JW668 讒奏
【景行征西編】エピソード39 讒奏
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦84年、皇紀744年(景行天皇14)。
ここは、東北地方。
蝦夷の討伐に向かった、五十瓊敷入彦(以下、ニッシー)と、副将の陸奥守豊益(以下、トヨマ)は、無事に、これを平定していた。
ニッシー「ちょっと! どういうこと!? 華々しい戦いの場面とか、激しい頭脳戦とか、そういうのは無いわけ?!」
トヨマ「な・・・無いようですな。」
ニッシー「だ・・・大活躍できると思ってたのに・・・(´;ω;`)ウッ…。」
トヨマ「仕方ありませぬ。されど、つつがなく、追い払うことが出来たではありませぬか。それで、良いとせねば・・・。」
ニッシー「わかってるよ。わかってるけど・・・。」
トヨマ「皇子は、良いではありませぬか。具体的な描写は無くとも、大いに武功を挙げたと書かれておるのです。我については、何の言及もなく・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ニッシー「な・・・泣くなよ。こっちが泣きたいんだからさぁ。」
トヨマ「も・・・申し訳ありませぬ。此度の武功で、領地が増えると、見込んでおりましたゆえ・・・。」
ニッシー「まあ、そんな日もあるさ。」
トヨマ「そ・・・そうですな・・・。」
ニッシー「とにかく、国中(今の奈良盆地)に帰ろう。」
トヨマ「ははっ。」
こうして、二人は帰ることとなったのであるが、その道中にて・・・。
家来「『トヨマ』様! 家来の『ザンソー』にござりまする。」
トヨマ「ん? 汝は、オリジナル設定のキャラではないか? このような場面、伝承には無いぞ?」
ザンソー「わかっておりまする。されど、合いの手が要り様と思い・・・。」
トヨマ「作者の陰謀か?」
ザンソー「御意。して、このままで良いのですか?」
トヨマ「このままで良いとは?」
ザンソー「このまま帰れば、手柄は全て『ニッシー』様のモノですぞ?」
トヨマ「仕方あるまい。」
ザンソー「横取りすれば、よろしいではありませぬか。」
トヨマ「よ・・・横取りじゃと?! 如何にして、手柄を横取りすると申すのじゃ?」
ザンソー「皇子が謀反を企んでおると、讒奏すれば良いのです。」
トヨマ「讒奏? 偽りの報せを奏上する・・・という意味じゃな?」
ザンソー「左様。」
トヨマ「それゆえ、汝の名が『ザンソー』なのも、よくわかった。されど、大王が信じるであろうか?」
ザンソー「容易いことにござる。」
トヨマ「なにゆえじゃ?」
ザンソー「伝承に従うのみ・・・とか言うはずにござる。」
トヨマ「それは、ほとんど『フライング』ではないか?」
ザンソー「フライン?」
トヨマ「と・・・とにかく、讒奏がこと、汝に任せた。」
ザンソー「御意!」
こうして「ザンソー」は、いち早く、国中に戻った。
ここは、纏向日代宮。
「シロ」の兄弟たちと、大連や側近たちが「ザンソー」の報告を聞いていた。
すなわち、誉津別(以下、ホームズ)。
大中姫(以下、ダッコ)。
稚城瓊入彦(以下、カキン)。
そして、大連の物部の連の十千根(以下、ちね)。
側近の阿倍の臣の武渟川別(以下、カーケ)。
和珥の臣の彦国葺(以下、くにお)。
中臣の連の大鹿島(以下、オーカ)。
大伴の連の武日である。
ザンソー「御目通り叶い、恐悦至極に存じ申し上げ奉りまする。」
ちね「ほんで、何やねん?」
ザンソー「実は・・・我が主より、急ぎの報せがございまして・・・。」
ホームズ「どういう・・・ことじゃ?」
ザンソー「『ニッシー』様に謀反の疑い有りと・・・。」
ダッコ「えっ?! そんなこと、有るわけないでしょ!」
カキン「そうじゃ! 『ニッシー』兄上に限って、そのようなこと、有り得ぬっ。」
カーケ「二人とも落ち着くんだぜ。こういうことは、最後まで聞くものだぜ。」
ザンソー「蝦夷の討伐は、つつがなく終わったのですが、武士を従えた『ニッシー』様は、この勢いに乗って、大王になろうと・・・。」
くにお「まさか・・・あの『ニッシー』様が?」
オーカ「作者の妄想ではあらしゃいませんか?」
ザンソー「お疑いになられまするか? 謀反は、真にござりまするぞ!」
武日「こうなったら、大王に伝えるしかないじ。」
ホームズ「う・・・うむ。では・・・『ザンソー』よ。筑紫(今の九州)まで・・・赴くように・・・。」
ザンソー「かしこまりもうした。」
「トヨマ」の謀事は、どうなるのであろうか?
次回につづく
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