JW422 退き口に送ろう
【東国鎮定編】エピソード13 退き口に送ろう
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
ここは、日高見国(ひたかみ・のくに:現在の茨城県)。
崇神天皇の伯父、大彦(おおひこ)と多建借間(おお・の・たけかしま)(以下、カシマ)は、賊の鎮定(ちんてい)に赴いていた。
賊の名は、夜尺斯(やさかし)(以下、さかし)と夜筑斯(やつくし)(以下、ヤック)。
そして、両軍は激突したのであった。
カシマ「逃げる者は、賊軍じゃ! 向かってくる者は、鍛錬を積んだ賊軍じゃ!」
ヤマトの兵たち「おお!」×多数
さかし「い・・・いかん! 敵の勢いが、激し過ぎるっ。」
ヤック「ここは退却するほかない・・・。全軍! 退却だ!」
賊の兵たち「おお!」×多数
大彦「今なんだな! 追い討ちをかけるんだな! 退き口(のきぐち)に送るとも言うんだな!」
敗走を始めた賊軍。
ヤマト軍は、これを追撃する。
しかし、あと一歩のところで、砦(とりで)に逃げ込まれたのであった。
カシマ「むむむ・・・。立て籠もってしもうたか!」
大彦「こうなれば、力攻めは良くないんだな。」
その後、賊軍は、攻めて来ては逃げるを繰り返し、戦況は埒(らち)が明かない様相となった。
そんなとき、作者オリジナル設定で、豊城入彦(とよきいりひこ)(以下、トッティ)の使者が来訪した。
その使者とは、采女筑箪(うねめ・の・つくば)(以下、つっくん)であった。
つっくん「よっ! 皇子(みこ)に頼まれて、来てやったってばさ!」
カシマ「何を言うておるのじゃ? 『おりじなる』設定ではないか!」
つっくん「そうなんだけどさぁ、皇子を活躍させたいと、作者は考えてるんだよなぁ。」
大彦「それで? どういった活躍をしてくれるのかな?」
つっくん「皇子から、策(さく)を承(うけたまわ)って来たぜ!」
カシマ「本来なら、わしが立案した策じゃぞ!? 皇子に横取りされるのか?!」
つっくん「仕方ないだろ? ということで『カシマ』には死んでもらうぜ。」
カシマ「なっ! た・・・たしかに、それがしは、多くの兵を死なせてしもうた。さ・・・されど、死をもって、責めを負えとは、あまりにも無体(むたい)な話ではないか・・・。」
つっくん「ホントに死ねって言ってるんじゃねぇよ。策だよ。策!」
大彦「なるほど・・・。賊を、おびき出す餌(えさ)にするのかな?」
つっくん「そういうことだってばさ!」
その日のヤマト陣営は、異様な光景に包まれていた。
武具を並べ、船を連ね、笠や旗を靡(なび)かせ、琴(こと)や笛を奏し、歌い踊ったのである。
これを見て、賊長が唸(うな)る。
さかし「あれは、どう見ても、わしらの時代の葬送儀礼(そうそう・ぎれい)ではないか・・・。」
ヤック「夜麻登(やまと)の大物が、討たれたのでしょうな・・・。」
この歌と踊りは、七日七夜つづいた。
さかし「今日で七日目じゃ。これは、ひょっとすると、ひょっとするぞ!」
何に、ひょっとしたのであろうか?
次回につづく