狩野モデルを使って「価値」の正体を因数分解、競合と差をつける品質とは?〜マネプロ#15
こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。
マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第15回目です。
このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。
さて、第11回のマネプロからは3C分析のCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)を順にテーマとしてお送りしております。
今回のテーマは前回に引き続き、
「競合に向き合う」の後編です。
目次はこちら!
競合と差をつける「価値」はなにか?
前回のマネプロでは、シルク・ド・ソレイユを例に、提供している価値を競合と比較する「戦略キャンパス」の考え方を紹介しました。
軽くおさらいすると、戦略キャンパスは、成功の鍵となる要因を考え(つまり何が勝敗を決するのかを見極めた上で)、どの価値で勝負するかを決めるのに有効な考え方でした。
しかし!
顧客に提供している価値・・・
成功の鍵となりうる価値・・・
自分たちが勝負する価値・・・
それらって一体なんなのでしょう?
いや、その前に。
そもそもこの「価値」
の一言でまとめているが認識は揃っているのか。
表現がザックリしすぎなのではないだろうか。
(という、心の声が聞こえてきそうですね)
例えば・・・
”スマホが故障せずにちゃんと使えること”は、間違いなく価値です。でも、”ガラケーに比べてスマホは革新的だ”と言う場合に感じている価値とはなんだか次元が違う感じがしませんか?
スマホが日常になっている人たちが感じているスマホの価値と、ガラケーから携帯を使い始めた人たちにとっての価値の表現が同じ質感だとは思えませんよね。
「価値」の言葉の解釈には多様性がありそうです。
競合と差をつけていくべき「価値」。
この価値の正体を明らかにして、企業の中で共通認識を持つことが重要ではないでしょうか?
「品質価値」といえば狩野モデル
そういうモヤっとした気持ちを整えるのに
使えるフレームワークだと思っているのが
今回ご紹介する“狩野モデル”の考え方です。
珍しく日本人の名前が頭に入っていますね。
狩野とは、東京理科大学名誉教授の狩野紀昭先生のこと(実は私、大学時代に先生の授業を受けてました)。彼が提唱した狩野モデルは海外でも“Kano Model”の名称で有名なんですよ。
簡単にお伝えするなら、狩野モデルは
品質価値と顧客満足の関係をモデル化した理論
です。
具体的には”当たり前品質”や”魅力的品質”といった言葉を使って品質を5分類しております。
いや、まだ全然わかんないよ!
と思われた方、大丈夫です。
狩野モデルを図解して分かりやすくします。
安心して次の章へお進みください。
5つの品質価値と顧客満足の関係性
先ほど述べたように、
狩野モデルでは品質を5つに分類しています。
①当たり前品質:充足されないと不満、充足されても特に満足度が高まらない品質要素
②一元的品質:充足されないと不満、充足されると満足度が高まる品質要素
③魅力的品質:充足されなくても不満はないが、充足されると満足度が高まる品質要素
④無関心品質:充足されてもされなくても、不満も満足もない品質要素
⑤逆評価品質:充足されると逆に満足度を下げる品質要素
これを図解したものがこちらです。
顧客の満足につながる品質とは
具体的な例を用いてそれぞれの品質について見ていきましょう。
当たり前品質は、確実に対応しなければならないものです。対応できなければ顧客の要望に応えることができず、市場に残って戦えません。
スマホが頻繁に故障したり、アプリがなかなか起動しなかったら、別のスマホやアプリを使いますよね。あって当たり前とみんなが思っている。ないなんてあり得ない品質を指します。
一元的品質は、品質を高めるほど顧客の満足度が上がるので追求しやすい価値です。競合も同じように品質の向上を追求する価値なので、競合と圧倒的な価値の違いを出せるまでは差別化しにくい品質とも言えます。
たとえば、スマホのバッテリーが長持ちするに越したことはありませんよね。反対に持ちが悪ければ顧客の不満につながります。
顧客の満足度が格段に向上するのは魅力的品質を創り出すことができた時です。
私と同世代の方は、ガラケーからスマホに乗り換えた時のことを思い出してみてください。あの時に感じたであろう価値が魅力的品質です。
魅力的品質には、市場や顧客が驚いてしまうような衝撃があります。アンビリーバブルや!
顧客にとって価値にならない品質
世の中に数多ある企業は、新たな魅力的品質の開拓を目指して日々がんばっています。
しかし、魅力的品質と信じて世に放たれたサービスであっても、顧客の欲求には届かず無関心品質のまま終わってしまう場合があります。
たとえば、(個人的にはという前置きが必要ですが)テレビの画質の良さは既に無関心品質となっているのではないでしょうか。
8Kが16Kになっても、私にとっては特に魅力的に感じられない価値な気がします。もう充分に画質はすごいんだよな…と。
魅力的品質を目指そうとして無関心品質で終わるのは残念なことですが、それよりさらにマズイ状態もあります。それが、逆評価品質です。
よかれと思ってやったことが顧客の不満になっている場合ですね。これは、ニーズの読み取りの失敗が原因で生まれます。
相手にとって魅力的に思ってもらおうと尽くしても、当たり前のこととして受け流されたり、気にも止めてもらえなかったり、傷つけてしまったりする。人にも当てはまる考え方ですね。
それでも、新たな魅力のある品質価値に挑戦することは事業を営む上で必要だと思います。そうでなければ差をつける価値は生まれません。
差のつく品質がCSとCDを実現する
ここまでの狩野モデルの考え方をふまえると、
自社の成功の鍵となる要因(KSF)を決めるのは
競合と差をつける
“一元的品質の強化”と“魅力的品質の創造”を
何で実現するか?
の問いだと言えるのではないでしょうか。
それぞれを一言で補足するとしたら
一元的品質の強化とは、顧客の期待に応えて顧客が満足する価値。
その価値がCS(customer satisfaction)の実現へつながります。
魅力的品質の創造とは、顧客の期待を超えて顧客が感動する価値。
その価値がCD(customer delight)の実現へつながります。
前回のシルクドソレイユを例にした戦略キャンパスの話でいうと、「個性あふれる独自のテント」は一元的品質の強化、「芸術性の高い音楽とダンス」は魅力的品質の創造だと言えます。
しかし、時が経てば魅力的品質も競合にベンチマークされ、模倣されていくもの。そうなるとその品質はありふれたものになります。
ですので、品質は「無関心品質→魅力的品質→一元的品質→当たり前品質」という流れで進化の限界が訪れます。
自社が追求する価値ある品質はなにか。
どんな品質で勝負するのか。
組織の中でKSFの変化を議論し続け、
真に必要とされる価値を追い求めて
競合に差をつけていくことが重要です。
<今回のQuestions>
以上が15回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?
ということでマネプロ恒例、最後の問いです。
今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!
※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!
<次回にむけて>
今回は、”競合と向き合う”をテーマに狩野モデルを紹介してみました。前回の戦略キャンパスと合わせて使えば威力を発揮するはずです。
さて、市場、顧客、競合と来て、3C分析シリーズもいよいよ最後の一つ、Company(自社)を残すのみです。
というわけで、次回のテーマは「自社と向き合う」。
次回は2週間後の水曜日。
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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