ＪＷ６８１　御所浦にて

【景行征西編】エピソード52　御所浦にて

第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのうの御世みよ。

西暦88年、皇紀こうき748年（景行天皇18）4月。

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと（以下、シロ）の一行は、還幸かんこう（天皇が帰宅すること）と銘めい打うって、筑紫ちくし（今の九州）の巡幸じゅんこう（天皇が各地を巡めぐること）をおこなっていた。

筑紫行幸参加者名簿

ところが、海上にて、嵐あらしに遭遇そうぐうしてしまう。

高い波により、上陸を阻はばまれる一行であったが・・・。　

シロ「して、陸おかに上あがること、能あとうたのか？」　

キャサリン「無事に辿たどり着つけたみたいよ。」　

たっちゃん「大王おおきみが、辿たどり着ついたということで、この島は、御所浦島ごしょうらじまと呼ばれるようになったそうじゃ。」　

シロ「左様さようにござるか・・・。島であったか・・・。」　

百足ももたり「ちなみに、上陸地点は、御所浦島ごしょうらじまの御所浦ごしょうらにござりまする。」　

ナッカ「二千年後の地名で言えば、熊本県天草市あまくさしの御所浦ごしょうらっす。」　

地図（御所浦：熊本県天草市御所浦町御所浦）

シロ「うむ。では、こちらに行宮かりみやを設もうけようぞ。」　

舟木ふなき「ところで、大王おおきみ？　我われらが舟をつないだ『ともづな石いし』も残っておりまするぞ。」

ともづな石

リトル（7）「ともづな石いし？　それは、何なんだ？」　

舟木ふなき「舟に取り付けられた縄なわを、石や木に結むすび、船が流されぬようにするのですが、その時に、結びつける石を『ともづな石いし』と呼ぶのでござる。」　

リトル（7）「なるほど・・・。舟をつないでおくための石なのじゃな？」　

舟木ふなき「左様さようにござりまする。」　

野見のみ「ちなみに『ともづな石いし』は、御所浦ごしょうら菅原すがわら神社じんじゃにて祀まつられておりまするぞ。」　

御所浦菅原神社（鳥居）

御所浦菅原神社（拝殿）

シロ「して、社やしろの祭神さいじんは、我われか？」　

野見のみ「そ・・・それが、菅原すがわらの道真みちざねと申もうす男のようで・・・。」　

シロ「何なにっ！？　違ちがうのか？！」　

リトル（7）「道真みちざね？！　誰だ！？」　

キャサリン「これがロマンよ。」　

リトル（7）「そ・・・そうなるのか？」　

もち「鎮座地ちんざちは、熊本県天草市あまくさしの御所浦町ごしょうらまち御所浦ごしょうらやじ。」　

地図（御所浦菅原神社）

夏花なつはな「もしや、社やしろの地ちは、行宮かりみやの跡地あとちなのでは？」　

いっくん「そうかもしれへんし、そうではないかもしれへん。」　

夏花なつはな「要ようするに？」　

キャサリン「ロマンよ。」　

するとそこに、地元の人々がやって来た。　

地元民（い）「ホ・・・ホントに、来きとる。」　

地元民（ろ）「言ゆうたやろ？　ホントに来きとうとや。」　

シロ「ん？　汝いましらは、何者なにものじゃ？」　

地元民（は）「この地ちの者もんたちばい。ヤマトの大王おおきみが来ておられると聞いて、罷まかり越こしましたる次第しだいばい。」　

シロ「左様さようか・・・。」　

地元民（い）「・・・ということで、米こめを捧ささげ奉たてまつるばい。」　

シロ「おお！　かたじけない！」　

小左おひだり「そ・・それも、質の良い米ではないか！」　

地元民（ろ）「当たり前っちゃ。質の悪わるか米を贈る者もんが、何処どこに居おると？」　

小左おひだり「ま・・・まあ、そうじゃのう。」　

ルフィ「キキキッ！」　

タケ「ふむふむ・・・。このことから、米を捧ささげた者たちの邑むらは、宮田みやだと呼ばれるようになった・・・と申もうしておるぞ。」　

モロキ「二千年後の熊本県天草市あまくさしは倉岳町くらたけまち宮田みやだのことじゃ。」　

地図（宮田：熊本県天草市倉岳町宮田）

こうして、しばらく滞在たいざいした一行であったが・・・。　

シロ「そろそろ、船出ふなでしようと思う。」　

おやた「次は、何処いずこに向かわれまするか？」　

シロ「うむ。葦北あしきたに戻ろうぞ。」　

地図（葦北）

えっさん「『日本書紀にほんしょき』の記述から逸脱いつだつしておりますので、戻らねばならないのであらしゃいます。」　

シロ「そういうことじゃ。」　

一行は、再び船路ふなじを進んだのであったが・・・。　

シロ「何なんということじゃ！　再びの嵐あらしとは！」　

ワオン「つづけて嵐あらしに遭あうなど、かなり低い確率かくりつにござりまするぞ？！」　

リトル（7）「かくりつ？」　

真白ましろ「ワンワン！」　

タケ「ふむふむ・・・。どうなるのじゃ？・・・と申もうしておるぞ。」　

リトル（7）「真白ましろ！　落ち着けっ！」　

カヤ「海神わたつみが、お怒いかりになっているのでは？」　

シロ「むむむ・・・。なにゆえじゃ！」　

キャサリン「こうなったら『あたい』が、稲飯命いなひ・のみことの役割やくわりを請うけ負おっちゃうしかないわね。」　

たっちゃん「ん？　キャサリン？　どういうことじゃ？」　

キャサリン「身みを捧ささげ、怒いかりを鎮しずめるのよ。」　

シロ「何なにを申もうすか？！」　

キャサリン「でも、神武じんむ東征とうせいの折おり、神武じんむ天皇てんのうの兄君あにぎみである、稲飯命いなひ・のみことが、身みを捧ささげることで、嵐あらしを鎮しずめていらっしゃるでしょ？」　

ナッカ「エピソード31のことっすね？」　

キャサリン「そうよ！　その通りよ！」　

シロ「な・・・ならぬっ。」　

リトル（7）「キャサリン！？」　

キャサリン「では、稲飯命いなひ・のみことの台詞セリフで逝いかせてもらうわね。『よし、こうなったら、我わが身みを捧ささげるじ！　さらばじゃ、サノ！』とおぅ！」　

こうして、キャサリンは、海中へと沈んでいったのであった。

つづく