JW683 不知火
【景行征西編】エピソード54 不知火
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦88年、皇紀748年(景行天皇18)5月1日。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、還幸(天皇が帰宅すること)と銘打って、筑紫(今の九州)の巡幸(天皇が各地を巡ること)をおこなっていた。
ところが、船路の途次、夜を迎えてしまい、暗闇の中、一行は、途方に暮れる。
そんな時、遠くに火の光が見えたことで、ようやく岸に辿り着いたのであったが・・・。
地元民(に)「こぎゃん夜に、何しとうと?」
おやた「海の上で、迷っておったのじゃ。」
地元民(ほ)「ばばばっ。頭、おかしかね?」
いっくん「しゃぁないやろ!? 思ったより、暗なるのが、早かったんや。」
シロ「して、地元の者たちよ。ここは、何という邑なのじゃ?」
地元民(へ)「ここは、八代県の豊邑ばい。」
シロ「二千年後の地名で申すと、何処になるのじゃ?」
地元民(に)「熊本県宇城市の松橋町豊福と伝わっとるばい。」
夏花「されど『肥前国風土記』では、火の国の八代郡の火邑と語っておるぞ。」
シロ「そちらであれば、二千年後の地名では、どうなるのじゃ?」
夏花「そちらは、熊本県氷川町の宮原となりまする。」
シロ「なにゆえ、異なるのじゃ?」
地元民(ほ)「どぎゃんも、こぎゃんもなか。これが、ロマンたい。」
リトル(7)「出たっ。ロマン!」
シロ「し・・・して、火は、誰の火なのじゃ?」
地元民(へ)「知らん。」
もち「ん? どういうことっちゃ?」
地元民(に)「オルたちも、わからんとや。人の燃やす火では無かことだけは、わかっとるばい。」
カヤ「人の燃やす火ではないのですか?」
地元民(に)「そうたい。」
シロ「神々の力であるということか?」
地元民(ほ)「オルたちに聞かれても、困るばい。」
百足「とにもかくにも、火の持ち主を見つけることは出来ぬわけじゃな・・・。」
シロ「では、これよりは、この国を火の国と呼ぶべし!」
野見「ちなみに、この現象は『不知火』と呼ばれまする。」
えっさん「八朔の未明に起こる現象にあらしゃいます。」
リトル(7)「はっさく?」
真白「ワンワワン!」
タケ「ふむ・・・。8月1日のことじゃ・・・と申しておるぞ。」
ルフィ「キキッキキッ!」
タケ「ふむ・・・。旧暦の8月1日のことゆえ、気を付けよ・・・と申しておる。」
小左「ともかく、八朔の未明すぎ、八代市の鏡町沖合の海上に、数個の火が現れ、やがて無数の火となって見えるのでござる。」
舟木「これは、蜃気楼の一つとして、考えられておりまする。」
リトル(7)「しんきろう?」
ワオン「大潮の夜、陸となった干潟の上で、日中温められた空気と、夜、流れ込む冷たい空気が層を成すことで、起きるのでござる。」
シロ「ん? よくわからぬ。」
モロキ「ですから、温かい空気と冷たい空気が重なり合い、邑の明かりや漁火が屈折することで、起きるのでござる。」
いっくん「もうちょっと、わかりやすく言うと?」
舟木「とにかく、海の上に、火が浮かんでいるように見えまするが、そこに、火など無いのです。」
シロ「無いものが、見えておると?」
ワオン「鏡に映ったものは、そこに有るようで、有りませぬ。手を伸ばしても、掴むことは出来ぬでしょう?」
シロ「海の上に大きな鏡が、できておるということか?」
モロキ「そんな感じですな。」
シロ「二千年後の読者は、わかってくれたのであろうか・・・。」
たっちゃん「読者の方が、よくわかっておるのではないか?」
地元民(へ)「ところが、二千年後は、よく見えなくなっとるみたいで・・・。」
シロ「どういうことじゃ?」
地元民(に)「何でも、干拓による陸化が進んだことで、見える場所が、限られとるんだとか・・・。」
リトル(7)「二千年後は、何処なら、見えるのだ?」
地元民(ほ)「熊本県宇城市の永尾剱神社が、代表的観望地点として知られとるばい。」
もち「鎮座地は、熊本県宇城市不知火町の永尾やじ。」
シロ「そうか・・・。では、不知火の解説も済んだゆえ、火国造を任命しようぞ。」
タケ「誰を任じるのじゃ?」
シロ「左様ですな・・・。では、ここは、作者オリジナル設定ということで、地元民たちで決めるが良い。」
地元民(に)(ほ)(へ)「何言うとうと?」×3
何を言っているのであろうか・・・。
次回につづく
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