![マガジンのカバー画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122878614/68545909fe9bd9e6da8e30413091c4a4.jpeg?width=800)
- 運営しているクリエイター
#ハイファンタジー小説
復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話
マガジンにまとめてあります。
暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。
河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。
街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第26話
マガジンにまとめてあります。
二人して歩いてゆくと、道行く人は彼らを遠巻きに見た。
黒いローブに長い黒髪の背の高い青年と、いかにも北方の民である様子を漂わせた、巨漢の戦士の組み合わせは目立つのだ。
ジェナーシア共和国の者は、羊の毛織物か木綿の服を着ることが多い。淡い灰色か、生成りの色だ。黒を着る者は少なく、革鎧で身を覆って歩く者も少ない。
街の警備の役人は、軽量の鎖帷子(くさり
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第25話
マガジンにまとめてあります。
ヘンダーランの屋敷から持ち出した本と巻き物を魔術師ギルドに、正確に言えばグランシアに任せて、アルトゥールとリーシアンはギルドの塔のテラスから下りた。
マルバーザンが運び出してくれたのだ。
この異界の魔物の力を借りて、またヘンダーランの屋敷にやって来た。
マルバーザンは、出来るだけ人目につかないように、屋敷の裏庭に下ろしてくれた。
「ありがとう、助か
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第24話
マガジンにまとめてあります。
魔術師ギルドの者たちの中でも、とりわけ野心的な者たちは言った。
「水をワインに変え、食べ物を何もない空中から取り出し、不浄なる生ける亡者を消滅させ、失われた手足を再生させ、見えない目、聞こえない耳をよみがえらせ、また死者をも生き返らせることが出来たなら、どんなにか素晴らしいことでしょう!」と。
グランシアの友人の女魔術師がそう言うのを、アルトゥールは聞いたこ
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第23話
マガジンにまとめてあります。
ここはグランシア一人のために割り当てられた研究室である。布の垂れ幕で、寝台のある場所とは 区切られている。ここで寝泊まりも出来るのだ。
グランシアは、他に住まいを持たず、ずっとここで暮らしている。ギルドに属する者の全てが、そのような特権を与えられているわけではなかった。
金髪の女魔術師が扉を開けると、同じように淡い灰色のローブを着た女が二人いた。 グランシ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第22話
マガジンにまとめてあります。
魔術師ギルドの高い塔の上空に来た。三階建てか、せいぜい四階建てが限界の街の建造物の中で、この塔は十二階までもある。
その頂上からは街を、貴族や大神官の屋敷も含めて一望のもとに見下ろせると聞いていた。
アルトゥールは三階より上には上がらせてもらえたことはない。グランシアは、六階までを見たという。
誰も気づかない。 異界から召喚された魔族たちが夜に、そう、
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第21話
マガジンにまとめてあります。
「僕の一生分?」
思わずアルトゥールは聞き返した。
「なぜそこまでしてくれるんだ? 確かに、上位の魔族の寿命からすれば、人間の一生は短い。それでも、単なる暇つぶしに付き合うってほどの短さではないはずだ」
「どのくらいになるんだ?」
横からリーシアンが訊いてくる。
「そうだな、僕たち人間にとっての一年分ぐらいには相当するんじゃないだろうか」
北の地の
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第20話
マガジンにまとめてあります。
青い煙のような大男は黙って二人を見つめていた。 恐ろしげな顔立ちではあるが、怒りや危害を加える意図は見えない。 むしろ、静かで落ち着いた表情を見せている。外見の恐ろしさに囚われず、よくよく見てみれば、その静かな穏やかさが分かるのである。
アルトゥールはこの時、相手の静穏さをしっかりと見ることができた。彼はかまえていたメイスを下ろした。
武器を腰のベルトから
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第19話
マガジンにまとめてあります。
「それでどうするんだ? クレア子爵令嬢のところへ行くか? それともやっぱり、グランシアを頼るのか?」
と、リーシアン。ジェナーシア共和国における愚かな大衆よりも、そちらの方が気になるようだ。
「正直なところ、まだ決められないな。お前はどう思う? 魔術師ギルドよりも、クレア子爵令嬢の図書館へ行った方がいいと思うのか」
「俺はそうしてほしい。 グランシアに含むとこ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第18話
マガジンにまとめてあります。
二階も一階と同じように、荒れた光景を見せている。蜘蛛の巣が天井から壁際に掛かり、足元には、踏むと足跡が残るほどのほこりが積もっている。
アルトゥールとリーシアンは、そろって廊下を進んだ。階段は屋敷の隅にある。廊下は真っ直ぐに伸びている。左右に三つずつの扉があった。
いずれも深い褐色の木目のきれいな扉で、ぶどうのつると葉と実を型どった彫刻が表面にほどこされて
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第17話
マガジンにまとめてあります。
リーシアンは、それを聞いてにやりと笑ってみせた。 後ろから続いて階段を上がる。
「俺はハイランのことは気に入らん。かなり危険な奴だと思っている。しかし少なくともこの件に関する限り、お前は、いや俺たちはと言った方がいいな、救われた面もあるんだ」
ここで言葉を切って、紫水晶の色の瞳の青年神官の視線を正面から受けとめた。二人とも階段の途中で立ち止まる。
「お前の
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第16話
マガジンにまとめてあります。
そこからアルトゥールはジュリアと別れて行動することにした。ジュリアは神殿にこの件を報告すると言った。
「せいぜい、もみ消されないようにしてくれ」
例によって皮肉な物言いになる。ジュリアは何も答えなかった。あきれたようにため息をついて、
「では失礼します、あなた方も気をつけて」
そう言い残してヘンダーランの屋敷の前から去っていった。
ラモーナ子爵令嬢
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第15話
マガジンにまとめてあります。
もはや どれだけ言っても従者は頑なな心を変えず令嬢を連れて逃げ去ることもしないであろう。そうと察したのでアルトゥールは、もうそれ以上言わなかった。
無意識のうちに抑え込んできた冷ややかな闘志が、体の中に、そして精神にも湧き上がる。神官は通常は鋭利な刃物を使わないものだが、その時の意識は従者が持つ剣よりも、なお鋭く研ぎ澄まされていた。
ラモーナの悲鳴が聞こえ
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第14話
マガジンにまとめてあります。
従者は、彼はおそらく馬車の御者をしてここに来たのだろう。そう察せられるが、その忠実な男の目には怒りが燃えていた。
従者が持つ剣は刃が短く、従者自身の二の腕の長さほどしかないが、剣先は極めて鋭く、優れた腕の鍛冶屋の鋳造によるものと見て取れた。それだけのことを瞬時に、アルトゥールは見て取った。
まっすぐに自分の方へ向かってくる剣先を弾こうとして、メイスを横に払