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『優しい河原 初夏の影』

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恋愛小説。 偶然出逢ったサイコとサトルの物語。 『いえ。偶然などなく、全ての事象は必然なのです』 宇宙のみが知る、ツインソウルとの出逢い。 少々15禁描写ありの、ノスタルジーな…
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#優しい河原初夏の影

13.そして。-最終章-

13.そして。-最終章-

再び夜に待ち合わせたサトルとわたしは、
田舎の居酒屋に入った。

昼間何回もキスをした唇が、
まだサトルの感触を残している。

「これが最後。自分で決めた未来。」

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12.優しい河原

12.優しい河原

初夏。
気持ちの良い日差しに澄んだ空気。

わたしは、数ヶ月後。
この土地を離れて都会のオトコに嫁ぐことになっていた。
結婚を、決めてしまった。
そのオトコと結婚すると、決めてしまった。

この世界の何が本当なんだろう。

今、こうやって決めた未来を自分は歩いていく。
こうやって未来を決める時に、
「それでいいの?」
と問う、もうひとりの自分がいる。 
「あの人への想いはいいの?」
「都会に住むで

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11.まやかしの中にある日常

11.まやかしの中にある日常

夏の初めの昼下がりの休日。
わたしは夫と中学生の息子のために、遅めの昼食を作っている。
何気ない家族の日常。
その「何気なさ」を守るために
わたしは随分普通?の人間らしくなってきたなと、少し自分を笑った。

何気なく出会ったオトコ。
子犬のように震えていた夫は、
世界を諦めの眼差しで見つめていたわたしに、

「結婚して欲しい」

と言った。
夫は、親とも疎遠で、友人も少なかった。
今まで恋人がいた

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10.発情

10.発情

「ま、そんなとこかな。」 
語り終えた後、わたしは明るく言った。

サトルの部屋。
狭いシングルのパイプベットの上で、サトルとわたしは添い寝していた。
お互いの心の内にある、塊みたいなものを打ち明け合った。
偶然、運命的に出会った『友人』サトル。
何故サトルには全て話せてしまうのだろう。
わたしは、何を話しても自分自身を受け入れてくれるサトルの包容力に甘えていたのかもしれない。
だが、何故か自分自

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9. Screw Driverの夜(回想)

9. Screw Driverの夜(回想)

大学1年生。
地方の大学だったため、ほとんどの生徒が一人暮らしを始めた春。
初々しいわたしたちは、名簿の名前が近いもの同士で仲良くなり、連むようになった。
サークルはそれぞれ違っていたが、時々各々の家に集まった。

わたしは、タケ、シン、ヤスの男性3人。マオ、ミウ、わたしの6人で仲良くなり、よく遊んでいた。

タケとマオは付き合っていた。

ミウはシンを好きだった。シンもその気持ちを知っていて、よ

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8.『友人』として

8.『友人』として

下北沢の小さな劇場は、最後に立った舞台。
変わらずわたしの前に神聖な姿を表す。
そこで演じる役者の面々。
そこに見える人間性。
わたしは人間が好きだ。本当に好きだ。
「ありがとうございました」
アンケート用紙に一言書いて、劇場を早々に立ち去る。
そこに立っていること、それ自体が素晴らしいと思う。
生活が苦しくないわけがない。
そこに全てをかける人。理由は何でもいい。意地でもいい。理由は何でもいいん

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7.エゴとの戦い

7.エゴとの戦い

田舎でのわたし。
東京から田舎へ戻り、実家で暮らし始めたわたし。
医療系の仕事に就き、
毎日変わらない日々が続く。

地方の大学を卒業し地元へ戻り、病院に就職した。
その後、「上京したい、芝居をやりたい」
と、両親に伝えた時、
母親は自分の首に包丁を突き付けた。
死んでやる!
わたしは初めて母親を平手打ちし、包丁を取り上げた。全身を虚しさが覆った。
わたしはその時、人生で一番悲しい顔をしていたと思

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6.太陽のような

6.太陽のような

オンナはオトコを待っていた。

片田舎の、無人駅に近い、ある町の駅で。

お洒落なカフェなどなく、
ただそこに佇み、
1時間に1本の電車の到着を待つ。

夕暮れ間近の駅。
数ヶ月前まで都会に住んでいたオンナは、
2両編成だけでこの町の動脈となっている電車を見て少し笑い、
「江ノ電みたいだな」
そう思いながら、田舎の風景を愛おしく感じていた。

サトルが来る。

わたしの心臓は高鳴っていた。
「好き

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5.初めての「声」

人生酒場で求められ、通りすがりのオトコとキスをしても、わたしの中に入ることを許すことはなかった。
孤独を感じ、心が荒々しくなっても、
どんなに激しく舌を絡めても、
そのまま冷淡にそこを立ち去った。
いや、知らないオトコたちと舌を絡めること自体が異常事態なのだが。

夢を抱いて上京した。
夢破れ、最後の舞台で燃え尽き、涅槃に行った。
田舎へ戻り、ふわふわしている心。
帰る場所がある感謝と共に、まだ東

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4.パラレルワールド

4.パラレルワールド

田舎へ戻った26歳のわたしには、
「感謝」
を知る術を学ぶために、
数々の矢が突き刺さってきた。

何かに縋るように、ある人を好きになった。
その人はわたしの親友のことを好きだった。
少し、心を病んだ人だった。
心を病んだ故の、そのオトコの振る舞いに、
どん底に突き落とされた。
心はいつもふわふわ片想い。
地に足がつかない日々が続いた。

聖書を読み、自分の小ささに泣いた。
でも、信仰を持つほど自

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3.最後の舞台

東京最後の公演は、
ほんのちょい役で出演する予定だった。

それで、田舎に引き上げるつもりだった。
  
もう存分にやった。
悔いはない。
年に6回も板に立たせてくれた劇団。
確かに生活は苦しかったが、そのために働き、そのために活きた。  

悔いは、ない。

公演1週間前、主役の代役を演った。
演出家から主役変更を伝えられた。
「おまえが主役を演れ。1週間で、台詞と立ち回り、全て覚えるんだ。やる

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2.お互いについて

サトルとわたしは、
俗に言う『メル友』になった。

大抵はサトルがわたしに思いついたようにメールをくれる。
それにわたしが返信する。
そんな感じだ。

わたしたちは
お互いのことをたくさん話した。

サトルはバンドマンだった。
都内在住で九州出身。
ハタチそこそこの若者。
大所帯のバンドに属しているが、数人の仲間と脱退して、新たにバンドを結成しようとしていた。転機で少しまいっていたと、サトルは言っ

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1.出逢い-プロローグ-

1.出逢い-プロローグ-

見知らぬアドレスから軽々しいEメールが届く。

「サイコさーん久しぶり!元気?」

・・・誰や。
知らん。
そして、何故わたしの名前を知っている?

「誰?」

「サイコさん、オレだよーサトル!元気かなぁ?」

新手の詐欺?勧誘?

と、思ったけど、あまりに純粋オーラ出しまくりのメールに、わたしは真面目に返信した。

「多分人違いだと思いますよ。わたしはあなたを存じあげません。」

「えー!マジで

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