JW620 纏向日代宮
【景行即位編】エピソード9 纏向日代宮
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦74年、皇紀734年(景行天皇4)11月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)は、三野国(現在の岐阜県南部)から還幸(天皇が外出から戻ること)していた。
付き従うのは、大連の物部の連の十千根(以下、ちね)。
妃の伊那毘若郎女(以下、イナビー)と、二人の間に産まれた、彦人大兄王(以下、ひこにゃん)。
そして、今回の行幸(天皇が外出すること)で、新たに妃となった、八坂入媛(以下、やぁちゃん)である。
シロ「前回は、弟媛のことで、悲しい心持ちとなってしもうたな・・・。」
やぁちゃん「もう・・・それについては・・・(´;ω;`)ウッ…。」
イナビー「大王? なにゆえ『やぁちゃん』を泣かせるようなことを仰るのですか?」
ひこにゃん「あう! ああ!」
イナビー「『ひこにゃん』も怒っておりますよ。」
シロ「す・・・すまぬ。」
ちね「せやけど、ええんですか?」
シロ「ん? 何がじゃ?」
ちね「台本には、続きが有るんでっせ。」
イナビー「続きとは?」
ちね「神骨の娘も、妃にしようとしたとか、なんとか・・・。」
シロ「それについては、此度の御幸では、取り上げぬことにした。」
ちね「えっ?」
シロ「その記事に出てくる、大碓皇子なる人物・・・。我の子なのじゃ。」
イナビー「大碓? そんな子、いませんけど?」
シロ「そうなのじゃ。まだ、産まれておらぬのじゃ。それゆえ、大連が申した記事は、景行天皇4年のことではなく、景行天皇40年のことであると考えておる。」
ちね「四十年と書くべきところを、四年と、書き間違えてもうたっちゅうことですか?」
シロ「そう考えておる。」
やぁちゃん「ところで『ひこにゃん』と遊んでいる、この猿は?」
シロ「おお! 紹介するのを忘れておったな・・・。我が飼っておる猿じゃ。名前は、まだ無い。」
やぁちゃん「では『ルフィ』と名付けましょう。」
ルフィ「キキッ! キキキッ!」
ひこにゃん「あうわ。あうう。」
イナビー「いきなりの登場ですけど、猿を飼っていらっしゃったんですね?」
シロ「そうなのじゃ。エピソード607で登場した、犬の真白と共に飼っておる設定となっておるぞ。」
ちね「猿と犬・・・せやったら、あとは、雉を飼えば、桃太郎になりまっせ。」
シロ「そ・・・そのような、畏れ多いことじゃ。桃太郎である、タケ先生に、叱られる。」
イナビー「父上に叱られるのですか?」
やぁちゃん「えっ? 『イナビー』殿の御父君は、桃太郎なのですか?」
イナビー「そうなのよ。まあ、犬と猿と雉を連れてたのは、私の伯父なんですけどね。」
ちね「そないなこと言うてたら、宮に着きましたでぇ。」
シロ「おお! ついに帰って参ったか・・・。」
イナビー「あれ? ここって・・・。」
やぁちゃん「如何なされました?」
イナビー「纏向珠城宮ではありませぬ。」
やぁちゃん「えっ? では、この白木の宮は?」
シロ「纏向日代宮じゃ。我の宮が、ついに出来たのじゃ。」
ちね「三野に御幸している間に、建てられてたんでしょうねぇ。」
シロ「二千年後の地名で言うと、奈良県桜井市の穴師となるぞ。」
イナビー「先代の宮から、500mほどしか離れてないのですね?」
シロ「うむ。纏向は、我の故郷・・・。離れがたい想いがあったのじゃ。」
ちね「そないな『記紀』に書かれてへんこと言うて、ええんですか?」
シロ「それくらい、良いではないか。」
こうして、景行天皇の宮が造営されたのであった。
さて、それから、しばらくして・・・。
「シロ」は、ある人物を呼び出していた。
それは、異母弟の磐衝別(以下、ツクツク)と、その娘、水歯郎媛(以下、みずは)であった。
ツクツク「エピソード592以来の登場にござりまする。して、此度は、如何なることにて?」
シロ「うむ。汝の娘『みずは』を妃にしたいと思うておる。」
みずは「えっ?」
ツクツク「左様にござりまするか。良かったな。『みずは』よ。」
みずは「大王の御気持は、嬉しゅうござりまするが・・・。」
シロ「ん? 嫌なのか?」
みずは「いえ、その前に、母上も紹介させてくださりませ。」
シロ「そうなるのか?」
ツクツク「で・・・では、娘の願いに応え、我が妻、三足比咩を紹介致しまする。『みたらし』と、お呼びくだされ。」
みたらし「お初にお目にかかりまする。私が『みたらし』です。」
シロ「そ・・・そうか・・・。」
みずは「そして、私のおばあ様も紹介致しまする。」
シロ「おばあ様?」
みずは「綺戸辺こと『かに』様にござりまする。」
かに「私の孫娘を妃にするなんて、ホントに驚きだぞ。先代が、私を妃にした時くらいに、驚いてるんだぞ。」
シロ「よ・・・よろしゅう頼みまする。」
こうして「みずは」も妃となったのであった。
つづく
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