天才と精神医学(3): "テンションアゲアゲ"であなたも創造性アップ!気分型天才について
皆様、こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です!
皆様は仕事や勉強がメチャクチャ捗(はかど)ることってありますか?
例えば勉強については「学べば学ぶほど好奇心が溢れる」とか、仕事については「面白いように仕事がどんどん片付く」…、なんて状態です。
小生も大学院の頃、無我夢中で実験や論文執筆をしていましたが、あの時は本当に研究が楽しくて仕方ありませんでした😆
このようにメチャクチャ捗る時って、テンションアゲアゲで「勉強(仕事)、超きもちぃいぃ〜」と感じ、「俺(私)って、天才かも?」と勘違いすらしちゃいます。
(小生、実は大学院生の頃、世界初の発見をいくつかしましたが、今から考えると大した発見じゃないですね…😅冷静になって当時を思い出すと、ちょっと気恥ずかしい… )
ところでこの「テンションアゲアゲ(死語)」は、仕事や勉強が捗るからテンションがアゲアゲなのでしょうか?否、テンションアゲアゲだから捗るのでしょうか?
何だか「鶏が先か、卵が先か」のような話になりましたが、実は精神医学においては「気分の高揚」が創造性を高めることが知られております。
つまり、"テンションアゲアゲ”が天才的な成果を産むことがあるのです!
シリーズ「天才と精神医学」の第3回目は前回・前々回同様、天才の「創造の原動力」に焦点をあて、「気分型天才」にいついて説明いたします。
果たして気分型の天才とは一体…!?
【気分および気分高揚とは?】
さて皆様も「気分」について感覚的にはわかっていても、いざ”気分の定義”と言われると返答に窮しませんか?
そこで「気分型天才」を説明する前に、「気分」について定義したいと思います。
さらに気分が”ハイ”になることを精神医学では”気分高揚"と呼びますが、ついでに気分高揚についても説明しておきましょう。
【気分型天才とは?】
今回紹介する「気分型天才」についてご説明します。
先にも触れましたが、気分が高揚すると活動的になり着想が豊かになります。
例えば皆様も、お酒を飲んで気分が高まった時、手振り身振りが大袈裟になり、また饒舌にジョークを飛ばしますよね?
お酒が入って、ほろ酔い気分になったときの精神活動が”軽躁状態”に近いと言えます。
こういう時って、色々面白いアイデアが生まれますよね?(小生はnoteのネタは、大抵ワインでほろ酔い状態のときに思いつきますね…☺️🍷)
“躁”とはせかせかと騒がしいという意味なのですが、精神医学的には以下のように定義されます。
ご覧のように躁状態においてはエネルギーが満ち、頭の回転がはやくなり、活動性が増します。
まるでスーパーマリオの”スター状態(無敵状態)”で仕事や勉強に打ち込むことができるわけです(スゲー😆)!
要するに「気分型天才」とは躁によって創造性がブーストされた状態といえます。
しかし、躁うつ病の無敵状態には副作用があります。
それは、躁状態の後に来る”重篤なうつ状態"です。
うつ状態になると活動性は著しく落ち、クリエーティブな仕事は困難となります。
よくクリエーター界隈の人々が”スランプ”という言葉を使いますが、まさに躁状態後のうつ状態は重度のスランプと言って差し支えないと思います。
↓天才と聞くと漫画「栄光なき天才たち」を思い浮かべます!
【気分型天才の具体例】
さて気分型天才がどのようなモノかを理解するために、具体的な症例を提示したいと思います。
実は歴史上の天才たちの中には、「躁うつ病」をベースとした気分型天才が数多くおります!
本記事では6名(番外を含めると7名)の気分型天才をご紹介いたします。
1.ジョージ・ゴードン・バイロン(1788-1824年)
イングランドの詩人であるバイロンは卓越した才能を持ち、ゲーテをして「今世紀最大の天才」と言わしめしたロマン派の詩人です。
「そなたのために,たとえ世界を失うことがあっても,世界のためにそなたを失いたくはない」
「事実は小説より奇なり」
これはバイロンの名言ですが、彼が紡ぎ出した言葉は現代人にも影響を与え続けています。
バイロンはその生涯で明らかに気分の波があり、精神科医のレヴィ=バランシーは彼を躁うつ病と診断していたそうです。
この気分の波は作品にも表れ、例えば意気消沈した状態で書いた「ものうい日々」の後、一転気分は高揚し東方旅行へ赴くのでした(この東方旅行が「チャイルド・ハロルドの巡礼」につながります)。
23歳の時も明らかに躁状態を呈し、「異端者」を数日で書き上げ、翌年には「アバイドスの花嫁」をわずか10日、そして「海賊」は4日で完成させます。
このように、気分型の天才は気分が高揚する”躁状態”のときに集中的に作品を書き上げますが、この際まさに「寝食を忘れて」創作活動に没頭します。
2.ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832年)
皆様、ゲーテをご存知ですよね?
ドイツを代表とする詩人、劇作家、小説家、自然科学者、政治家…とさまざまな才能をもつ偉大な天才です。
小説「若きウェルテルの悩み」、詩劇「ファウスト」は超有名ですよね。
天才ゲーテも実は気分の浮き沈み、すなわち躁うつ病の傾向があったそうです。
例えば「若きウェルテルの悩み」はゲーテの実体験に基づく小説であり、24歳の若者だったゲーテが法官の娘シャルロッテに熱烈な恋心を抱いたが、彼女には婚約者がいたためゲーテは絶望した…、とのことです。
この失恋の翌年に「若きウェルテルの悩み」書いたのですが、ゲーテは同作品をたった1ヶ月で書き上げたそうです。おそらく失恋の抑うつから躁状態に転じ、あの傑作を生み出したのでしょう。
ゲーテの生涯を眺めると、明らかに「躁状態」と「うつ状態」を繰り返しており、ドイツの精神医学者メービウスPJは、ゲーテは約7年周期で気分の変動があったと評しております。
ゲーテは82歳で天寿を全うしますが、晩年になっても(軽)躁状態に基づく創造性の亢進を認めております。
58-59歳で新しい恋人を見つけ(ゲーテは躁状態になると恋人を変えた)、数多くの詩を作り、小説「親和力」を作成しました。
65-66歳でも躁状態を迎え、65歳で30編、66歳で100編の詩を完成させます(当然、この時期にも新恋人をつくっていた!)。
そして再び躁状態の時期に入った81歳の時、自叙伝を描き終え、そして不朽の名作「ファウスト」を完成させます。
ゲーテは生得的天才ではありますが、躁状態によってさらにその才能をブーストさせた典型と言えましょう。
3.アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961年)
記事作成のために、書籍や論文を購入しております。 これからもより良い記事を執筆するために、サポート頂ければ幸いです☺️