ＪＷ６１６　木国で祀れ

【景行即位編】エピソード5　木国で祀れ

第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのうの御世みよ。

西暦73年、皇紀こうき733年（景行天皇3）2月1日。

ここは、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみや。

地図（纏向珠城宮）

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと（以下、シロ）は、大連おおむらじや大夫たいふたちに対し、高らかに宣言した。　

人物一覧表（大連、大夫たち）

シロ「木国き・のくにに御幸みゆきしようと思う。」　

ちね「御幸みゆき？　行幸ぎょうこう（天皇が外出すること）するんでっか？」　

くにお「木国き・のくにとは、二千年後の和歌山県にござりまするな？」　

地図（木国）

シロ「うむ。その地にて、天津神あまつかみ、国津神くにつかみを祀まつろうと思おもうておるのじゃ。」　

カーケ「なにゆえ、そのようなことを考えたのかね？」　

シロ「そ・・・それは、エピソード606にて登場した、小玉おたまの故郷ふるさとであるし・・・『日本書紀にほんしょき』に書かれておるし・・・。」　

武日たけひ「要ようするに、ロマンやな？」　

シロ「左様さようにござる。では『オーカ』よ。御幸みゆきしても良いか、占うらなって参まいれ。」　

オーカ「かしこまりました。」　

こうして、占われたのであったが、結果は、不吉よろしからずなのであった。　

オーカ「御幸みゆきは、控ひかえるべきにあらしゃいます。」　

シロ「神意しんいとあらば、致いたし方かたあるまい・・・。」　

カーケ「他の者を遣つかわしては、どうかね？」　

ちね「なるほど・・・。御幸みゆきが『あかんダメ』言われただけで、行ったら『あかん』とは、言われてへんのやな。」　

シロ「よし。では、他の者を遣わそうぞ。屋主忍男雄心やぬしおしおたけおごころこと『ヤヌシ』よ。」　

ヤヌシ「エピソード468以来の登場なり。嬉うれしいなり。」　

系図（ヤヌシ）

シロ「我われに代かわりて、神々を祀って参れ。」　

ヤヌシ「承知しょうち仕つかまつったなり。」　

こうして「ヤヌシ」は、木国き・のくにに向かった。

地図（ヤヌシ、木国へ）

そして、木国造き・のくに・のみやつこの菟道彦うぢひこ（以下、うぢお）から歓迎かんげいされたのであった。　

うぢお「ようこそ、おいでくださいました。エピソード429以来の登場にござりまするぞ。」　

ヤヌシ「いつの間にか、代替わりしていて、ビックリしたなり。」　

うぢお「して、こちらは、妹の影媛かげひめにござる。」　

影媛かげひめ「お初はつにお目めにかかりまする。」　

系図（うぢお、影媛）

ヤヌシ「とっても可愛かわいくて、ビックリしたなり！」　

うぢお「と・・・ところで、何処いずこで、神事かむわざをおこなわれまするのか？」　

ヤヌシ「阿備あびの柏原かしわばらなり！」　

影媛かげひめ「二千年後の和歌山県和歌山市わかやましの相坂そうざかや、松原まつばらの辺あたりと言われておりまする。」　

地図（和歌山市相坂）

地図（和歌山市松原）

地図（阿備の柏原）

ヤヌシ「飛とび地ちが半端はんぱないけど、そういうことなり！　では、神事かむわざを始めるなり！」　

そして、祭祀さいしは、無事に済すんだのであったが・・・。　

うぢお「えっ？　帰らぬと？！」　

ヤヌシ「ここが気に入ったなり。いろんな意味で、気に入ったなり！」　

うぢお「さ・・・されど、大王おおきみに言挙ことあげせずとも、よろしいのですか？」　

ヤヌシ「言挙ことあげは、使いを送って、済すませるなり！」　

うぢお「そんなことで、よろしいのでござろうか・・・。」　

影媛かげひめ「兄上・・・。よろしいでは、ありませぬか。『ヤヌシ』様が、この地を気に入ってくださったのです。これほど、喜よろこばしいことがございましょうか？」　

うぢお「よ・・・喜ばしいと捉とらえるべきなのか？」　

ヤヌシ「そういうことなり！　喜びに満みち溢あふれているなり！」　

こうして「ヤヌシ」は、木国き・のくにに留とどまったのであった。

さて、その年のこと・・・。　

武日たけひ「大王おおきみ！　恐おそろしいことが起きてしまったじ！」　

シロ「ん？　如何いかがした？」　

武日たけひ「ふ・・・再ふたたび、秋津洲あきつしまの者が、新羅しらぎに攻せめ込こんだみたいなんや！」　

シロ「何なに？！　エピソード602の時のように、新羅しらぎの民たみから、様々さまざまな物を奪うばったのか？」　

武日たけひ「そ・・・それが・・・。」　

カーケ「どうしたのかね？」　

武日たけひ「新羅しらぎの臣おみが、襲おそわれて、死んだみたいなんや！」　

くにお「そ・・・それは、真まことか？」　

武日たけひ「嘘うそを言っても、仕方しかたないっちゃが。」　

シロ「つ・・・詳つまびらかに、申もうせ。」　

武日たけひ「新羅しらぎの木出島きでじまで、秋津洲あきつしまの者たちが、様々な物を奪ったんやが・・・。」　

オーカ「木出島きでじま？」　

武日たけひ「慶尚南道けいしょうなんどう蔚山広域市うるさんこういきしの目島もくとうではないか・・・という説が有るみたいっちゃが。向こう国の島なんで、木出島ぼくしゅつとうと読むのかもしれないっちゃ。」　

地図（木出島→慶尚南道蔚山広域市目島）

シロ「読み方は、どちらでも良い。して、そこに、新羅しらぎの臣おみが、居合いあわせたと？」　

武日たけひ「いえ。鎮しずめるために、新羅しらぎの王が、差さし向むけたみたいやじ。」　

カーケ「そして、戦いくさになったのかね？」　

武日たけひ「じゃがそうです。そんげなコツで、伊伐飡いばつさんの羽烏ううと申もうす者ものが、討死うちじにしたみたいなんや。」　

シロ「伊伐飡いばつさんが氏うじで、羽烏ううが名なか？」　

武日たけひ「伊伐飡いばつさんは、我わが国くにの大連おおむらじとか、大夫たいふみたいなモンやじ。」　

オーカ「一等官という意味にあらしゃいます。」　

シロ「そ・・・それほどまでの位くらいの者ものが、討うたれたと？！」　

衝撃の海外ニュースなのであった。　

つづく