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ブラム・ストーカー『ドラキュラ』

ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』を読んで、それについてToughのみんなで話しました。

光文社古典新訳文庫の唐戸信嘉訳で読んだのですが、これはとても読みやすいのでおすすめです。

イギリスの弁護士、ジョナサン・ハーカーが土地の売買の商談をしに、ルーマニアにあるドラキュラ伯爵の城に赴く……というところから物語は始まります。ジョナサンはドラキュラ城に閉じ込められてしまい、数々の恐ろしい出来事に遭遇します。

ドラキュラといえば吸血鬼であり、人の血を吸う怪物という印象があるかと思います。しかし、そこはホラー小説らしく、いきなり「吸血」というモチーフが明らかになるわけではありません。

おかしなことが次々と起こる中で、徐々に人々を脅かす存在の姿が明らかになっていきます。

ドラキュラ伯爵の外見にまつわる描写は、ユダヤ人の外見的特徴に近いという話題が上がりました。

19世紀末のイギリスは、産業革命を迎え、植民地政策を推し進める最中にあり、景気もよいのですが、その一方でいつ自国の繁栄が終わりを迎えるのかという恐怖もあります。これが、『ドラキュラ』というホラー小説の根底にあるのでは?という話になりました。

ここから物語の結末に触れます。

読書会メンバーの信濃さんが『ドラキュラ』は驚くほど『ハリー・ポッター』に似ていると語っていました。(※この文章の趣旨には関係ありませんが、私は『ハリー・ポッター』の著者であるJ・K・ローリングを支持しません)

というのも、ドラキュラ伯爵は、土の入った木箱をルーマニアからイギリスにどんどん輸出しています。ドラキュラ伯爵は、この箱の中の土がないと生きていけないわけですね。

『ハリー・ポッター』におけるヴォルデモート卿は、「分霊箱」というアイテムを用いて、自身の魂を分けて、不死の存在に近づきます。

確かに似ていますね。

他にも、ミーナという登場人物のおでこに傷ができるところも、『ハリー・ポッター』との相似を感じさせます。

『ハリー・ポッター』もイギリスの小説ですから、当然影響を受けていることも考えられるでしょう。

信濃さんは、このドラキュラ伯爵が土を各所に送り込むことと、イギリスの植民地政策を結びつけて考えており、非常に興味深く聞きました。イギリスが世界各地を領土化するということは、それを他国からやり返されるという恐怖と隣り合わせなのかもしれません。『ドラキュラ』を「イギリスが植民地化される物語」として読むのも面白いと思います。

これを受けて私は、『ドラキュラ』という物語には、三つの領域侵犯があると考えました。

一つは、上記の「領土」を巡る領域侵犯。
二つ目は、ジョナサンが閉じ込められる「ドラキュラ城」や、ルーシーが閉じ込められる「自宅」といった、「密室」における領域侵犯。
三つ目は、本来「身体」という閉ざされた空間の内部を循環している血液が、他者と交換されるという領域侵犯。

登場人物のルーシーは、寝ている間に吸血されてしまうのですが、この対処法として、ルーシーに思いを寄せる人々が輸血するというシーンがあります。

ルーシーにフラれた男であるスワードという医師が、自分の血を輸血する段になった際、「自分の生命の血潮が、愛する女性の血管に流れこむのを見る喜びは、経験した者でなければわかるまい。」と語っていて、キモ!と思いました。

ちなみに私は採血やそれにまつわる事象が大の苦手で、こうして書いている最中も身体中から力が抜けてぐったりしてきました。スプラッタ映画などの大量出血には、リアリティを感じないので平気なのですが、輸血みたいな話は怖いのです。

過去に採血後に倒れたこともあります。

よって自身の健康を考慮して、ここで筆を置くこととします。

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