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#魔術師
復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話
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暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。
河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。
街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 第39話
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「あなたは随分と遠慮のないことを言うのね」
「それは失礼いたしました。性分なもので」
そうでなければネフィアル神官など堂々とやっていられるわけはない。
現状のジェナーシアに、ジュリアン神殿のやり方に、不満があるのだとしても他にもやり方はある。
ジュリアの元に馳せ参じるか、でなければクレア子爵令嬢のようにまともで民を思う心を持つ貴族に仕えるか。そのような
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 第37話
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魔術師ギルドには、すぐにたどり着けた。グランシアが先頭に立っていたので、ギルドの扉はすぐに開いてくれた。自動的に、手も触れずに。
ギルドの扉は魔術によって管理されているが、ギルドに所属する者でなければ開くことは出来ない。
三人は、魔術師ギルドの建物の一階のホールにい
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 第36話
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グランシアに続いて、北の地の戦士も出てきた。陽光は未だ明るかった。もうだいぶ時間を過ごした気もするが、まだ夕暮れ時には三刻ほどもあるようだった。
「クレア子爵令嬢は?」と、アルトゥール。
「御屋敷にお戻りよ。後は部下が図書館の管理をするわ」
「そうか。なら、もう子爵令
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』 35話
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「そうね、私の召し使いが知っているわ。ここで私の側近く、仕えてくれているのは二人。でもあの子たちが強力な力を持つ魔術師をどうにか出来るはずはないわね」
クレア子爵令嬢は、やわらかく微笑んだ。気を悪くした様子はない。
「ええ、その方自身には、きっと無理でしょう。し
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』33話
一行はクレアに連れられて、図書館の離れにある作業場に入っていった。
図書館本館は、クレアの実家のような小貴族の館を思わせる。対照的に離れはもっと簡素で、庶民の暮らすレンガの家の様子に似ていた。
グランシアは、魔術師ギルドの出来事を話した。三人の上位魔術師が病に倒れた。そのうちの一人はグランシアの師匠である、と。
これだけの事が出来るのは、ハイランという名のネフィアル神官をおいて他には
復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の魔の奥』31話
脂の乗った鴨肉の蒸し焼きと根菜類の煮物を食べてから、アルトゥールは二階にある自分の部屋に戻る。
リーシアンはというと、夜の街を自分の定宿に歩いて行った。夜と言ってもまだ早い。街には夕飯を作り食べる明かりと匂いが漂う頃合いだ。
腕に覚えがあるのなら、まだ出歩くのはさほど不用心な振る舞いとも言えない。
まして北の地の戦士は、名の知れた驍勇(ぎょうゆう)なのだ。どんな命知らずが彼を襲撃する
復讐の女神ネフィアル第7作目 『聖なる神殿の闇の間の奥』30話
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《裏通りの店》に戻った。すでに夕闇が迫り始めていた。まだ青い夜の闇と、黄金色が空に見える。東は青い闇、黄金色は西に。太陽はすでに沈んでいた。
ヨレイはいなかった。ロージェもだった。
「無駄足か。すまなかったな聖女様。だけどここの様子を見て、だいたい事情は察してもらえると思う。灰色の世界でしか、生きられない人たちがいるのさ。もちろん、君は知っているだろうが」
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第24話
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魔術師ギルドの者たちの中でも、とりわけ野心的な者たちは言った。
「水をワインに変え、食べ物を何もない空中から取り出し、不浄なる生ける亡者を消滅させ、失われた手足を再生させ、見えない目、聞こえない耳をよみがえらせ、また死者をも生き返らせることが出来たなら、どんなにか素晴らしいことでしょう!」と。
グランシアの友人の女魔術師がそう言うのを、アルトゥールは聞いたこ
復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第23話
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ここはグランシア一人のために割り当てられた研究室である。布の垂れ幕で、寝台のある場所とは 区切られている。ここで寝泊まりも出来るのだ。
グランシアは、他に住まいを持たず、ずっとここで暮らしている。ギルドに属する者の全てが、そのような特権を与えられているわけではなかった。
金髪の女魔術師が扉を開けると、同じように淡い灰色のローブを着た女が二人いた。 グランシ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第22話
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魔術師ギルドの高い塔の上空に来た。三階建てか、せいぜい四階建てが限界の街の建造物の中で、この塔は十二階までもある。
その頂上からは街を、貴族や大神官の屋敷も含めて一望のもとに見下ろせると聞いていた。
アルトゥールは三階より上には上がらせてもらえたことはない。グランシアは、六階までを見たという。
誰も気づかない。 異界から召喚された魔族たちが夜に、そう、
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第21話
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「僕の一生分?」
思わずアルトゥールは聞き返した。
「なぜそこまでしてくれるんだ? 確かに、上位の魔族の寿命からすれば、人間の一生は短い。それでも、単なる暇つぶしに付き合うってほどの短さではないはずだ」
「どのくらいになるんだ?」
横からリーシアンが訊いてくる。
「そうだな、僕たち人間にとっての一年分ぐらいには相当するんじゃないだろうか」
北の地の
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第19話
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「それでどうするんだ? クレア子爵令嬢のところへ行くか? それともやっぱり、グランシアを頼るのか?」
と、リーシアン。ジェナーシア共和国における愚かな大衆よりも、そちらの方が気になるようだ。
「正直なところ、まだ決められないな。お前はどう思う? 魔術師ギルドよりも、クレア子爵令嬢の図書館へ行った方がいいと思うのか」
「俺はそうしてほしい。 グランシアに含むとこ
【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第18話
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二階も一階と同じように、荒れた光景を見せている。蜘蛛の巣が天井から壁際に掛かり、足元には、踏むと足跡が残るほどのほこりが積もっている。
アルトゥールとリーシアンは、そろって廊下を進んだ。階段は屋敷の隅にある。廊下は真っ直ぐに伸びている。左右に三つずつの扉があった。
いずれも深い褐色の木目のきれいな扉で、ぶどうのつると葉と実を型どった彫刻が表面にほどこされて