JW605 金印が来た
【垂仁経綸編】エピソード27 金印が来た
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
西暦52年、皇紀712年(垂仁天皇81)2月1日。
ここは、纏向珠城宮。
物部の連の大新河(以下、ニック)が引退した。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)は、新たな大連について、尋ねるのであった。
ニック「これにて引退やで。」
イク「次の大連は、どうするの? 息子の大母隅こと『ロス』になるの?」
ニック「いや、ここは、弟の十千根こと『ちね』に譲ろうと思うてます。」
イク「えっ? そうなっちゃうの?」
ニック「実は『ロス』も、今回で引退なんですわ。」
イク「そうなの?」
そこに「ロス」と「ちね」がやって来た。
ロス「残念やけど、そういうことになりました。」
ちね「兄さん、『ロス』・・・。あとは、わてに任せてや。」
ロス「せやけど、ただでは、転びまへんよ。息子の多遅摩こと『タジ』を紹介しますぅ。」
タジ「お初にお目にかかりますぅ。僕が、『タジ』やで。」
イク「よろしくね。」
ニック「ほな、『ちね』・・・。大連のこと、頼むでぇ。」
ちね「任せてください。」
ニック「『タジ』も気張るんやで。」
タジ「気張らせてもらいますよ。」
するとそこに、尾張の連の弟彦(以下、いろりん)がやって来た。
いろりん「大王。我も、引退だがや。」
イク「えっ? そうなっちゃうの?」
いろりん「仕方ないがや。もう歳だで。では、息子の淡夜別を紹介します。『アワヤ』と呼んでちょう。」
アワヤ「お初にお目にかかるがや。我が『アワヤ』だがや。」
イク「よろしくね。」
タジ「『アワヤ』! 一緒に、気張っていこな!」
こうして、世代交代と大連の代替わりが、おこなわれたのであった。
そして、五年の歳月が流れた。
すなわち、西暦57年、皇紀717年(垂仁天皇86)のある日・・・。
「イク」の元に、大伴の連の武日がやって来た。
武日「大王! 驚くべきことが、起きたっちゃが!」
イク「どうしたの? そんなに、慌てて・・・。」
武日「奴国が、漢の国に、遣いを送ったんや!」
ちね「奴国? 何処の国やねん?」
武日「筑紫(今の九州)の国やじ。」
イク「筑紫? ヤマトに与していない国だね?」
武日「じゃが。『記紀』において、これまで登場した、筑紫の国は、北から、崗、菟狭、阿蘇、高千穂の四か国だけっちゃ。やかい、どう考えても、ヤマトに与してない国やじ。」
イク「それで・・・奴国っていうのは、二千年後の地名で言うと、どのへんになるの?」
武日「福岡平野に有った国みたいやじ。分かりやすく言えば、福岡県福岡市の辺りっちゃが。」
イク「でも、それが、どうしたっていうの?」
武日「『後漢書』という、大陸の歴史書によると、奴国の王は、皇帝の劉秀から、金印を授かったみたいなんや。」
ちね「金印? 金で、出来てんのか?」
武日「当たり前っちゃが!」
イク「ちょっと羨ましい・・・。」
武日「そいよりも、金印に刻まれた文字が、驚きなんや。」
ちね「何て書いてるんや?」
武日「漢の委の奴の国王・・・と書かれちょるみたいなんや。」
イク「それって、奴国が、漢の国に服属したってことだね?」
ちね「奴国に、手ぇ出したら、漢の国が出てくるっちゅうことか・・・。」
武日「そう考えても、良かち思う・・・。」
ちね「せやけど、委って、何や?」
武日「聞いて驚くが、いいじ。委とは、秋津洲のことやじ! 『倭』とも書くみたいっちゃ。」
イク「秋津洲じゃなくて、倭になっちゃうの?」
武日「どうも、そうみたいやじ。」
ちね「倭? どこをどうやったら、秋津洲が、倭になるんや?」
武日「そんげなコツ、『おい』に聞かれても、答えられないっちゃが。」
イク「とにかく、大陸の人たちは、僕たちのことを『倭人』と呼んでるんだね?」
武日「じゃが。」
ちね「せやけど、困ったなぁ。奴国の後ろに、漢の国が居るんやろ? 下手なこと、出来へんで?」
イク「奴国は、ヤマトを指すって説は無いの? だったら、金印が手に入るんだけど・・・。」
武日「そんげな説も有るみたいやが、ロマンとしか、言えないっちゃ。」
イク「結局、ロマンで片付いちゃうんだね・・・(;^_^A」
大陸との初めての通交記事なのであった。
つづく
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