JW566 準備は進む
【伊勢遷宮編】エピソード25 準備は進む
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
紀元前4年、皇紀657年(垂仁天皇26)。
天照大神(以下、アマ)の御杖代、倭姫(以下、ワッコ)一行と、忌部和謌富奴(以下、わかとん)たちは、伊勢神宮の建造を開始した。
物部八十友諸と呼ばれる職人たちが作業をする中、遷座に向けて、着々と準備が進められていたのである。
ワッコ「・・・ということで、私たちは、一体、何をしておるのじゃ?」
市主「美船神や朝熊水神こと『アサーク』様など、諸々の神を御船に乗せ奉り、五十鈴川の川上に遷幸しているところにござりまする。」
乙若「さぁ、着きましたぞ。」
ワッコ「『アマ』様だけでなく、様々な神を鎮め奉るのじゃな?」
ワクワク「当たり前でしょ。ここは、伊勢神宮だよ?」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
ねな「あっ! ワッコ様! 御裳の裾が!」
ワッコ「ん? 如何したのじゃ?」
カット「二千年後の言い方にすれば、スカートの裾が汚れておりまする。」
ワッコ「何? そうか・・・。あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと忙しいゆえ・・・。」
カーケ「五十鈴川の畔で、汚れを落とすべきなんだぜ。」
武日「じゃが、じゃが。ここは神域やじ。汚れは、禁物やじ。」
ワッコ「左様にござりまするな。川の水で、汚れを落としまする。」
インカ「こうして、皇女が裾を洗ったので、神域を流れる五十鈴川のことを御裳裾川と呼ぶようになりもうした。」
ちね「他の人も、ワッコ様を真似て、川の水で、手を清めるようになったんやで。」
オーカ「その通りにあらしゃいます。それが、御手洗場にあらしゃいます。」
くにお「ん? あちらから、なにやら、多くの荷を抱えた者たちが、やって参りましたぞ。」
ワッコ「多くの荷?」
そこにやって来たのは「おしん」と「わかとん」であった。
おしん「出来たべ。」
カーケ「何が出来たのかね?」
おしん「なぁに言ってんだ。天平瓮、八十枚作ったんだべ。」
ワッコ「おお! 出来たのか。」
おしん「天平瓮と言えば、オラ! オラと言えば、天平瓮だからなぁ。」
ワクワク「『アマ』様に御供えするための土器だね!」
オーカ「土器とは、素焼きの土器にあらしゃいます。」
おしん「補足説明、かたじけねぇ。」
ワッコ「して『わかとん』も、出来たのか?」
わかとん「左様。神宝八点セットにござる。」
ワッコ「セッタ?」
わかとん「すなわち、鏡、太刀、小刀、矛、楯、弓、矢、木綿にござる。」
オーカ「木綿は、楮の木の皮を蒸して、水に晒した繊維にあらしゃいます。ちなみに、同じ字で、木綿と呼ぶ場合は、ワタという多年草の種子から採れる繊維にあらしゃいます。」
わかとん「愚かなり! 大鹿島!」
オーカ「は?!」
わかとん「これは、楮ではない。麻じゃ。」
オーカ「ははは((´∀`))・・・。馬鹿も休み休み言わねばなりません。麻を木綿とは言いません。木綿と言えば、楮にあらしゃいます。」
わかとん「ふっ・・・。まだまだじゃのう。」
ねな「ちょっと! 紙面の使い過ぎなんですけど!」
わかとん「仕方ないのう。では、解説致そうぞ。実は・・・伊勢神宮においては、麻を原料としていても、木綿と呼ばれるのじゃ!」
オーカ「なんとぉぉ(;゚Д゚)」
ワッコ「と・・・とにかく、木綿を使って、大幣を作るのじゃ。」
カーケ「神に捧げる際に、使うんだぜ。」
市主「左様にござりまする。酒や食べ物などを御供えする際に、神に捧げる神聖なモノだと示すために使われまする。」
準備は着々と進むのであった。
つづく