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JW694 倒れた大きな木

【景行征西編】エピソード65 倒れた大きな木


第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのう御世みよ

西暦88年、皇紀こうき748年(景行天皇18)7月4日。

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)の一行は、還幸かんこう(天皇が帰宅すること)とめいって、筑紫ちくし(今の九州)の巡幸じゅんこう(天皇が各地をめぐること)をおこなっていた。 

筑紫行幸参加者名簿

シロ「して、われらは、阿蘇あそより何処いずこに移ったのじゃ?」 

もち「筑紫後国ちくしのくにのみちのしり・のくにやじ。」 

えっさん「二千年後の地名で言えば、福岡県大牟田市おおむたしにあらしゃいます。」 

地図(福岡県大牟田市)

シロ「そうか・・。では、ここに行宮かりみやもうけようぞ。」 

野見のみ「これが、高田たかた行宮かりみやにござる。二千年後は、高田たかた公園こうえんになっておりまするな。」 

ワオン「地名でもうせば、大牟田市おおむたし歴木くぬぎになりまする。」 

地図(高田の行宮:高田公園)
高田の行宮の碑

シロ「ふむ・・・。して、このたおれた大きな木はなんじゃ?」 

たっちゃん「長さは、九百七十じょう・・・。西暦88年の漢の時代のじょうであれば、2,328m・・・。二千年後のじょうであれば、2,910m・・・となるな。」 

いっくん「は? 2㎞え! うそでしょ!?」 

モロキ「二千年後の長さにすれば、ほぼ3㎞になりまするぞ。」 

シロ「し・・・信じられぬ。」 

するとそこに、地元の老人がやって来た。 

老人ろうじんおどろいておられますな。」 

もち「おどろかんほうが、おかしい!」 

夏花なつはな「ところで、老人ろうじん? このように大きな木があれば、道をくのも覚束おぼつかないのではないか?」 

老人ろうじん「ごあんされまするな。地元の者たちは、この木をんで往来おうらいしておりまする。」 

タケ「太さについては、なにも書かれておらぬが、この長さとなると・・・。」 

たっちゃん「かなりの太さと思われまするな。」 

シロ「そんなところをんですすむと?」 

老人ろうじん「それが、出来できるからこそ、ロマンなのですぞ。」 

リトル(7)「うわっ! 出たっ! ロマン!」 

舟木ふなき「されど、これでは、大王おおきみつかえるものたちも、一苦労ひとくろうですな。」 

百足ももたり「なにゆえにござりまする?」 

舟木ふなき「よく考えてみよ。行宮かりみやは、この大きな木のそばに有るのじゃぞ? 御饗みあえ(食事のこと)をおとどけするにも、しとね寝具しんぐのこと)を支度したくするにも、ここをせねばならぬであろう?」 

百足ももたり「た・・・たしかに、言われてみると・・・。」 

ナッカ「ここを通るしかないっすね。」 

小左おひだり「そ・・・そうなりまするか?」 

シロ「うむ。いたかたない・・・。」 

老人ろうじん「そんなわけで、こんな歌が流行はやったのだとか・・・。」 

リトル(7)「歌?」 

老人ろうじん「〽朝霜あさしもの 御木みけのさ小橋こばし 群臣まえつきみ いわたらすも 御木みけのさ小橋こばし。」 

リトル(7)「どういう意味なのだ?」 

老人ろうじん「この御木みけの階段を、おつかえする人が、おわたりになるなぁ。この御木の階段を・・・という意味ですぞ。」 

シロ「して、これは、なんの木なのじゃ?」 

老人ろうじん「この木は、歴木くぬぎですぞ。」 

シロ「行宮かりみやの地名から、そんな気がしておったが・・・。」 

老人ろうじん「まだ、たおれていなかった頃の話ですが、朝日あさひたると、杵嶋山きしまのやまかくしたのですぞ。」 

野見のみ「ちなみに、杵嶋山きしまのやまとは、佐賀県武雄たけお橘町たちばなちょう片白かたじろの東、杵藤きとう葬斎そうさい公園こうえんの北に位置する山にござりまする。」 

ワオン「標高ひょうこうは、342mにござる。」 

地図(杵嶋山)

老人ろうじん「そして、夕日ゆうひたると、阿蘇山あそざんかくしたのですぞ。」 

リトル(7)「あの阿蘇山あそざんを!?」 

老人ろうじん左様さようですぞ。」 

地図(杵嶋山と阿蘇山)

シロ「そうか・・・。では、この木は、神木しんぼくゆえ、この国を御木国みけ・のくにと呼ぶが良い。」 

老人ろうじん「こうして、福岡県大牟田おおむた一帯いったいは、御木国みけ・のくにと呼ばれるようになったのですぞ。」 

つづく

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