アレント「道徳哲学のいくつかの問題」
1965年、60歳を目前にしたハンナ・アレントは、「道徳哲学のいくつかの問題」と題した講演を、ニューヨーク・マンハッタン島にあるNew School for Social Researchという大学で行った。
講演は、イギリス首相チャーチルの引用ではじまる。「わたしが不可能であると信じてきたか、そう教えられてきたことで、起こらないことはなかった」。
不可能であるはずなのに起こってしまったこととは何か。第二次世界大戦下にナチス統治下でおこなわれたユダヤ人の大量虐殺(ホロコース