソード84 速く来た女
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦88年、皇紀748年(景行天皇18)8月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊の一行は、筑紫(今の九州)の巡幸(天皇が各地を巡ること)を終え、菟狭(今の大分県宇佐市周辺)に入った。
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そして、神代の直の神大野(以下、ワオン)と、ゲスト出演の久米の直の七掬脛(以下、ナッカ)は、まだ従っていない土蜘蛛の浮穴沫媛(以下、ケナー)を討つため、彼女の邑を攻めたのであった。
ケナー「いざいざ、勝負! 勝負!」
ワオン「覚悟ぉぉ!」
ザシュ!
ケナー「う・・・うちが、出演した意味って・・・グフッ。」
ナッカ「やったぁ! 討ち取ったっすよ!」
ワオン「このことから、邑の名は、浮穴の郷と呼ばれるようになったのじゃ。」
ナッカ「ふむふむ・・・。『肥前国風土記』に、彼杵郡の地名として、紹介されてるみたいっすね。」
ワオン「左様。」
ナッカ「二千年後の地名で言うと、何処になるんすか?」
ワオン「長崎県諫早市の有喜町という説がありまするぞ。」
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ナッカ「ロマンっすね。」
ワオン「左様ですな。」
ナッカ「それで? これで終わりっすか?」
ワオン「まだまだ。次は、速来の邑に参りまするぞ。」
ナッカ「二千年後の何処っすか?」
ワオン「長崎県佐世保市の早岐と伝わっておりまする。」
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するとそこに、一人の女人がやって来た。
ナッカ「な・・・何者っすか?!」
女「私は、速来津媛。速来の邑の土蜘蛛よ。『はや』と呼んでよね。」
ワオン「して『はや』よ。我らに降るか?」
はや「当たり前じゃない。早く帰順したから、速来の邑と呼ばれるようになったのよ。」
ワオン「そうであったか。」
はや「ところで、とっておきの情報が有るんだけど・・・。」
ナッカ「とっておき? 何すか?」
はや「私には、弟がいるの。健津三間と呼ばれてるんだけど、これって、二千年後の言い方にすると、健の三間って意味になるのよ。」
ワオン「たしか・・・我らの御世では『の』のことを『津』と申すのであったな?」
はや「その通りよ。ちなみに、健っていうのは、弟が住んでる邑の名前よ。」
ナッカ「健の邑ってことっすね?」
はや「そうよ。健の邑に住んでる三間だから、健津三間と呼ばれてるのよ。」
ワオン「して、それが、どうしたというのじゃ?」
はや「弟の三間は、『石上の神の木蓮子玉』という美しい玉を持ってるんだけど、人に見せないのよね。」
ナッカ「木蓮子玉って、何すか?」
はや「黒真珠のことじゃないかしら。」
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ワオン「今いち、よくわからぬ。言いたいことが有るなら、はっきりと申せ。何を求めておるのじゃ?」
はや「私も、わからないのよ。」
ワオン・ナッカ「は?」×2
はや「弟が持っている玉について、いきなり語り出したって『肥前国風土記』に書かれてるんだから、仕方ないでしょ。」
ナッカ「とにかく、その玉を手に入れろってことっすか?」
はや「きっと、玉を差し出す代わりに、大王に逆らっている弟を許して欲しいって、言いたかったんだと思うわ。」
ワオン「されど、弟御は、誰にも玉を見せぬのであろう? 差し出すとは思えぬが・・・。」
はや「そこを何とかするのが、アンタの務めでしょ?」
ワオン「そ・・・そうなるのか?」
突如、始まったミッション。
一体、どうなってしまうのか?
次回につづく